BTCよりもアルトコインが…
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は、2025年7月9日19時頃、対円では1595万円前後と前週(7日前)比で約2.7%高い水準で取引されています。一方、為替でドルが買い戻された影響で、BTCドルは10万8700ドル台と、前週からの上昇幅は1%程度に留まっています。
ほか、BTC以外の暗号資産・アルトコインに強さが見られます。時価総額2位のイーサリアム(ETH)が前週比で約8.5%高、リップル(XRP)が9%高と堅調な動きです。ソラナ(SOL)はそこまでではありませんが、およそ4.3%の上昇幅とこの1週間に限ってはBTCをアウトパフォーマンスしています。
※アウトパフォーマンス(Out performance)、ある銘柄、指数などの運用成績が比較対象となる(ここではBTC)の収益率を上回ること。対義語は、アンダーパフォーマンス(Under Performance)。
※暗号資産サイトCoinmarketcap より
イーサリアム、一時は最高値から70%弱の?!
イーサリアム(ETH)の対円については、昨年12月半ばに63万2000円台の過去最高値を記録しました。しかしながら、その後は売り戻し基調を強める展開に。ところどころで反発したものの、結局は今年4月に20万1000円台と、高値から70%弱の下落率を記録しました。
6月前半に41万円台まで切り返しましたが、そこから9万円(20%超)下げるなど不安定な動きが続きました。このところ、BTCや他暗号資産とともに安定さを取り戻しつつあります。
執筆時点のETH円は、38万3000円台と年初来(1月1日から)騰落率では26.9%のマイナス。ETHの時価総額は、円貨で46兆2500億円超えのBTCに次ぐ2位です。しかしながら、ETHのドミナンス(市場占有率)は10%に届かず、BTCの64%に大きく水をあけられています。
※Trading Viewより
イーサリアム、4月までダメだった原因は?
イーサリアム(ETH)が4月半ばまで売り圧力を強めた要因の1つには、BTC同様に金融市場全般のリスク回避的な動きがあります。しかし、それだけで70%近くまで下落幅を広げたとも思えません。
調べると、ETH売りの加速には複数の要因が絡み合っていたようです。
1、現物イーサリアムETFへの需要低迷・機関投資家の資金流出
・2024年夏に米国で現物ETFが承認され、トランプ氏の大統領当選後には資金流入が見られたのも一時的でした。その後は機関投資家の関心が薄れ、ETFからの資金流出が続きました。2025年4月には2週間で約9400万ドルが流出し、投資家心理の冷え込みが下落圧力となりました。
2、オンチェーン指標の悪化・ネットワーク利用低下
・イーサリアムが「実現価格(市場参加者が実際に購入した際の平均所得価格)」を下回る水準で推移し、多くの投資家が含み損を抱えて投げ売りに走りました。イーサリアム・ネットワークのアクティブウォレット数や取引量も大きく減少し、利用者離れが鮮明になりました。
3、競合チェーン(ソラナ等)へのユーザー流出
・高いガス代(イーサリアム・プラットフォームの使用料)やスケーラビリティ問題(処理速度の限界、利便性の低下)の解決が遅れました。ソラナやトロン、バイナンスチェーンなど競合L1チェーンにユーザーと開発者が流出しました。これによりイーサリアムの市場シェアや存在感が低下し、価格にもネガティブな影響を与えました
※L1チェーンとは、「レイヤー1(Layer 1)ブロックチェーン」の略。ブロックチェーンネットワークの基盤となるメインのチェーン。L1チェーンの混雑を解消し、より速く・安く取引を行うための「レイヤー2チェーンという「補助的な層」もある。
4、大口投資家(クジラ)やレバレッジ取引の大量売却・清算
・2025年初頭には、クジラという大口投資家による大量売却や、レバレッジ取引の強制清算(ロングポジションの大量清算)が相次ぎました。これにより、短期間で大きな下落を招きました。
※※暗号資産サイトCoinmarketcap より、週間ごとのバーチャート
22年9月以来の大規模アップグレード
イーサリアム・ネットワークは5月初旬、Pectra(ペクトラ)というアップデートを行いました。2022年9月に実施されたMerge(マージ)以来、最大規模のアップグレードです。
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」2022年9月8日
Pectraに関する、イーサリアム・オーガニゼーションのHPはこちら
↓
https://ethereum.org/ja/roadmap/pectra/
イーサリアムの使いやすさ・効率性・スケーラビリティの向上を目的とされています。
このアップデートは予定通りでもあったためETH相場の反応は当初鈍かったものの、結局上昇しました。6月は伸び悩みましたが、ここから上昇が期待できるような記事も見受けられます。
「イーサリアムのメガクジラが急速に買い増し ETHは次の上昇局面に…」コインテレグラフ
クジラにも色々いるのでしょうが(年初は主要な売り方のクジラも)、超大口投資家がイーサリアムを静かに買い集めているというのです。
※Trading Viewより
↑のETHチャートは、記事の対ドルではなく対BTCです。BTC相場の底堅さが続くなか、ETH高BTC安トレンドに転換となれば(つまり右肩上がり)、本格的なETH相場の上昇トレンドが形成されそうです。