中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない――。そんな場合は、香港市場を代表する株価指数であるハンセン指数の構成銘柄の中から探してみるのが基本中の基本。ハンセン指数に選ばれる銘柄の中には、世界的な大企業もあれば、個性的で魅力的な銘柄もたくさん集まっています。このシリーズでは、香港市場の主要銘柄をハンセン指数の構成銘柄の中から選んで紹介していきます。今回はBYD(比亜迪:01211/002594)の最終回です。
▼参考
・意外と身近にある中国株、街中で探してみた(5) 電気自動車の王者BYD、日本で販売台数を伸ばす「夢を実現する会社」
・中国株の銘柄選び 中国株ビギナーがまず選ぶのはこれ!ハンセン指数は基本中の基本
2025年、ついに訪れた歴史的な「首位交代」
長年、電気自動車(EV)界の絶対王者として君臨してきたイーロン・マスク氏率いる米国のテスラですが、2025年、ついにその牙城が崩れました。BYDの年間純電気自動車(EV)販売台数が前年比約28%増の225万6700台に達し、テスラ(約163万6000台)を大幅に上回って世界首位の座に輝いたのです。
かつて「携帯電話のバッテリー会社」から始まった同社が、名実ともに世界最大のEVメーカーとなった瞬間でした。この躍進を支えたのは、中国国内の需要だけではありません。2025年には海外輸出・販売台数が初めて100万台を突破。欧州、東南アジア、中南米へとその勢力圏を急速に広げていきました。

※BEV(バッテリー式電気自動車)
「敵」にも供給される最強の心臓部
BYDの凄みは、完成車メーカーとしてだけでなく、「バッテリー供給元」としても世界的な影響力を持ち始めたことにあります。
自社の安全性を証明したブレードバッテリーは、今や競合他社にとっても「喉から手が出るほど欲しい」重要パーツとなっています。実際にライバルであるテスラのドイツ工場製の一部モデルにBYD製のバッテリーが採用されたと報じられています。また、トヨタ自動車ともバッテリー式電気自動車(BEV)開発で合弁会社を設立するなど、かつての競合メーカーが次々とBYDを強力なパートナーとして選んでいます。数年前まで「追う立場」だったBYDが、今や世界の名だたるメーカーに基幹技術を供給し、EVシフトをけん引する立場へと劇的な変化を遂げたのです。
26年に第2世代ブレードバッテリーを発表、9分でほぼ満充電に
勢いはさらに加速しています。BYDは2026年3月、次世代技術「第2世代ブレードバッテリー」と急速充電システム「フラッシュ充電(閃充)」を発表しました。
この最新技術により、バッテリー残量10%から70%までの充電をわずか5分、97%(ほぼ満充電)までをわずか9分で完了させることが可能になりました。LFP電池の弱点だった「冬場の性能低下」も克服。マイナス30度という極寒環境下でも、充電時間の増加をわずか3分程度に抑制できるといいます。「車は満充電、人はコーヒー一杯を飲み終える頃には出発できる」――。そんな未来がもう実現しつつあります。

日本市場では軽EV「RACCO(ラッコ)」を投入
そして2026年、日本市場においてもBYDは決定的な一手を投じます。2026年夏の発売が予定されている、日本専用設計の軽EV「RACCO(ラッコ)」です。
これまで「海外のEVはサイズが大きすぎる」と敬遠していた日本のユーザーに向け、日本独自の軽自動車規格に合わせたスーパーハイトワゴンを投入。電動スライドドアを標準装備し、日本の狭い路地や駐車場事情に完全に適応したこの「ラッコ」は、日本の日常に電気自動車を当たり前の選択肢として定着させる大きな一歩となるかもしれません。

26年夏発売予定の「RACCO(ラッコ)」 出所:BYDホームページ
垂直統合がもたらした「唯一無二の強さ」
なぜ、BYDだけがこれほどまでに強いのか。その答えは、創業時から王伝福会長がこだわり続けた「垂直統合(自前主義)」にあります。
バッテリー、モーター、半導体といった基幹部品のほぼすべてを自社で開発・生産できるため、サプライチェーンの混乱に強く、圧倒的なコスト競争力を維持できる。デザインの要求が技術を生み、その技術がまた新たなデザインを可能にするという好循環。この独自のビジネスモデルこそが、BYDを単なる「車のメーカー」から「エネルギー革命の覇者」へと押し上げた原動力なのです。
2026年に入って中国での国内販売は、前年割れが続くなどこれまで好調だった反動が出ていますが、BYDのこの苦境をどう乗り越えていくのか、王伝福会長の経営手腕に注目が集まりそうです。
まとめ:今回紹介した香港市場の主要銘柄
今回紹介した銘柄は、主に自動車と電池を手掛けるBYD(01211/002594)ですが、傘下で電子機器受託製造(EMS)業者を手掛けるBYDエレクトロニック(00285)も参考銘柄として掲載しておきます。BYDは香港証券取引所メインボードと深セン証券取引所A株市場に重複上場しており、BYDエレクトロニックは香港証券取引所メインボードに単独上場しています。
【中国の自動車・電池メーカー】電池を祖業とし、03年に自動車事業に参入。22年3月にガソリン車の生産から撤退し、純電気自動車とプラグインハイブリッド車に完全シフトした。自社開発のリン酸鉄リチウム系の「ブレードバッテリー」は米テスラなどにも供給。都市軌道交通事業も手掛ける。子会社のBYDエレクトロニック(00285)を通じてスマホや電子機器の受託製造サービスも展開。米著名投資家のバフェット氏の出資で脚光を浴びた。
【中国の電子機器受託製造業者】電子機器受託製造(EMS)業者として部品製造や組み立てを請け負う。親会社のBYD(01211)が大口顧客。電子・IT、AI、5G、IoT、熱管理、新素材、精密金型、デジタル製造といった技術を強みに、製品ソリューションを一括提供する。事業分野はスマートフォン、新エネルギー車、AIデータセンター、スマートホーム、ゲーム機器、ドローン、3Dプリンター、IoT機器、ロボットなど。







