「国際分散投資」という言葉を聞いたことがあるのでしょうか?1つの国だけに集中的に投資してしまうとリスクが大きいため、複数の国に分散して投資するというリスク分散の手法です。日本人が、身近な銘柄の多い国内市場に投資するのは自然な流れだと思いますが、リスクを分散させようと思ったら、外国株投資も考えてみましょう。
では実際に国際分散投資を考える場合、どこの国に分散させたらいいのか?分散の考え方はいろいろありますが、 すでに日本株に投資している人であれば、株式市場の規模が大きい米国株や中国株が選択肢に入ってきます。そして、リスク分散の効果を高めるという意味で言えば、日本と同じ先進国である米国株よりも、高い成長が期待される新興国の一角である中国株は有力候補の一つになってくるでしょう。今回は、その中国株が上場する中国の証券取引所について見ていきたいと思います。
世界の証券取引所時価総額ランキング、上海・深セン・香港がトップ10入り
まずは世界の主要取引所が加盟する国際機関、国際取引所連合(WFE)が発表している世界の証券取引所の時価総額のランキングを見ていきます。取引所の合併・買収などがあって名称が変わっているものもありますが、2010年末と2020年末との比較です。
2010年には6位に上海証券取引所、7位に香港証券取引所が入っていますが、2020年には上海証券取引所がトップ3に食い込み、香港証券取引所が5位とそれぞれ順位を上げ、深セン証券取引所が圏外から7位に入ってきています。
時価総額は10年間で上海証券取引所が2.6倍、香港証券取引所が2.3倍に拡大。そして、深セン証券取引所は4.0倍と急拡大しています。
直近の2021年末では、香港証券取引所がIPOの不調や相場の下落で順位を落としていますが、それでも上海、深セン、香港がいずれもトップ10に入り、3つの取引所の時価総額は合計で19兆8100億米ドル。合わせても2位のナスダックには及びませんが、それでも世界の取引所における時価総額のシェアは16%に達し、日本取引所グループの3倍ほどの規模となっています。
かつては、ニューヨーク、ロンドン、東京が世界3大証券取引所と呼ばれていましたが、近年はロンドン、東京に代わって、中国・香港の存在感が高まってきているのです。
中国・香港には4つの証券取引所がある
ここで中国の証券取引所について簡単に紹介していきたいと思います。中国の主要取引所として、先ほど上海証券取引所、深セン証券取引所、香港証券取引所の3つが出てきました。
香港証券取引所は英国による統治時代の1891年設立と、130年以上の長い歴史がありますが、上海証券取引所と深セン証券取引所は1990年代設立と比較的若い取引所です。そして2021年11月には新たに北京証券取引所も開業。現在、中国には香港を含めて4つの証券取引所があります。
日本人が投資できるのは上海、深セン、香港の3市場
香港を含めて4つの証券取引所があるというだけで、中国株をこれから始めようという人にとっては、すでにハードルが高いかもしれません。このうち北京証券取引所は中小企業向けの市場で、海外の個人投資家は投資できません。日本の個人投資家が投資できるのは、上海、深セン、香港の3市場です。
上海証券取引所は、上場企業数こそ少ないものの時価総額は最も大きく、国有の大型企業が集まっています。深セン証券取引所は、取引が活発で売買代金が最も大きく、ハイテクやITなどテクノロジー系の民営企業が多いのが特徴です。
一方、国際金融都市である香港市場には、香港地場系の企業や中国系企業だけでなく、グローバルに事業展開する海外企業も上場しています。香港を窓口に大きな中国市場を開拓しようという企業も多いようです。ユニクロを展開するファーストリテイリング(06288)やパチンコホールを運営するダイナムジャパン(06889)などの日本企業も香港に上場しています(ファーストリテイリングは香港預託証券による重複上場)。また、テンセント(00700)やアリババ集団(09988)といった中国を代表するIT企業も香港に上場しています。
上海や深センに上場する銘柄を取り扱う日本の証券会社が少ないこともあり、今のところ日本における中国株の取引の中心は香港市場になっていますが、上海や深センにも魅力的な銘柄がたくさん上場しています。
次回は中国株の主要銘柄を紹介していきたいと思います。お楽しみに。