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第152回 今後のハンガリーフォリント円見通し、上昇トレンド継続で上値余地拡大へ 高金利状況は続く

今回解説していく通貨はハンガリーフォリント円(HUFJPY)です。ハンガリーは政治的には欧州連合(EU)に加盟しているものの、通貨「ユーロ」は導入しておらず、通貨は「ハンガリーフォリント」です。現在の政策金利は6.50%と近隣の欧州諸国と比較すると相対的に高水準にあり、外国為替証拠金取引(FX)におけるスワップポイントも高いため、近年は個人投資家からも人気のある通貨となっています。

では、スワップポイント投資先として長期的にも問題はないのか、チャート上でハンガリーフォリント円の状況を確認していきましょう。


2025年現在のハンガリーフォリント円の相場 1年近く続いたレジスタンスを上方向にブレイク



ハンガリーフォリント円は2024年の8月以降、0.41円台がレジスタンス水準として意識される状況が1年近く続いていたものの、2025年の6月下旬にはついに同水準を上抜け。これまでのレジスタンス帯を上方向にブレイクしたことで、足もとでは4月からの上昇トレンドが加速している状況にあります。


今後のハンガリーフォリント円の相場焦点 米欧間の貿易交渉に注意、中銀はインフレ警戒姿勢

ハンガリーフォリント円相場ですが、今後の材料としては欧州連合(EU)と米国の貿易交渉の行方が注目されます。ハンガリーの主要な貿易相手国はドイツで貿易全体の約70%がEU圏の国々となっており、欧州圏の景気低迷の影響が大きく、現在行われているEUと米国の貿易交渉が不調に終わった場合は先行き懸念が広がることになるでしょう。


EU側は現在、多くの輸出品に対する10%の一律関税を受け入れる用意があるとする一方、医薬品や半導体などの重要分野については米国側の譲歩を求めているという話が伝わっています。

米相互関税の上乗せ分の猶予期限である7月9日が間近に迫る中で今後も交渉が続くことになりますが、交渉が決裂して米国がEU製品のほぼすべてに50%の関税を課した場合、EU側も報復措置を行使する可能性が高く、そうなればEU圏の景気減速懸念もさらに広がることになるでしょう。

前述したようにEU加盟国であるハンガリーもその影響を受けるほか、世界的な景気後退への思惑が市場全般のリスク回避ムードにつながり、エマージング通貨であるハンガリーフォリントも売りに押されやすくなる可能性がありそうです。

 

また、ハンガリー国立銀行(中央銀行)の金融政策についても注意してみておきましょう。ハンガリー中銀は2023年10月から2024年9月まで断続的に利下げを実施。この間に政策金利は13.00%から6.50%まで引き下げられましたが、その後は金利据え置きを続けています。


この間の消費者物価指数(CPI)を確認すると、2023年1月に前年比25%台でピークを打った後、2024年9月には3.0%まで急激にインフレ鈍化が進行。一時はハンガリー中銀のインフレ目標(3.0%±1.0%)の中央値まで収まりました。ただ、足もとではインフレ再加速の兆しが見られており、2025年2月には5.6%まで上昇。直近(2025年5月)では4.4%と依然として中銀のインフレ目標上限を上回って推移しています。


再びインフレ鈍化が進んだ場合は中銀が利下げへと動く可能性もありそうですが、中銀は直近(6月24日)の金融政策決定会合時の声明でインフレ警戒姿勢を維持しました。インフレ見通しによると2025年の平均インフレ率は4.7%、2026年に3.7%、中央値の3.0%に落ち着く時期は2027年としており、市場では利下げ再開時期は早くても2026年以降と予想しています。


ハンガリーフォリント円の週足分析 2022年からは上昇トレンド、足もとでは買いが加速

下図のチャートはハンガリーフォリント円の週足チャートになります。現在は2022年3月安値を起点とする上昇トレンド(チャート上の青色実線)が続いているようです。昨年末にはトレンドラインを下抜けるピンチを迎える場面も見られましたが、これを回避すると前述したように足もとでは買い戻しが加速しています。

 


今後の上値目処については2024年5月と7月に上値を抑えられた0.44円台(チャート上の四角で囲った部分)が重要なポイントとなりそうです。

なお、チャート下部に追加した「DMI」で確認すると+DI>-DIとなっており、こちらでも現在が上昇トレンドであることを示唆。トレンドの強さを示すADXも昨年末から低下基調にありましたが、足もとでは再び上昇してあり、上昇トレンドが強まりつつあることを示しています。


ハンガリーフォリント円の月足分析 2009年からの下落基調は転換したか

今度はより長期的な視点でハンガリーフォリント円の流れを確認していきましょう。下図は月足チャート、チャート上の青色実線は週足分析で紹介したものと同じです。

 


長期的には2009年10月からの穏やかな下落基調(チャート上の黄色実線)といった印象でしょうか。ただ、それまでの徐々に上値を切り下げる構図は2022年を境に変化しており、2024年に上値を試した場面では2018年につけた直近高値をわずかながら上抜けています。


トレンドの転換を迎えた可能性も否定はできず、週足分析で紹介した上値目処(0.44円台)を上抜けると、2013年から2014年にかけて上値を抑えた0.49円台(チャート上の四角で囲った部分)まで一段と上値余地が拡大する可能性もありそうです。


なお、月足ベースの「DMI」でも+DI>-DI(上昇トレンド)に転換したことを示唆。トレンドの強さを示すADXが低下基調にある点は気になるところですが、地合いの改善がうかがえます。

 

