【市場の投資心理】

なぜ、バブルが発生し、消滅するのか

市場参加者の心理は、多数意見に引きずられることがしばしばあります。これを「同調」といいます。自らの意思決定や投資基準を持っているにもかかわらず、多くの人々と言動を同じにすることで安心を得ようとすることがあります。


ウォール街には、「相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えて行く」という、あまりにも有名な格言があります。市場にユーフォリアが生じ、これが高じると、ファンダメンタルズの価値に対して資産価値が大きく乖離した現象ともいわれる「バブル」を生み出すといわれています。


「バブル」は、市場で極端な同調が生じ、投資家の意思決定が順応と集団思考に陥っていることを意味します。しかし、最後まで同調し続けることは投資における失敗につながりやすい。市場参加者の心理が極端に一方向に向かうときは、その方向に対するピークとなることが多く、相場の転換点となるケースが多いのです。


近年では、1989年末に株価がピークを打った日本の「平成バブル」、2000年前後の「ITバブル」、2007年にかけては世界的な住宅・不動産バブル(サブプライムバブル)が発生し、2008年の金融危機につながりました。


自分に適した投資手法を選択する

このようなスケールの大きな「バブル」だけではなく、短期的な株価の急騰局面でも「同調」によって失敗するケースは頻繁に発生します。


これらの問題に対処するには、(1)市場全体や個人投資家などの投資心理の研究、(2)資金管理や損切りなど独自の運用ルールの確立、(3)行動ファイナンスの研究、などが必要です。「心理的なバイアス」を意識的に抑制するのではなく、その存在を認めた上で、自分に適した投資手法を選択することが肝要といえましょう。


テクニカル分析の存在意義

テクニカル分析は、「心理的なバイアス」の変化を読み取る上で有効な手法です。売られ過ぎや買われ過ぎをみるRSI (相対力指数)やストキャスティクスのようなオシレーター系の指標や、騰落レシオのようなセンチメント系の指標などで、強気心理や弱気心理の偏り度合いを測ることができます。


出来高の増減により、市場人気の偏り度合いやその変化を推測することが可能です。また、伝統的手法の1つであるローソク足等で、「買いシグナル」や「底値の型」、「売りシグナル」や「天井の型」などを見極め、市場心理の変化を読み解く方法などもあります。


【参考】NPO法人日本テクニカルアナリスト協会テキスト資料


日本株情報部 チーフストラテジスト

東野 幸利

証券会社情報部、大手信託銀行トレーダー、大手銀行などの勤務を経て2006年に入社。 マーケット分析やデリバティブ市場のコンテンツを担当。世界主要指数や個別株を対象にテクニカル・ストラテジーの提案。 日経CNBC「夜エクスプレス」、日経チャンネル「マーケッツのツボ」、テレビ東京「モーニングサテライト」、ラジオ日経(金曜後場マーケットプレス)など 会社四季報プロ500、ダイヤモンド・ザイ、日経マネー、株主手帳など 金融機関向けコラム「相場一点喜怒哀楽」 IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA) 日本テクニカルアナリスト協会理事 CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務) DCアドバイザー(確定拠出型年金教育・普及協会)

東野 幸利の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております