改革進む出産・育児周りの公的保障 その施策は「現行」と「将来」のどちらなのか

国の推奨する異次元の少子化対策。出産・育児費用まわりはいま、大きな変革期を迎えています。日々報じられるニュースに、その制度改正は今現在なのか、それとも近い将来なのか


わからなくなってきます。特に出産周りは当該世帯の夫婦にとって継続的に当事者ごとになるのではなく、いまお腹にいる子どもにはどの制度が該当するのか、今後の出産はどうなるのかというスポットのニーズがあります。


3年後に出産支援は大きく変わるよ!といわれても、いまお腹のなかの子で最後かなという夫婦には、タイミング遅れにしか映りません。


出産・育児の施策は現在のものか、将来の予定か


まずニュースになっている国の施策がいま現在のものなのか、これから実務上の構築をする将来の話かを一覧にします。

出典:国の発表にもとづいて筆者作成


現在進行中の施策は③の出産育児一時金が中心です。2023年3月まで42万円(産科医療補償制度の対象の場合)ですが、4月から50万円に変わります。また不妊治療への公的保障適用は2022年から開始しました。同じく不妊治療の医療費控除適用は現場で適用扱いされていたものの、2022年に国税庁が正式に認めています。


これから開始・検討される施策のまとめ


一方でこれから開始するのは、児童手当の所得制限撤廃です。数年前には撤廃に反対の立場だった与党が急転直下、賛成に回りました。現在は子どもの数(扶養親族の数)に合わせて所得制限が設けられており、収入ベースで1000~1200万円が基準です。これらの上限制限を無くすことで、少子化を解決していこうと国は考えています。


そして昨今メディアを賑わせているのが正常出産の公的保障組み入れです。現役世代で正常出産は3割の自己負担上限しか拠出する必要が無くなります。上記表の②にある通り、現在の出産育児一時金は停止の方向に動きますが、自己負担分も何かしらの給付金が受け取れる調整が進んでいるようです。


そうなると、出産費用は1円もかからない計算になります。短く見積もったとしても、1-2年かけて状況が整えられていくものと考えられます。出産が無料になることは、社会的インパクトのとても大きなものです。


投資家として「異次元の少子化対策」をどう見るか


異次元の少子化対策は子どもを産みたいけれども出産費用に不足意識がある方向けのため、受け取ることのできた資金をどこかに使って経済効果を生むといった趣旨からは少し異なります。少子化対策が進むことで注目の投資銘柄が生まれるといったことはないでしょう。ただ不妊治療や出産費用などに対する認識は変わる可能性があります。


これまでは出産費用・不妊治療ともに、想定以上のお金がかかるというライフイベントでした。長く国は出産育児一時金の42万円が実際の出産費用相当額と表明してきましたが、実際は42万円で収まらないという声を受け、50万円に増額された背景があります。


少子化対策が進み当事者に心の余裕が生まれると、僅かながらも経済的に余裕が生まれた意識から出産用品や育児用品など、購買意欲に繋がる可能性が高まります。その心理的変化がどのタイミングで来るかは投資家各位にとっての腕の見せ所といえるでしょう。


次の国政選挙まで何年か


出産費用の公的保障が旗を掲げられたのは、2023年4月に多くの地方選挙が行われるためとも揶揄されています。2週連続で実施される地方統一選挙です。選挙をきっかけとして政策討議が進むのは良いことなのですが、過度にあからさまな集票アピールは違和感を感じます。とはいえ、出産施策の遂行は道半ばなので、統一地方選挙の次はいつか、という議論に移っていきます。


次回の参議院選挙は2025年7月前後で、解散がなければ次の衆議院選挙も同一の2025年10月から11月です。それまで何があるかわかりませんが、2025年夏に衆参同一選挙が行われる可能性もあるでしょう。


もしそのスケジュールが実現すれば、少子化対策は最大の争点となります。現時点から取り組まれている施策が本当に適切なのか、施策の妥当性や効果測定が問われることになるでしょう。さまざまな思惑が絡みますが、子どもを生み育てる若い夫婦にとって、一歩ずつでも暮らしやすい世の中になっていくことを願います。


独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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