気になるテーマ解説

金が人気の背景とは?

このところ、金(ゴールド)の価格が急激に上昇しています。町中にある買取店には店頭に金価格が表示されていますが、1グラム10000円を超えたのは過去の話。今では13000円近い水準です。10000円に乗せたとき換金した人も多かったようですが、まだ持っておけばよかった・・・と後悔しそうな値動きですね。


ちなみに、最近の推移はこのような感じです。


出所:Trading View CME金先物


3月以降、見事なまでに2段階の昇竜拳となっていますね。なぜこれまでに金が買われているのか漠然とした部分も多いと思いますので、今回は上昇の背景を探っていきます。


金を消費する国

金と言えば、真っ先に思いつくのは宝飾品だと思います。一際目立つネックレスや指輪を付けている人を見かけると「おお~お金持ちだ」となりますよね。そのような金について、世界で1年間に消費される量のシェアはご存じでしょうか。


内訳を調べてみると、このようになりました。


※World Gold Council提供データを基に弊社作成


断トツ1位は中国です。歴史的に見れば宝飾品としての需要が少しずつ高まっていったようですが、一番の理由は中国人民銀行による金買いと見られているようです。一部の調査会社によると、経済危機の際に強い資産であることや、米中対立などをきっかけに、ドルより金が選好されているとの観測がありました。


昨今では中国の不動産市況が低迷し、バブルが弾けたと言われています。現在、中国国民は現金志向が顕著とのことで、バブル崩壊後の日本を想起させますね。ただ、不動産の代わりに金を買うという動きも旺盛なようで、ここは日本と中国で違いが出てきています。


2位は意外かもしれませんが、インドも中国に匹敵する消費国です。文化的な側面もあって古くから金が好まれており、神話の神々は金色の装飾を身にまとっていることが特徴です。インドは世界最大の人口となりましたが、現在も貧富の差は大きいです。貧しい人の中には銀行口座を持てないケースもあり、そういった場合は資産として金を保有する傾向があるとのこと。門出の際にも子どもに金を持たせるなど、インドでは生活の何かしらに金が関わっているようです。


ちなみに、日本は27位です。日本人にとって、お金持ちでない限り金に触れる機会はあまり多くありません。たまたま金箔入りのお酒やアイスを嗜むくらいではないでしょうか。このように、金の市場は海外が主導しているということが分かりますね。


インフレや情勢悪化でも買われる

現在、世界的にインフレが進んでいます。モノの値段が上がり、現金の価値が相対的に目減りするという状況です。日本でもこれまでは値上げがしづらい状況でしたが、見てのとおり食品や生活用品が目に見えて値上がりしました。住宅価格も高騰しており、日本はいよいよ脱デフレの時代に突入という見方も増えてきています。


インフレが進めば、モノである金も値上がりしやすくなります。現金が目減りするなら値上がり期待のある金を買おうという人が増えますので、そういった買いによって金価格が上昇していくといった流れですね。


また、世界情勢の悪化も金価格の上昇に拍車をかけます。直近では中東情勢が緊迫化しており、イスラエルとイランの関係が最悪の状況です。実質的には戦争と言われてもおかしくはありません。それだけでなく、中国と台湾の問題、ロシア・ウクライナ紛争、米中対立の激化など、世界的に大きな影響がある国家間の問題が増えています。


例えば、ロシア・ウクライナ紛争をきっかけにロシアへの経済制裁が強まり、その結果として石油やガスなどの資源価格が上昇しました。また、コロナ後の米国経済が強いので、原油需要が高まるとの見方も資源価格を押し上げる要因の一つです。金については、宝飾品としての需要だけでなく、半導体などの電子部品にも使われ、化学工場では触媒としても使用されます。すべてリサイクルでまかなえればよいのですが、もちろんそれでは足りないので、産出国では鉱山で採掘がおこなわれています。


まとめると、実需が強い、インフレ、情勢不安などさまざまな要因が重なった結果、昨今のように金が急上昇していると考えられます。なお、勝手に価格が上がるわけではなく、今よりも高値で買おうという人がいるからこそ価格が上昇していきます。情勢が変わり、金はもう上がらないから売ろうという人が増えれば、下落していくかもしれません。


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日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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