今後の取引材料・変動要因をチェック 米国との貿易・関税に関する中銀の見解に注目

最後に今後1カ月間の重要イベントも確認しておきます。注目は日本およびハンガリーの金融政策。日銀については追加利上げ観測が後退しており、ハンガリー国立銀行(中央銀行)も政策金利を据え置く見込みで、日・ハンガリー間の金利差はしばらく維持されるでしょう。

また、両中銀ともにトランプ関税によって不確実性が高まっていることに懸念を示しているため、米相互関税の猶予期限を迎えた後の会合では、米国との貿易・関税についての新たな言及にも注目しておきたいところです。

その他のイベントは以下の通りとなります。

 

今後1カ月の重要イベント

7月8日 ハンガリー 6月消費者物価指数(CPI)

7月9日 米国 相互関税の上乗せ部分の猶予期限

7月18日 日本 6月全国CPI

7月22日 ハンガリー ハンガリー国立銀行(中央銀行)、金融政策公表

7月30-31日 日本 日銀金融政策決定会合

この連載の一覧
第152回 今後のハンガリーフォリント円見通し、上昇トレンド継続で上値余地拡大へ 高金利状況は続く
第151回 今後のNZドル米ドル見通し、下値確認でトレンド転換なるか
第150回 今後のメキシコペソ円見通し、レンジ継続も上抜けチャンスが到来
第149回 今後の豪ドル円見通し、調整が深まるか直近安値の維持が焦点に
第148回 今後のユーロ円見通し、貿易リスクはあるがチャート上では上昇期待も
第147回 ドル円相場見通し、一段の円高へと向かうリスク 2025年中に120円台もあり得るか
第146回 NZドル円(nzdjpy)相場予想、追加利下げ濃厚も下落トレンドは終了か?
第145回 トルコリラ円(try/jpy)相場予想、過去最安値更新で止まらぬ下落
第144回 ユーロドル為替相場予想、トレンド反転の判断は慎重に
第143回 南アフリカランド円相場予想、一目雲下限を維持できるか注目
第142回 豪ドル米ドル相場予想、下降トレンドへの移行で下押し圧力も増すか
第141回 ポンド円、下押し圧力を警戒すべき局面
第140回 NZドル米ドル、下落トレンド転換のチャンス到来か
第139回 メキシコペソ円、反発に向けたラストチャンスか
第138回 豪ドル円、調整局面入り
第137回 ユーロ円、昨年8月安値が再び焦点に
第136回 ドル円、短期的な下値リスクに要注意
第135回 NZドル円、さらなる下値余地拡大に注意
第134回 トルコリラ円、過去最安値更新が視野に
第133回 ユーロドル、2023年来のレンジ相場を下方ブレイク
第132回 ランド円、直近の下げ加速なら2020年来のトレンドも怪しく
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第130回 ポンド円、ダブルトップの完成が迫る
第129回 NZドル米ドル、一転下落で下値目標も迫る
第128回 メキシコペソ円、現状は7円台のレンジ相場
第127回 豪ドル円、穏やかな上昇トレンドながら下値リスクもちらり
第126回 ドル円、ポジティブな状況だがあまり強気に立ち回ると・・・
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第123回 トルコリラ円、週足でのトレンド転換はまだまだ遠く
第122回 ユーロドル、下値余地拡大の可能性に注意
第121回 豪ドル米ドル、慎重な判断が求められる局面
第120回 ランド円、一目均衡表の雲上限が今後のポイントに
第119回 米大統領選後のシナリオ別相場展望
第118回 米大統領選のアノマリー
第117回 米大統領選の直前特集、FX初心者向けガイド
第116回 ポンド円、上昇トレンドチャネルが維持できれば・・
第115回 NZドル米ドル、「三角保ち合い」は上方ブレイクで決着
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第113回 ポンドドル、10年来の下げ相場転換に向けて
第112回 メキシコペソ円、一段の下値余地拡大に注意
第111回 豪ドル円、4年続いたトレンドが終了
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第109回 NZドル円、相対的な上値の重さが目立つ
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第102回 メキシコペソ円、2022年からの上昇トレンドは終了?
第101回 ユーロドル、現在の下落基調でレンジブレイクなるか
第100回 トルコリラ円、週足ベースでも変化の兆し
第99回 豪ドル円、10数年ぶりの高値の視野に
第98回 NZドル円、ますます上昇トレンドが明瞭に
第97回 ポンドドル、短期的には上方向へ
第96回 ユーロ円、ユーロ導入来高値更新で未知の領域へ
第95回 ランド円、10数年来の相場転換となる可能性も
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第91回 豪ドル米ドル、上方向は攻めづらい
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第89回 ユーロドル、ヘッド・アンド・ショルダーズの完成なるか
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第82回 ユーロドル、レンジ相場脱却の手掛かりは乏しい
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第39回 ダウ理論とエリオット波動(3)
第38回 ダウ理論とエリオット波動(2)
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第36回 ローソク足(3)
第35回 ローソク足(2)
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第33回 一目均衡表(4)
第32回 一目均衡表(3)
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第29回 リトレースメント
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第6回「誰にでもわかるチャート教室」 移動平均線~その2
第5回「誰にでもわかるチャート教室」 移動平均線~その1
第4回「誰にでもわかるチャート教室」チャネルラインと外国為替市場の独自性
第3回「誰にでもわかるチャート教室」相場の方向性が一目瞭然、トレンドライン
第2回「誰にでもわかるチャート教室」相場のトレンドを探る
第1回「誰にでもわかるチャート教室」 相場が不安定だからこそ、チャート分析に頼りたい

為替情報部 アナリスト

岩間 大祐

大学卒業後の2004年に国内証券会社に入社。 外国為替証拠金取引業務に携わった後、金融情報サービス会社にて個人投資家向けの為替情報配信業務を担当。市況サービスのほか、テクニカル分析を軸にした情報を配信する。 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト。

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