記事頭から私事で恐縮ですが2023年3月、それまでのFP(ファイナンシャルプランナー)に加え証券外務員Ⅱ種を受験、無事合格しました。その上でかねてから試験合格を条件にお誘い頂いていたIFA会社にて、証券会社への登録手続きに入ったところです(2023年3月現在)。
目前に広がるのは2024年からのNISA新制度です。制度開始時は知名度不足だったNISAも市井の支持を得て、相当に広がってきました。このまま新制度の開始を迎えると、1億総NISA時代が到来しようとしています。
Youtubeを見て年40万投資
個別相談を受けていると(IFA登録前なので現在はFP、若しくは保険募集人としての相談)、1年でつみたてNISAの上限額である40万円を上限に投資している方が目立ちます。月3.3万円の投資額が多いのは、年間40万円を12で割っているためです。NISAの活用は自分自身でポリシーを持っているというよりも、影響力のある誰かからつみたてNISAはすべき!といわれただ従っている、という印象が強いです。
専門家は証券会社の無料説明会、ママコミュニティなどが目立ちます。なかにはYoutubeやTikTokを見てNISAを始めたという方々も一定数いるのには驚きました。これがボラティリティの高い暗号資産などでも同じ行動を取るのかは、専門家として杞憂するところです。
国の推奨するNISAです。安堵すべきはYoutubeを見て投資に取り組む方々が決して「投機」をしていないことです。コモディティや信用取引、暗号資産への投資を聞くことはほとんどなく、投資信託のパッシブ投資以外の投資が珍しいくらいです。
e-MAXISのオールカントリーやヘッジファンドのひふみ投信、時々フィディリティかアクティブのアライアンス・バーンスタインが人気ファンドです。もしかしたら四季報を見ての単元株投資よりも分散地投資が実現され、リスクは抑制されているのかもしれません。
2024年に来たるNISA新制度
そんななか、2024年からNISA新制度が開始されます。現行のつみたてNISAはつみたて投資枠と名前を変え、投資上限が年間40万円から120万円へ。一般のNISAもNISA成長枠となり、年間上限は現行の120万円から240万円に変わります。
一度投資した枠も売却によって復活する生涯投資枠も新設されます。成長枠とつみたて枠の併用も可能になるため、これまで年間40万円で運用をしていた1人の投資上限は一気に360万円まで膨れ上がります。
単純に投資上限額は9倍になるため、投資戦略も大きく変わっていくことでしょう。2023年後半あたりから、Youtubeなどでも新制度開始を受けて資産ポートフォリオをどうするか、目にすることが増えるのではないでしょうか。
投資上限は40万円から360万円になるなかでのIFAの役割は
そんななか、筆者もあらたに加わったIFAに期待されることとは何でしょうか。端的に述べると、これまで投資慣れしている方なら当然のことを、投資初心者のNISA利用層に伝えていくことではないかと考えています。
IFAに売買以外の相談習慣をつくる
NISAのみの投資層と話していると、売買時(つみたて時)に専門家の意見を聞きたいというニーズはあるものの、それが普段まで広がっていないことを実感します。
つみたてNISAは月1回、所定日の積立です。月に1回その時のみ評価損益を確認し、あとは塩漬けです。いわゆる生活の大部分を投資行為に費やしている方と比べたときに、現役の仕事があったり、生活における投資の優先度が高くなかったりという理由が考えられます。
ただ裏を返すと、相場が下落した際の損切りのタイミングや、新規購入・買い増しのタイミングをみすみす逃すことにも繋がります。また、資産運用がどうしても売買時のみという短期的な視点になり、本来の意味での資産運用と距離が生まれます。
そのためIFAから緻密なコミュニケーションを提案されたら、可能な限り対応するようにしたいものです。とはいえIFAにも売買寄りのIFAと、資産全般にアドバイスするのを軸とするIFAがいます。対応顧客の資産コンサルティングを売買時のスポットではなく、長期的に対応できるかどうかが今後IFAとして評価される鍵となっていくでしょう。
「貯蓄から投資へ」の実現へのステップ
その昔、経済成長期のただなかで大宅壮一さんが「1億総中流」という言葉を使って日本人を表現し、肯定・非難合わせて大騒ぎとなりました。2024年のNISA新制度は、国が10年近く前から推奨してきた「貯蓄から投資へ」への実現に大きくステップアップする機会といえます。
日頃の課題を第三者に相談する機会のない日本でも、今回は専門家に併走してもらう、という文化が根づくきっかけになるのではないでしょうか。筆者もIFAの新人として、目の前の顧客に価値提供できるよう研鑽を積んでいきたいものです。