ドル建て一時払い終身保険。この言葉だけを聞くと比較的リスクが高い印象がありますが、このご時世のなかで10年4%の利率を確約する保険です。低利率に目を覆いながら当面使わないお金を金融機関に預けておくよりも効果的です。
2024年の新制度開始を受けて世間で高まるNISA熱ですが、投資信託である以上リスクは存在します。比較したときに一時払い終身保険はリスクが可視化されていて顧客への説明もしやすいのですが、何故かこの商品は専門家への人気が低い、ともいわれています。
一時払い終身保険の期待リターンとリスク
一時払い終身保険は相続対策として昔から人気の商品です。まとまった一時金(保険会社によって最低200万円もしくは300万円)を保険会社に預け、運用します。複利で3%から4%が期待できるため、積極的にファンドを変えない「塩漬けNISA」よりは効果的でしょう。
魅力的なのはその4%が運用が上手くいったときの仮説リターンではなく、確定であることです。保険会社にもよりますが契約時から10年、もしくは30年に渡って契約利率が適用されます。
適用利率は1カ月に1回、もしくは半月に1回です。日銀における金融緩和からの脱却策やアメリカの金利引き締めが報道されるなかで、現在の3-4%がそろそろ下落傾向に落ちるのではないかと保険業界では予測されていますが、2023年に入っても予想に反し高利率が落ちない状況です。
筆者も記載の会社ではないですが、兼業で勤めている保険会社で一時払い終身保険を相談者にご案内することが多いです。自分で積極的に運用をする方ばかりではなく、3年も5年も銀行にお金を預けたまま記帳をしたことさえもない、という方が数多く存在します。
特に筆者が勤めているのは20代や30代の結婚数年後から5歳以下の子どもを持つ層のため、結婚前の独身時代に貯めておいた「いつかのためのお金」を使う機会がなく、4%に期待した層からお申し込みを頂きます。
なお保険会社にもよりますが、一時払い終身は日本円建、アメリカ(米)ドル建て、オーストラリア(豪)ドル建てがあります。金利はアメリカ>オーストラリア>日本というところでしょうか。契約動向を見ていると、ドルによる申込実績が圧倒的です。
一時払い終身保険は相続対策になる
もう1つの大きな特徴は、一時払い終身に加入することで相続対策になる点です。相続において生命保険を承継した場合、500万円×法定相続人が非課税枠となります。生命保険自体は特定の相続人が承継する資産のため、特定の相続人に非課税メリットを享受することができます。
資産ポートフォリオのなかで十分な資産があり、そのうえで相続の節税メリットを享受したいときに、一時払い終身を選択する方が多いです。生命保険金の受取人を資産を渡したい相続人にすることで節税メリットを可能とします。
専門家は一時払い終身のデメリットとして何を指摘しているのか
複数のメリットを並べてきましたが、専門家はコンサルティングにおいて一時払い終身を敬遠することが多いです。主に次の理由が挙げられています。
為替リスクを回避しづらい
ドル建ての場合、申込時に日本円で一時金を入金しドルに変換します。10年以上経過してから解約し円に戻すときに、契約時より円高に動いていると為替損が発生します(契約時130円、解約時120円など)。この場合、折角複利で蓄えた利率を「食べてしまう」ことになるため、長期運用した割に獲得利益が限定的にならないかという指摘です。一理ありますが、このような為替リスクは一時払いに限った話ではないため、他の方法で運用したときの期待リターンと比較して考えることが大切です。
長期運用になると利率が逓減する
複利で見ると大きなメリットがありますが、保険によっては長期加入後、年次1%前後の場合があります。この期間について他の運用商品と比較した際に、メリットが無いのではという指摘です。ただ、一時払い終身において解約時のデメリット(解約控除)が大きいのは最初の5年から10年のため、何年での解約ならば他の商品と比較したときにメリットがあるのかを個別に考えるようにしましょう。
もちろん、生命保険は随時見直され、より高いメリットが享受できる保険が生まれます。かつ資産運用は決して保険に優位性のあるものではなく、顧客ごとに行き着く最善の運用方法が保険であったときに加入を検討すべきものです。
長く連載を頂いている本メディアに上梓する記事としては珍しく特定の方法によった記事をお届けしましたが、詳しくは頼りになる専門家と信頼関係を築いて相談できるようになっていきましょう(強くは書きませんでしたが、ご希望であれば筆者も個別相談を受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください)。