2023年1月の電気代が自宅に届いて、思わず素っ頓狂な声をあげた人も多いでしょう。暖房シーズンでもあり、年末年始で在宅率が高かったことを差し引いても、想定の2倍3倍の費用を請求された方も珍しくなかったようです。SNSには戸惑う声が並びました。なぜ2023年1月の電気代はこれほど高くなったのでしょうか。
なぜ1月の電気代は高くなったのか
電気代は個人の家計にとって欠かせない支出です。電気代が高くなったからといって、ロウソクで暮らすわけにはいきません。家庭においてガス設備を使わず、すべてを電力で対処するオール電化の家庭も数多くあります。電気代の料金は、どのように決まるのでしょうか。
基本料金(最低料金) = (電力量単価 × 使用料 )
± (燃料費調整単価 × 使用料 )
+ (再生可能エネルギー発電促進賦課金単価 × 使用料 )
上記表のいずれかの項目が値上がりすると、各家庭に請求される電気代が増加します。
1月はほかの月と比較すると相対的に電気代は高めですが、2022年やその前の同月と比べても請求額が増額しているならば使用料ではなく、電気代そのものが高くなっているとの仮説が成り立ちます。
ロシアへの経済制裁の影響
原因のひとつはロシアとウクライナによる戦争の影響です。戦争は長期化し、いつ戦争が終結するのかも予測できない事態が続いています。
戦争自体も電気代高騰の要因ですが、より大きな理由は日本が欧米諸国と組んでロシアに課している経済制裁です。日本はロシアによるウクライナ侵攻への抗議として、全面的に同国との貿易を停止しています。2023年3月に岸田総理がウクライナを訪問した動きを見るに、時間が経つにつれより旗色を鮮明にしたと考えられるでしょう。
戦争前、親密な貿易国として発電の主要燃料となる液化天然ガス(LNG)の輸入をロシアに頼っていた日本は、経済制裁によって代わりの輸入先を探さなければならなくなりました。原子力発電からの離脱傾向も手伝い、世界でも需要の高いLNGの需要増加は日本に限った話ではありません。
今回の電力高騰も世界的な共通傾向といえます。。日本は特に自国でLNGの生産がほとんど期待できないため(自国消費量に対する自国生産量2.2%:経済産業省 )、代わりのLNG輸入先には苦労したことが推察できます。値上げ提示には飲まざるを得ない側面もあるでしょう。この輸入額増加が先の計算式の要因となり、各家庭に降りかかった形です。
電気代上昇を受けた国の施策
個人家庭だけではなく、店舗や工場などの企業経営にとっても電気代高騰は深刻な問題です。これらの価格高騰を受け、経済産業省は「電気・ガス激変緩和対策事業」をスタートさせました。
具体的に2023年1月期(2月請求)から平均として電気で2,800円/月、都市ガスで900円/月を国が支援します。2023年3月現在、支援は半年間の2023年9月分(10月検針分)までと定められました。特に消費者側からの手続きは不要のため、毎月の請求書を見ていて気がついたら落ち着いた、という展開になるでしょう。
一方で今回の高騰を受け、電気代そのものを上げる電力会社が増える可能性も高いです。今後さらに電力代が高騰したときに、顧客に価格転嫁をしない体制づくりも進められるでしょう。また電力会社の値上げ額が緩和対策事業の補助額を超えると、差し引きされた家計の負担額も上昇します。
家計管理の意識付けとしては、昨年までの電気代から上がった!ではなく、今年の電気代を基本ベースとして、家計管理に落とし込んでおくことが求められます。家計管理の視点では電気代の値上げ分を流動支出ではなく、固定支出と定義することをお勧めします。
このような物価高騰にどう備えるべきか
電気代だけではなく物価全体が上昇基調にあるなか、家計においても対策が求められます。原材料の高騰がストレートに購入価格に影響することはなく、企業による防波堤を超える影響となったらはじめて、スーパーの価格や請求価格が上昇する流れです。
突然お店に行って手にとって高値に気づいたり、今回の電気代のように請求書が届いて値上げに驚嘆するケースもあるでしょう。取り急ぎ、今できる対策は、値上げ用の費用をプールすることです。食費や水道光熱費とは別に、値上げの際に取り崩す財布のようなものを作ります。
そうすることによって値上げ分を可視化することにも繋がります。かつ、仕事以外にも収入を得る術を見つけることが重要です。過剰なリスクを取る必要はどこにもないので、インデックスファンドなどを活用し、お金を生み出していくようにしましょう。
巷で話題になっているNISAを使えば、配当所得を非課税にすることもできます。投資という言葉に抵抗のある方にとっても、このような非連続の状況における対抗策として、投資は効果的です。