アルツハイマー治療薬の迅速承認で検査需要が増加か
エーザイは1月7日、米バイオジェンと共同開発したアルツハイマー病(AD)治療薬「レカネマブ」について、米国食品医薬品局(FDA)から迅速承認を取得したと発表しました。
市場では同薬に対する期待が高まっていたこともあり、迅速承認を取得したことを受けて、10日の東京株式市場で同社株価は急騰。一時9%超の上昇となりました。
同社の株価は、同じくアルツハイマー病治療薬のアデュカヌマブがFDAに承認された2021年に上場来高値12765円を付ける場面がありましたが、その後利用が進まなかったことで調整。2022年の安値では5011円まで下げました。それだけにアデュカヌマブよりも治療効果が高いとされるレカネマブに対する期待は大きく、今回の迅速承認は待ちに待った吉報と言えるでしょう。
今後は保険適用の範囲拡大などが株価材料になると予想され、しばらく同社の株価は市場でも大きな注目を集めそうです。
ただ、アルツハイマー病に関連する銘柄はエーザイだけではありません。エーザイ以外にEli Lilly(イーライリリー)社が開発を進めているドナネマブも、2022年に第3相臨床試験の中間解析で主要評価項目および副次評価項目を達成しており、有効な治療薬として期待されています。
そのほか、治療薬以外にも注目を集めているのが検査関連です。レカネマブの米国での価格は年間2万6500ドル(約350万円)とされています。高額な薬ということもあり、治療の前には脳の画像診断や脊髄穿刺によって脳内にアミロイドβが沈着していることを確認する必要があります。この確認のための検査を手がけている銘柄もアルツハイマー病の関連銘柄と言えるでしょう。
シスメックス<6869.T>の日足チャート
検体検査機器・試薬大手のシスメックスもそのうちの1社です。シスメックスでは、2022年12月にも厚生労働省から血液中のアミロイドβを測定する検査試薬の国内での製造販売承認を取得したと発表しました。開発した試薬はエーザイとの共同開発によるもので、微量の血液からアルツハイマー病の兆候を診断するとしています。
富士フイルムホールディングス<4901.T>の日足チャート
富士フイルムホールディングスのグループ企業である富士フイルムは、国立精神・神経医療研究センターと共同で、アルツハイマー病の進行予測AI技術を用いて、2年以内に軽度認知障害(MCI)患者がアルツハイマー病へ進行するかどうかを最大88%の精度で予測することに成功したとの研究を発表しました。これは画像認識技術などを応用して開発されたものです。
そのほか、同社グループの富士レビオ社傘下であるFujirebio Diagnosticsにおいては、アルツハイマー病によるアミロイド斑を早期に検出する初めての臨床検査として、ルミパルスG β-アミロイド比(1-42/1-40)検査がFDAから承認されています。
島津製作所<7701.T>の日足チャート
島津製作所は2021年から少量の血液からアルツハイマー型認知症の原因とみられるたんぱく質「アミロイドβ」が測定でき、同疾患の検査に使える「血中アミロイドペプチド測定システム」を発売しています。また、2022年には血液バイオマーカーを用いた認知症診断ワークフローの構築に向け、同社ほかエーザイ、大分大学・臼杵市医師会が共同研究を実施するなど、さまざまな取り組みをおこなっています。
オキサイド<6521.T>の日足チャート
オキサイドも実は関連銘柄の一つです。同社が開発・製造する酸化物単結晶や光部品、レーザー光源、光計測装置などの光学関連製品は、シリコンウエハーの品質検査装置など半導体向けの印象が強いですが、そのほかがん診断用PET(陽電子放射断層撮影)検査装置などヘルスケア向けも手がけています。
アルツハイマー型認知症の原因物質とされるアミロイドβの分布や量を精密に検査するため、頭部専用PET検査が実施されるケースが増えれば、検査装置向けに同社製品の需要も増えるとの思惑から、10日の東京市場では同社株価はエーザイと同様に急騰。高いところでは前日比13%上昇する場面もみられました。
エーザイのレカネマブが迅速承認されたことで、アルツハイマー病関連の検査需要は、今後ますます増加が見込まれます。エーザイだけでなく、その他の銘柄についても関連としてチェックしてみると、投資のチャンスにつながるでしょう。