投資信託が繰上償還されると、運用が強制的に終了し、保有資産は自動的に現金化されて口座に戻ります。繰上償還には、強制的に損切りになる可能性がある、運用効率の低下、機会損失が生じるなど6つのデメリットがあり、運用している口座がNISAの場合は非課税枠が消費されてしまいます。
本記事では、投資信託が繰上償還されたらどうなるのか、デメリット6つと実際にあった事例、NISA口座での注意点に加え、繰上償還を避けるためのファンドの選び方を解説します。
繰上償還されたら運用が強制終了し、お金が戻ってくる
繰上償還とは信託期間(運用期間)の満了日前に、投資信託の運用が強制終了することです。
多くのインデックス型ファンドは信託期間が無期限で設定されていますが、テーマ型など一部は償還日が定められています。繰上償還されると、証券会社など販売会社を通じて運用会社からお知らせが届き、自動的に現金化され口座にお金が戻ってきます。
投資家の意志とは関係なく運用が強制的に終了してしまうため、長期運用を目的に投資信託を保有している場合、運用効率が悪くなってしまいます。
繰上償還の条件は、多くのファンドで投資信託約款や交付目論見書に記載されています。 具体的な口数や基準価額が条件として定められている場合もありますが「やむを得ない事情が発生したとき」といった抽象的な表現も多く、実際は運用会社の判断で繰上償還されることがあります。
繰上償還のデメリット6つ
繰上償還には、主に以下の6つのデメリットがあります。
1.強制的に損切りになる可能性がある
基準価額が下落しているタイミングで繰上償還された場合、損失が確定してしまいます。損失を抱えている時に繰上償還された場合は、デメリットしかありません。
2.自分の意志と関係なく運用が強制終了される
繰上償還されると、ファンドの運用は強制的に終了してしまいます。長期運用を前提に投資信託を保有している方は、資産形成の計画を立て直さなくてはいけません。
3.運用効率の低下
元本と利息に対して利息がつく複利効果は、資産を長期で保有するほど恩恵が大きくなります

出典:金融庁「基礎から学べる金融ガイド」
長期投資の途中で繰上償還され強制的に終了されると、いったんリセットされますので、運用効率が低下する恐れがあるのです。
4.課税が生じる可能性がある
NISA口座以外で保有し含み益が出ている状態で償還されると、利益に対して約20.315%の税金が引かれ、次のファンドに投資する元本が目減りします。
5.機会損失が生じる
売却代金が口座に戻った後、新たな投資先を探して買い直すまでの間、お金が働かない期間(機会損失)が生まれます。 新たに投資先を決めるまで一時的に運用が止まってしまうため、資金効率も低下する可能性があります。
6.再投資の手間とコスト
繰上償還後に返還された資金を運用する場合は、改めて別の投資信託を選定し、購入する必要があります。購入手数料がかかるファンドはコストが生じ、再投資先のファンドを探す手間も発生してしまいます。
繰上償還の事例:PayPayアセットマネジメントの事業終了と繰上償還
2024年10月17日、投資信託の運用会社PayPayアセットマネジメントが、2025年9月末を目途に事業を終了することを発表しました。 事業終了の理由は業績不振で、2024年3月期までに5期連続の最終赤字となっていました。
PayPayアセットマネジメントが運用する商品には、NISAの「つみたて投資枠」や「成長投資枠」の対象商品も含まれていました。「PayPay投資信託インデックス 世界株式」など8本の投資信託は他の運用会社が引き継ぐことが決まりましたが、「PayPay投信 NASDAQ100インデックス」など4本は繰上償還されました。
投資信託は人気のある商品に資金が集まる一方で、資金が集まらない商品もあります。
PayPayアセットマネジメントの事例のように、大手グループの傘下の運用会社であっても、突然繰上償還が発表される可能性があるのです。
NISA口座での繰上償還の注意点
NISA口座で保有する投資信託が繰上償還された場合、その年の非課税枠が消費される、損益通算・繰越控除ができないという注意点があります。
投資信託の繰上償還は売却と同じ扱いとなりますので、NISAの非課税枠を消費します。
2024年以降は、売却した分の非課税投資枠が翌年以降に復活し再利用できるようになりました。ただし、翌年に使える範囲は年間投資枠の範囲内(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)に限られます。
また、NISA口座では譲渡損失が生じても、損益通算と繰越控除ができません。
そのため、損失が出た状態で繰上償還された場合、他の利益と相殺する「損益通算」や、最長3年間損失を繰り越せる「繰越控除」は利用できません。

繰上償還を避けるためのポイント
繰上償還を避けたい場合は、以下のポイントに注意して投資信託を選ぶことをおすすめします。
1.ファンドの純資産総額と運用体制を確認する
純資産総額が小さいファンドは、運用が困難になり繰上償還となる可能性があります。
明確な基準はありませんが、目安として純資産総額が30億円未満のファンドは避けた方が良いと言われています。
ただし、投資家が購入するファンド(ベビーファンド)をマザーファンドに投資する「ファミリーファンド方式」では、個別ファンドの純資産総額が小さくても、資金を共同運用するマザーファンドの純資産総額は多いことがあります。
まずは目論見書で、ファンドの運用体制を確認しましょう。
ファミリーファンド方式の場合は、ベビーファンドの純資産総額だけでは運用規模を判断できないため、投資先となるマザーファンドとその純資産総額をあわせて確認します。
保有後も半年もしくは年に一回程度、基準価額や純資産額などをチェックすることをおすすめします。
2.目論見書を確認する
新しい投資信託を購入する時には、交付目論見書の「信託期間」と「繰上償還」の項目を確認し、繰上償還の条件をチェックしましょう。
既に投資信託を運用している方も「購入時によく読まずに買った」というケースが多く見られますので、改めて交付目論見書・運用報告書に目を通しておきましょう。
3.運用会社の決算公告をチェックする
運用会社の事業終了や合併などにより、保有している投資信託が繰上償還される可能性があります。特に新興の運用会社は要注意です。
運用会社のウェブサイトに掲載されている財務情報(決算公告)を、定期的に確認しましょう。
まとめ
繰上償還は、投資信託の最大のリスクと言えるでしょう。
繰上償還を避けるためには、ファンドの純資産総額、目論見書の繰上償還条件を確認し、保有後も運用会社の決算公告を定期的にチェックしましょう。
万が一繰上償還が決まった場合は、次の投資先を早めに決め、「資金が働かない期間」を短くすることをおすすめします。



