今回解説するのはNZドル円です。現在の相場は上昇基調にありますが、このトレンドが今後も続くかどうか、注意すべき点も見ていきましょう。また、ファンダメンタルズでは米国とニュージーランドの金融政策に注目が集まります。両国ともに金融緩和の方向にあるため、今後の緩和ペースの違いが相場の行方を左右するかもしれません。
2025年のNZドル円相場:8月調整も上昇トレンドは維持
NZドル円は昨年11月からの下落基調が4月上旬で転換しました。この4月上旬の急落は「セリング・クライマックス」となり、その後は下値を切り上げる展開が続きました。穏やかな買い戻しが続き、7月28日には一時89.07円と1月以来の高値を更新しています。
8月1日に一時的な調整局面を迎え、それまでの緩やかな上昇トレンドラインを下抜けました。しかし、その後すぐに下値を切り上げる動きを見せているため、現在もNZドル円見通しは上昇基調を維持していると判断できます。
今後のNZドル円相場の焦点:米国とNZの金融政策、日本の政局も波乱要因か
今後のNZドル円見通しは、米国とニュージーランドの金融政策、さらに日本の政局が焦点となりそうです。
米国: 8月1日に発表された7月米雇用統計では、過去分の下方修正が市場の注目を集めました。これにより米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ観測が高まり、次回の会合での0.25%利下げはほぼ織り込まれています。一部では0.50%の利下げの可能性も指摘されており、米金利の先安感が強まればドル相場に影響を与えるでしょう。
日本: 前週の自民党両院議員総会で総裁選の前倒しが議題に上がりました。党則に基づき前倒し開催の可能性が高まれば、政局の不透明感が増し、円相場に影響を与える可能性があります。
ニュージーランド: NZ準備銀行(RBNZ)は昨年8月から断続的に利下げを続けてきましたが、7月の政策決定会合では政策金利を3.25%で据え置きました。声明文では「中期的なインフレ圧力が予想通り緩和し続ける場合、今後さらに政策金利を引き下げる見通し」と言及しており、将来的な追加利下げの可能性を示唆しています。金利先物市場では年内に1-2回程度の利下げが織り込まれており、金利動向に素直に反応する展開が期待されます。
NZドル円 週足チャート分析:中期的なターゲットは92円
下図のチャートはNZドル円の週足チャートになります。
現在は4月中旬からの上昇トレンド(チャート上の黄色実線)にあります。中期的なターゲットとしては、昨年9月から11月にかけて上値を抑えてきた92円前後のゾーン(チャート上の四角で囲った部分)が意識されます。
しかし、チャート下部の「DMI」を見ると、+DIと-DIがほぼ同値であり、明確なトレンドは示唆されていません。トレンドの強さを示すADXも低下しているため、現在の上昇トレンドは見た目ほど強くない可能性もあります。
NZドル円 日足チャート分析:8月1日急落からの回復が鍵
下図のチャートは日足チャートになります。
日足ベースの「DMI」では+DIが-DIを上回っており、上昇トレンドを示唆していますが、ADXの低下から、この上昇トレンドには危うさも見え隠れします。
今後のNZドル円の動向を占う上で重要なのは、8月1日に急落した分を完全に取り戻せるかどうかです。上昇トレンド継続のためには、まずこの急落分を回復し、7月28日につけた直近高値89.07円を上抜ける必要があります。また、昨年7月高値から今年4月安値までの下げ幅に対する半値戻し(89.42円)も直近のターゲットとなるでしょう。
逆に、上値目処を試す前に8月4日・5日安値の86.67円(チャート上の丸で囲った部分)を下抜けてしまうと、さらなる調整や本格的なトレンド反転も視野に入れる必要があります。
今後の取引材料・変動要因をチェック:NZ中銀の金融政策に注目
最後に今後1カ月間の経済指標や重要イベント等も確認しておきます。最大の注目材料はNZ準備銀行(中央銀行、RBNZ)の金融政策です。日銀は期間内に金融政策決定会合の開催はありませんが、9月18-19日に予定されています。
また、例年各国の中銀関係者が集まり、市場の注目を集める米ジャクソンホール会議が今年も8月21-23日の日程で開催されるため、日本やNZの中銀総裁などが出席した場合はこちらにも注意が必要です。
その他のイベントは以下の通りとなります。
今後1カ月の重要イベント
・8月20日 NZ RBNZ、金融政策決定会合
・8月22日 日本 7月全国消費者物価指数(CPI)
・8月21-23日 米国 ジャクソンホール会議