S&P500は米国の主要産業を代表する500社で構成される株価指数です。構成銘柄の採用には時価総額や株式の流動性だけでなく業績も考慮されるため、優良銘柄が多いことも特徴の1つです。
構成銘柄は情報技術(IT)、ヘルスケア、金融、コミュニケーション・サービス、一般消費財、資本財、生活必需品、エネルギー、公益、不動産、素材の11セクターに分類され、各々セクター指数も算出されています。
11に分類されるセクターのうち、このコラムでは前回に続きエネルギーセクターをご紹介します。構成するのは23銘柄で、S&P500に占めるウエートは4.2%です。
時価総額のベスト10はエクソン・モービル(XOM)、シェブロン(CVX)、コノコフィリップス(COP)、SLB(SLB)、EOGリソーシズ(EOG)、オキシデンタル・ペトロリアム(OXY)、マラソン・ペトロリアム(MPC)、パイオニア・ナチュラル・リソーシズ(PXD)、フィリップス66(PSX)、ヘス(HES)となります。
前回は時価総額が首位で、スーパー国際石油資本(メジャー)のエクソン・モービルをご紹介しました。今回はシェブロン(CVX)、コノコフィリップス(COP)、SLB(SLB)、EOGリソーシズ(EOG)の4銘柄を取り上げます。
シェブロン、川上から川下まで一貫して事業を展開
シェブロンは2001年にテキサコを買収し、一時はシェブロン・テキサコとして事業を展開していましたが、再び社名をシェブロンに戻しています。エクソン・モービルと同様、川上から川下まで一貫して石油・ガス事業を手掛けるスーパーメジャーです。
主な事業部門は川上と川下の2つです。川上部門は原油や天然ガスの探査・開発・生産、天然ガスの液化や貯蔵、パイプラインを通じた原油の輸出などで構成されます。原油やガスの確認埋蔵量は2022年末時点で112億2900万バレル。エクソン・モービルの6割強に相当しており、2022年12月期に限れば売上高や純利益も6割前後の水準でした。
シェブロンの川上部門は2022年12月期の売上高が前年比44%増の632億9300万ドルで、全体の売上高に占める割合は27%。純利益は同91%増の302億8400万ドルで、全体に占める比率は79%です。
一方、川下部門は原油の精製、石油製品の製造・輸送・販売、石油化学製品の製造や販売などを担います。売上高は前年比55%増の1723億800万ドルに達し、全体の73%を占めていますが、純利益は180%増の81億5500万ドルです。川上部門に比べて利益率は低く、利益全体に占める比率は21%にとどまっています。
コノコフィリップス、川上特化で高利益率
時価総額の3位はコノコフィリップスです。2002年にコノコとフィリップス・ペトロリアムが統合し、誕生しました。2012年には川下ビジネスを分離しており、それがエネルギーセクターの時価総額9位にランクされるフィリップス66です。
コノコフィリップスはそういう事情で川上ビジネスに特化しており、事業を展開する地域が13カ国とやや慎ましい印象です。石油・ガスの確認埋蔵量が2022年末時点で65億9900万バレルとこちらもエクソン・モービルやシェブロンに比べれば見劣りします。国外ではカナダ、ノルウェー、リビア、カタール、マレーシア、中国、オーストラリアで生産活動を展開しています。
ただ、原油・天然ガスの探査・開発・生産などに特化しているため、利益率は高水準です。2022年12月期決算は売上高が前年比71%増の784億9400万ドル、純利益が同131%増の186億8000万ドル。純利益率は24%で、巨大な川下部門を抱えるエクソン・モービルの14%、シェブロンの15%に比べて高い水準になっています。
SLB、世界最大の油田サービス事業者
時価総額の4位はSLBです。シュルンベルジェという社名で事業を展開していましたが、2022年10月にSLBに変更したと発表しています。世界最大の油田サービス会社から世界的なテクノロジー企業に転身することを社名変更の理由に挙げており、逆に言えばそれだけ油田サービス会社としての知名度が高かったのです。
事業分野は4つです。エネルギー業界にデジタルソリューションやデータ処理といったサービスを提供するのがデジタル統合部門で、2022年12月期決算の売上比率は13%、税引き前利益の割合は26%です。
油層パフォーマンス部門ではケーブルで測定器を坑井内に降ろして検査するワイヤーライン検層、坑井テスト、油井刺激などを手掛けています。売上比率は19%、税引き前利益比率は17%です。
坑井作業部門では坑井の掘削、セメンティング、坑井内作業・仕上げ、パイプ類の据え付けなどが主要業務となります。売上比率は40%、税引き前利益比率は42%で、ともに4割を占める最大の事業部門です。
生産システム部門は油ガス田の生産量を引き上げるために機械類や技術を提供するのが主要事業です。売上比率は28%、税引き前利益比率は14%です。
EOGリソーシズ、シェール事業に重点
時価総額の5位は原油や天然ガスの探査・開発・生産を手掛けるEOGリソーシズです。米国を中心に事業を展開し、トリニダード・トバゴにも権益を持っています。2022年末時点の確認埋蔵量は石油換算で42億3800万バレルで、このうち原油が16億6100万バレル、天然ガスが14億3200万バレルです。
EOGリソーシズはシェール開発の大手で、採掘技術に定評があります。また、ITを活用する経営方針もよく知られており、「石油業界のアップル」と呼ばれています。