2024年6月22日、2024年の大統領選再挑戦を確実にしているアメリカのトランプ前大統領は、メディアの取材に「副大統領は確定した」と発言しました。米国大統領選における副大統領は、大統領の右腕となるばかりではなく、万が一のときに「代替の大統領」となる重要な立ち位置です。かつ今回のトランプ候補、また対立候補となる民主党のバイデン現大統領にとっては、それぞれの弱点を補う特別な意味を持つといわれています。
アメリカ副大統領とは
副大統領は、臨時と平時で大きな役割があります。
大統領が欠けた場合は副大統領が昇格
アメリカ大統領が死亡・辞任・免職などにより欠けた場合、副大統領が大統領に昇格します。あらたに信任選挙を行うことはありません。過去、大統領の死亡(病死および暗殺)によって副大統領が昇格した事例は9件です。また大統領代行として、現職の大腸ポリープ摘出手術や内視鏡検査の際に、大統領権限を臨時代行した事例があります。
仮に手術のあいだに世界を揺るがすような事態が発生し、大統領として意思決定をする必要があるとします。そのときに現職大統領の手術終了を待つ余裕はありません。また国務大臣や国防大臣のようなほかの要職と比較して、代行権限を明確にしておくことで、国としての意思決定を明確にしておく目的もあります。
肥大化した大統領の職責分担役
近年では副大統領は、肥大化して過重になった大統領の職責を担っています。副大統領は上院議長を兼ね、上院で可否同数の場合は均衡を破る議長決裁権を有しています。現在、実際の上院の議事進行は上院仮議長代行が行い、副大統領自身は閣議に出席することが定着しています。
(民主党)バイデンの高齢問題とカマラ・ハリス氏の存在感
民主党はジョー・バイデン現大統領の高齢問題が注目されています。2024年時点で82歳を迎える大統領の右腕として、女性でアフリカ系のカマラ・ハリス氏が副大統領職を勤めています。
対する共和党のトランプ大統領も4歳下の78歳(本選挙時)と決して若くはないのですが、舌鋒の鋭さから見える影響か、同氏の年齢が論点に上がることはほとんどありません。むしろトランプ氏がバイデン氏の高齢を揶揄していることも多いです。
本来であればハリス氏の60歳という年齢(2024年時点)、また女性ということもあり、バイデン氏に何かあったときの引継ぎ役として注目されるはずでした。実際に2020年の大統領選挙では、2024年にはバイデン氏は出馬せずにバトンタッチをするだろうという予測もあったほどです。
ただ現在、ハリス氏は目立った存在感を出せていません。望まずして出せていないのか、バイデン氏を前面に出すことを最適解とする戦略なのかは、識者によっても見解が分かれます。肥大化している大統領・副大統領職務のうち、外交部分はバイデン氏が担っているため、アメリカ国外からは特に(ハリス氏が)目立たないのではという見方を取ることもできます。実際にバイデン氏は上院議長のキャリアにおいて、外交畑を広く歩んでいます。
2024年夏からの副大統領討論会においては、ハリス氏に対する4年間の「実績」が問われることでしょう。そのときにハリス氏に対して、どのようなプロデュースがされていくのかも論点のひとつです。
(共和党)毀誉褒貶の大きいトランプ氏の補完役とは?
2016年からのトランプ政権では、当初共和党内の対立候補だったマイク・ペンス氏が副大統領となりました。ただ2020年の退任時にペンス氏はトランプ氏と袂を分かっており、2024年の選挙にて再び副大統領候補となる可能性はゼロといえるでしょう。
同様に、2024年のトランプ氏側の副大統領も、同氏の補完役であることは間違いありません。「賢いトランプ・ミニトランプ」などと称されるフロリダ州知事(トランプ氏の地盤)で45歳のデサンティス氏や、最後までトランプ氏と候補の座を競ったヘイリー候補と近いティム・スコット氏などの名前が挙がっています。最後まで指名を競ったヘイリー氏自身の可能性もありますが、どうでしょうか。
「党派以上のもの」をどのように取り込むか
今回の大統領選は、無所属で立候補しているロバート・ケネディ・ジュニア氏も注目されています。名門ケネディ家の出身で世論調査で大きな支持を得ている一方、ほかのケネディ家はバイデン大統領の指示で固まったとも、トランプ氏からの副大統領の打診を断ったともいわれています。またトランプ氏の訴追問題がどのように展開するか、それにより共和党の支持基盤がどのように変化するかにも注目です。
これまでの大統領選のように、民主党と共和党それぞれの支持層を固めて、無党派層の支持を得られた方が大統領になる。その構図と少し異なる雰囲気を醸し出す今回の大統領選です。日本にとっても大きな影響があり、株式相場も注目する2024年最大の選挙は、これから本番を迎えます。