トランプ関税がリスクなるも…
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は2025年7月2日21時頃、対円では1550万円前後と前週(7日前)比で約0.8%低い水準で取引されています。一方、為替でドル安が進行した影響もあり、BTCドルは前週比0.3%ほど高い10万7400ドル台での推移です。
BTC円の動きを簡単に振り返ると、25日夜1575万円と1週間半ぶりの高値まで上昇しました。イスラエル・イラン紛争が一先ず停戦に向けて動きだし、中東の地政学リスクが後退。これを受けてリスク資産に資金が向かい、BTC相場も歩調を合わせました。
しかしながら一巡後は伸び悩み、持ち高調整の売りに1540万円台まで押されます。週明け6月30日も一時1570万円超えまで買われましたが、その後は1512万円前後まで売り圧力が強まりました。こちらは、トランプ関税への警戒感が高まったことが重しとなりました。
米国が貿易相手国に設定した上乗せ関税の猶予期限・7月9日が近づくなか、トランプ大統領がまた強気な姿勢を取り出しました。特に日本との自動車貿易に対して不満を表明し、関税強化も示唆。日本株の弱含みにつれて、BTC円も水準を切り下げています。
しかしながら米国株式市場は、ナスダック総合やS&P500が史上最高値を更新するなど好調なままでした。BTC相場全般への資金流入は続き、対円も下値は固いままでした。
※Trading Viewより
BTC、月間では3カ月続伸
前述したように外国為替市場ではドル安が進行し、BTCも対ドルでしっかりした動きでした。主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは、7月1日には96.38と2022年2月以来の水準まで低下しています。
トランプ米大統領が推し進める大規模な減税・歳出法案による「米財政の悪化懸念」が、ドル離れを促した要因の1つ。また、トランプ政権が米連邦準備理事会(FRB)に対して利下げ圧力を強め、「中央銀行の独立性に対する疑問」もドルを買いづらくさせたようです。
さて6月のBTCドルは、11万ドル台に乗せて過去最高値の更新も視野に入ったように見えました。しかしながら、その約2週間後には9万8000ドル台まで下落。紆余曲折ありながら結局は10万7000ドル超え、月間騰落率2.5%上昇で終えています。3カ月連続の月間プラスです。
6月末ということもあり四半期分もみると、4-6月期のリターンは29.74%と1-3月期の11.8%減から大きく切り返しました。
※BTCの月間や四半期騰落率は、暗号資産分析サイトcoinglassより
上半期で目立ったのは?
この半年、暗号資産擁護派となったトランプ氏のおかげもあってか、米国ではビットコインを戦略的な準備金に採用しようとする州や公的機関の動きが広がりつつあります。もちろん全ての州というわけではなく、BTC準備金の導入法案を否決する州議会も複数あります。
ただ、日ごろ暗号資産のニュースを追っていると、現状は「ビットコインを戦略的な準備金に入れる」という流れは続きそうだと感じざるを得ません。
※Bitcoin Lawより、全米各州の戦略的BTC準備金法案の進捗状況
そして、最近目立っているのは上場企業によるBTC財務戦略の強化や採用です。BTCを購入・保持することで企業価値を上げようとする企業が増えつつあります。
「Corporate treasuries double ETF Bitcoin buys in H1, signaling aggressive boardroom adoption」CryptoSlate
(上半期のビットコイン購入、企業財務はETFの2倍 企業経営による積極的な導入を示唆)
こちらの記事では、今年6月までの半年間で上場企業は合計24万5510BTCを取得。これは前年同時期と比較すると375%増と大幅な伸びです。一方、同じ期間に現物ビットコインETFが市場から獲得した数は11万8000BTC超であり、上場企業合計の半分程度です。こちらは、前年同期と比較すると56%の減少でした。
「Public companies bought more bitcoin than ETFs did for the third quarter in a row」CNBC
(上場企業のビットコイン購入量は、3四半期連続でETFを上回った)
昨年の第4四半期までさかのぼり、上場企業が3四半期連続で現物ビットコインETFよりも多く購入していることを指摘しています。直近の4-6月期では、上場企業の保有量は約18%増加したと述べています。
現物ビットコインETFは6月末時点で、ビットコインの上限供給量2100万BTCの約6.8%(140BTC超)を集めています。一方、上場企業全体の保有数はETFには届きませんが、供給量の約4%(85.5万BTC)まで拡大してきました。
企業はビットコインを単なる投機的な投資ではなく、長期的な財務資産として捉え始めているようです。今後はこの動きが、まだまだ拡大していくのではないでしょうか。