2023年5月の広島サミットが終了しました。G7首脳が広島の平和記念公園に集まり献花をする印象的なシーンや、当初の予定に無かったウクライナのゼレンスキー大統領が急遽来日し演説するなど、印象的なサミットでした。
国家や政治にどのような主義主張を持っていようとも、このような貴重な時間が日本で展開したことには、日本国民として誇りを持っていいのではないでしょうか。
さて、今回のサミットで何度も耳にした言葉が、インドやブラジルの首脳が掲げているグローバルサウスです。これから発展段階を迎える国の総称はこれまでもありました。新たに出てきた印象の言葉は、何が異なるのでしょうか。
グローバルサウスはBRICSと何が違うのか
世界には先進国という枠組みがあり、相対する形で発展途上国(Emerging Countries)という定義が採用されています。ただ、この発展途上国という言葉は蔑視の印象が強く、最近は新興国という言葉がよく使われます。
世界で200以上ある国家のなかで、新興国の対象となるのは5や10では留まりません。新興国のなかで経済発展が著しく、いわば国家への投資対象として期待値が大きい複数国家があります。それを当事者がまとめるか、または国際経済でピックアップしたことにより生まれた言葉がBRICSです。
BRICSは2000年代以降、めざましい経済発展を遂げたブラジル(B)、ロシア(R)、インド(I)、中国(C)を指します。
一般的に知られるようになったのは2003年にゴールドマン・サックス社が発表した投資家向けのレポートで、4カ国への投資信託が人気を呼びました。2011年に開催されたBRICSに南アフリカ共和国が参加し、複数形を示していた最後のSが南アフリカ共和国に定義付けされました。
なお、中東・北アフリカの原油国を定義するMENA(Middle East&North Africa)や、BRICSを更に拡大させたネクスト11も注目されています。
ネクスト11…ベトナム・韓国・インドネシア・フィリピン・バングラデシュ・パキスタン・イラン・エジプト・トルコ・ナイジェリア・メキシコ
グローバルサウスはインドとブラジルが主導
今回の広島サミットで、ウクライナのゼレンスキー大統領が面談した相手として、最も報じられたのがインドのモディ首相でした。そのほかインドネシアのジョコ大統領との面談も配信されたほか、ブラジルのルラ大統領との面談が開催されなかったことも注目点となりました。
ここから考えるに、グローバルサウスの今後の発展性よりも、大局観で世界政治を見たときに、いまだ抑えられていないパーツという印象を筆者は持っています。
そのうえで、グローバルサウスとBRICSの大きな違いは2つあるといえます。まずはグローバルサウスを主導しているのはインドとブラジルという印象が強いこと。特にインドのモディ首相はグローバルサウスの顔として、頻繁に露出しています。
また国が特定されているBRICSに対し、グローバルサウスは南半球の国々の総称として使われる機会が多いです。2023年のグローバルサウスの代表国が、2030年には変わっている可能性があります。G7 やBRICSには、この概念がありません。
いわば2000年代に新興国として使われた定義に近いのがグローバルサウスであり、ここからBRICSのように特定の国々がピックアップされていくのか、また横一列に並ぶ国家が増減していくのか。今後の経済的・政治的な推移次第といえるのではないでしょうか。
また注目すべきは、グローバルサウスのなかの複数の国家が、今回ウクライナのゼレンスキー大統領の来日に必ずしも好意的な対応をしなかったことです。
国によって中国やロシアといった、必ずしもG7各国の姿勢とは異なる外交関係を有している国もあります。おそらく今後は、旧先進国とグローバルサウスがタッグを組み、世界経済におけるキャスティングボードを取り合うような形になるのではないでしょうか。
グローバルサウスに対し投資家が捉えておくべきこと
たとえば〇〇インド・アクティブオープンのように、ある程度個別株を選定しながら利益を目指していく投信への注目度は、今後更に増加していくでしょう。そのほかに投資家は何を想定しておくべきでしょうか。新興国にとってシンボルともいうべきオリンピックの開催でしょうか(インド・インドネシアは夏のオリンピック誘致に前向きといわれています)。
そのうえで考えるべきは投資対象に依らない理由での評価額の下落、いわゆるカントリーリスクです。グローバルサウスのカントリーリスクが高いことは間違いありません。ただ先のキャスティングボードの可能性を見ても、BRICSよりは固い地盤を築いている印象を持ちます。
これからグローバルサウスの定義も変遷し、また相対的な立ち位置も変わっていくことでしょう。いずれにしろ現段階は、投資家にとって予測が難しいのもやはりカントリーリスクであり、投資家各位の慧眼度が問われるものといえます。