米11月人員削減予定数、採用者数を逆転!ドル円は一段の下落も

W杯で日本が決勝リーグへ!なぜかドル円も円高に・・・


ドル円は12月1日、ワールド・カップの日本対スペイン戦の前から円高が進み、約3カ月ぶりに136円台を割り込みました。11月30日付けのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長による講演で、次回12月13~14日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げ幅縮小が決定的となったことが背景ですが、米労働関連指標も米利上げ幅縮小をサポートする内容が相次いでいます。


テクノロジー関連が主導し、労働市場が減速


米11月チャレンジャー人員削減予定数は前年同月比で約5.1倍増の7万6,835人でした。6ヵ月連続の増加となります。前月比でも約2.3倍へ急増しただけでなく、3カ月連続で増加。人員削減予定数自体は、2021年1月以来で最多となりU字型を描きました。


チャート:人員削減予定数、11月は2021年1月の数字に逆戻り

 


単月では3カ月連続で増加した結果、年初来では前年同期比5.9%増の32万173人でした。10月までの単月では1993年の統計開始以来で最低を更新していましたが、今回の急増で年初来で増加に転じた格好です。ただし、2021年に続き、1993年にデータ公表を開始して以降、年初来で2番目の低さとなります。


チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社のアンドリュー・チャレンジャー・シニア・バイス・プレジデントは、結果を受け「年初来で、テクノロジー部門での人員削減が最多となった」と指摘。ただし他セクターも徐々にリストラに着手しており、雇用も鈍化しつつある」といいます。


人員削減が多かったセクターのランキングは、年初来で以下の通り。10月に2位だったテクノロジーが自動車を抜き去り1位に浮上しました。足元でメタ・プラットフォームズが1万人単位の人員削減を発表したほか、HPも約6,000人、イーロン・マスク氏が買収完了したツイッターは全従業員の半分にあたる約3,700人、マイクロソフトは1,000人超など相次いで大幅なリストラを表明済みですよね。そのほかの業種では、サービスが前月の5位から小売に代わって4位に上昇しました。

1位 テクノロジー 8万978人、前年同期は1万2,761人

2位 自動車 3万669人、前年同期は1万277人

3位 ヘルスケア 2万9,031人 前年同期は2万7,447人

4位 サービス 2万1,213人 前年同期は2万6,996人

5位 小売 2万564人 前年同期は1万7,553人


州別動向は年初来で以下の通りで1、2、5位は人口別でのトップ5に入る州が並びました。1位のカリフォルニア州が突出して多いのはIT関連の人員削減が響いたのでしょう。前月5位のテキサス州に代わって3位に入ったワシントン州も、テクノロジー関連の人員削減で急速に増加したもよう。ミシガン州は自動車セクターのリストラ増加が背景にあります。


1位 カリフォルニア州 10万3,433人 前年同期は4万5,114人

2位 ニューヨーク州 2万9,283人 前年同期は1万4,572人

3位 ミシガン州 1万9,554人 前年同期は4,102人

4位 ワシントン州 1万9,194人 前年同期は4万596人

5位 ペンシルベニア州 1万4,580人 前年同期は9,966人


リストラ実施の理由別ランキングは、前月比で以下の通り。今回はコスト削減が4位から浮上して1位となったほか、市場動向も5位から2位に上昇しました。また今回、新たに住宅市場の減速がトップ5に入っています。年初来でも1位はコスト削減、2位は理由不明、3位は閉鎖、4位は市場動向、5位は需要低下が入りました。


1位 コスト削減 2万6,977人

2位 市場動向 6,273人

3位 理由不明 4,864人

4位 M&A 4,584人

5位 住宅市場の減速 2,684人


採用予定数は11月に前年同月比4.6倍増の3万203人と、2カ月連続でプラスでした。ただし、前月比では逆に87.3%減と、年初来で7回目の減少となっています。


チャート:11月の採用予定者数、2020年、2019年比では弱い

 

(作成:My Big Apple NY)


以上の結果を踏まえ、奇しくも、ワールド・カップ予選で日本がスペインを逆転して決勝リーグ進出したように、単月で人員削減予定数は採用予定数を逆転しました。これは年初来で初めて、ヒストリカルでは、2021年11月以降で初となります。


チャート:人員削減予定数が採用予定数を上回るのは、21年11月以降で初めて

 

求人数も失業は数の1.7倍に低下-ドル円は短期的に132円台も?


加えて、米10月雇用動態調査(JOLTS)でも求人数は1,033万人と前月の1,069万人(修正値)を3.3%下回りました。過去7ヵ月間で5回目の減少し、労働市場の減速は明白で、求人数と失業者の乖離は小幅ながら縮小しつつあります。


求人数が減少し失業者が増加した結果、9月FOMCでパウエルFRB議長が「労働市場を見る上で良い手段」と発言した求人数は失業者の1.7倍と前月の2倍から低下しました。


チャート:求人数は失業者数の1.7倍に低下

 


このまま着実に米労働市場が減速すれば、利上げ幅縮小→据え置き転換が見込まれ、悪化が著しければドル円はそれを織り込みに掛かるでしょう。上昇のスピードも著しかっただけに、ドル円は年初の上げ幅の半値押しの132.50円辺りを割り込むのも、そう遠くない?


チャート:ドル円の日足と米10年債利回り、ドル円は年初からの上げ幅の38.2%押しを達成済み

 


ストリート・インサイツ

金融記者やシンクタンクのアナリストとしての経験を生かし、政治経済を軸に米国動向をウォッチ。NHKや日経CNBCなどの TV 番組に出演歴があるほか、複数のメディアでコラムを執筆中。

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