コモディティという世界

第49回「NY金相場は反発 FRBのタカ派姿勢はブラフ(はったり)!?」

FOMC直後は価格調整が進むとの予想も


金の国際価格指標となるニューヨーク商品取引所(COMEX)先物は5月上旬に節目の1トロイオンス=2000ドル台を突破。中心限月ベースでは2080ドル台まで買われ、あと一歩で史上最高値更新というところまで急騰していました。ただ、そのあとはじり安の展開となっています。昨日15日には1936ドル付近まで売られ、5月26日の安値とほぼ同水準まで下げています。

 

NY金先物価格の日足チャート

出所:Trading View

 

 

米連邦準備理事会(FRB)は13-14日開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で市場予想通りFFレートの誘導目標を5.00-5.25%に据え置くことを決めましたが、同時に公表した政策金利見通し(ドット・チャート)では2023年末の予想中央値が5.6%と3月の5.1%から引き上げられ、年内に0.25%の利上げが2回実施される可能性が示唆されました。米利上げが長期化するとの観測から外国為替市場でドル高が進み、ドルと「逆相関」が生じやすいとされる金に売りが出た格好です。

 

金価格とドル指数の推移

出所:Trading View

 

 

FOMC直後は「金は価格調整が進む」との予想が聞かれました。「経済が過熱し、インフレが高止まりする中、更なる利上げが必要というFRBの見解が明確に示された。金利上昇やドル高の進行が金相場の大きな重しとなるだろう」「米経済が中長期的にリセッションに陥り、投資家のリスク回避の動きが加速するシナリオにも注意が必要だ」(よそうかい・グローバル・インベスターズ・インク代表 松本英毅)。

 

 

 

パウエルFRB議長のタカ派姿勢は「ブラフ(はったり)」

 

ただ、昨日はNY市場に入ると、株価が大幅に上昇。米国債が買われ(金利は低下)、ドルは下落。そして金は反発しました。FOMCの結果に対する消化が進み、年内2回の利上げが行われる公算は小さいとの見方が広がり、株高・債券高・商品高につながりました。ある市場関係者からは「ドット・チャートでは年内に0.25%の利上げが2回実施される可能性が示唆されたが、直近発表された5月米消費者物価指数(CPI)や5月米卸売物価指数(PPI)の下振れを踏まえるとFRBが再度利上げに踏み切ることには懐疑的」との声が聞かれました。

 

 

また、SNS上では「Bonds, Stocks & Bullion Bounce As Market Calls Powell's 'Hawkish' Bluff=米国債・株・金は反発している。パウエルFRB議長のタカ派姿勢は単なるブラフ(はったり)」との投稿が話題に。マーケットには「中央銀行に逆らうな」との格言がありますが、昨日のNY市場の動向を見ると、株・債券・コモディティ市場の全てがパウエルFRB議長を信じていないことが分かります。

 

「将来に対する偏った見通しを反映しているという意味において、相場は常に間違っている」とは、世界三大投資家の1人であるジョージ・ソロスの言葉ですが、間違っているのは果たして市場パウエルか。今後の動向に注目が集まります。

 

 


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為替情報部 アナリスト

中村 知博

鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。 外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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