【市場趨勢指標でみる株式市場~騰落レシオ】

市場趨勢指標とは?

「市場趨勢指標」とは、市場全体の投資環境を判断する指標です。代表的なものには、評価損益率、騰落レシオ、新高値-新安値指数、MA上位銘柄比率、騰落出来高などがありますが、今回は前回の「評価損益率」に続いて「騰落レシオ」について簡単に解説します。


騰落レシオ

騰落レシオとは、市場内での値上がり銘柄数と値下がり銘柄数との比率で市場の活況度合い(相場人気)を捉えようとするものです。算出方法は、例えば、プライム市場で一定期間(一般的には25日)の値上がり銘柄数の累計を、値下がり銘柄数の累計で割ったものをパーセント表示したものとなります。


<計算式> 

騰落レシオ25日(%)

=(25営業日の値上がり銘柄数合計÷25営業日の値下がり銘柄数合計)×100


※中期、長期の動きを見る場合、100営業日の累計で算出した騰落レシオを使うこともあります。


相場の売られ過ぎや買われ過ぎを示唆する

値上がり銘柄数と値下がり銘柄数が同じの場合、騰落レシオは100%となります。100%より大きければ値上がりした銘柄数の方が多く、100%より小さければ値下がりした銘柄数の方が多いことになります。


一般的には120%以上になると「買われ過ぎ」、要するに市場全体が楽観ムードに傾斜している状況です。一方、70%以下となれば「売られ過ぎ」、要するに市場全体が悲観ムードに傾斜している状況です。


株価指数の天底の目安になる

図表は、プライム市場指数と騰落レシオの推移です。両者のトレンドをみると、連動性ある部分とそうでない部分があります。



騰落レシオが120%を超えて「買われ過ぎ」を示唆しても、株価がすぐさま反落調整となるわけではありません。株価上昇が続き、130%~140%にまで上昇することもよくあります。あくまでも「120%以上」は目安であり、「調整局面が近い」と捉えるようにした方が無難です。


また、株価の天井と騰落レシオの天井は一致することは珍しく、騰落レシオが天井を打っても株価はしばらく上昇を続けることが多いのです。


一方、騰落レシオが70%を下回って「売られ過ぎ」を示唆しても、株価がすぐさま上昇に転じるわけではありません。あくまでも「70%以下」は目安であり、「反転上昇局面が近い」と捉えるようにした方が無難です。また、株価の底と騰落レシオの底は一致する傾向が強く、天井圏にはみられない特徴があります。


しかし、騰落レシオの底はいつ到来するかわかりません。図表のように、相場全体が安定している場合は70%以下まで低下せずに上昇に転じる傾向があります。買い余力のある投資家による出遅れ物色が入り、値下がり銘柄の数が抑えられることが1つの要因として挙げられます。


過去、リーマンショックや新型コロナショックなど市場に急落をもたらすような外部環境の悪化がある場合や、景気悪化や企業悪化を通じて長期的な下落相場に陥っている場合などは、70%を下回るケースがあるでしょう。


日本株情報部 チーフストラテジスト

東野 幸利

証券会社情報部、大手信託銀行トレーダー、大手銀行などの勤務を経て2006年に入社。 マーケット分析やデリバティブ市場のコンテンツを担当。世界主要指数や個別株を対象にテクニカル・ストラテジーの提案。 日経CNBC「夜エクスプレス」、日経チャンネル「マーケッツのツボ」、テレビ東京「モーニングサテライト」、ラジオ日経(金曜後場マーケットプレス)など 会社四季報プロ500、ダイヤモンド・ザイ、日経マネー、株主手帳など 金融機関向けコラム「相場一点喜怒哀楽」 IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA) 日本テクニカルアナリスト協会理事 CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務) DCアドバイザー(確定拠出型年金教育・普及協会)

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