5月は主要3指数がそろって大幅高 S&P500とナスダック総合は2023年11月以来の大幅高
5月の米国市場では、ダウ平均が1600.71ドル高(+3.94%)、S&P500が6.15%高とともに4カ月ぶりの大幅反発となり、ナスダック総合は9.56%高と大幅に2カ月続伸しました。
月間上昇率はダウ平均が今年1月以来の大きさとなり、S&P500とナスダック総合は2023年11月以来の大幅高を記録しました。
上旬は、好決算を発表したマイクロソフトとメタ・プラットフォームズが大幅高となり、AIラリーへの期待が高まりました。中国が米国との貿易交渉に応じる姿勢を示したことや、米4月雇用統計で非農業部門雇用者数が市場予想を上回り、景気後退懸念が和らいだこと、米国と英国の貿易交渉が大枠で合意に至り初めて貿易協議の具体的進展が見られたことも安心感につながりました。
中旬も堅調が続きました。スイスで行われた米中貿易交渉で、双方が関税の90日間の一時停止と「相互関税」の大幅引き下げで合意したことがポジティブ・サプライズとなったほか、米4月消費者物価指数(CPI)が予想を下回る伸びとなり利下げ期待が高まったこと、サウジアラビアがエヌビディアのAIチップを大量に購入するとのニュースを受けてエヌビディアが大幅高となったことも相場を押し上げました。
下旬は神経質な展開となりました。米下院で大型減税や軍事費拡大を含む法案が可決し、財政赤字拡大懸念を背景に米長期債利回りが上昇したことが重しとなったほか、トランプ米大統領がアップルとEUに対して高率の関税を課す考えを示したことで貿易摩擦懸念が再び強まりました。
トランプ米大統領は米国で販売されるiPhoneについては、アップルが25%の関税を払うべきだとし、EUについては6月1日から50%の関税を発動したいと発言しました。
しかし、トランプ米大統領はその後、EUに対する関税発動を7月9日まで延期すると発表したことが好感されたほか、エヌビディアが予想を上回る好決算を発表しハイテク株の上昇をけん引しました。ただ、トランプ関税を巡り、一審が違法としたものの、2審が一審の違法判断を差し止めたことで関税を巡る司法判断の混乱が嫌気されたほか、トランプ米大統領が中国との貿易交渉の難航を示唆したことで反発は限定的でした。
S&P500の11セクターは10セクターが上昇、1セクターが下落
S&P500の11セクターは10セクターが上昇し、1セクターが下落しました。
騰落率上位はITが10.8%高、コミュニケーションが9.6%高、一般消費財が9.4%高、資本財が8.6%高とS&P500(6.15%)をアウトパフォームし、金融、公益、素材も2-4%上昇しました。一方、ヘルスケアが5.7%安と唯一下落し、エネルギー、不動産が1%未満の上昇にとどまりました。
月間上昇率トップのITでは、トランプ米大統領が米国に輸入されるiPhoneについてアップルが25%関税を払うべきだと発言したことでアップルが5.5%安となりましたが、シーゲート・テクノロジーが29.6%高、マイクロチップ・テクノロジーが26.0%高となったほか、時価総額上位のブロードコムが25.8%高、エヌビディアが24.1%高、マイクロソフトが16.5%高となり業種指数を押し上げました。
上昇率2位のコミュニケーションではウォルト・ディズニーが24.3%高、メタ・プラットフォームズが17.9%高と急伸し、アルファベットとネットフリックスもそれぞれ8.1%高、6.7%高となりました。
一方、月間で唯一下落したヘルスケアではユナイテッドヘルスが26.6%安、イーライ・リリーが17.9%安、メルクが9.8%安と主力株が軒並み大幅安となりました。
ダウ平均採用銘柄は21銘柄が上昇し、9銘柄が下落
ダウ平均採用銘柄は、5月月間で21銘柄が上昇し、9銘柄が下落しました。
予想を上回る決算やストリーミング・サービス「ディズニー+」の好調、通期見通し引き上げなどが好感されたウォルト・ディズニーが24.3%高と急伸し、エヌビディアもサウジアラビア企業が最先端AIチップ1万8000個を購入することや、中国向け低価格AI半導体の量産報道が好感されたほか、予想を上回る2-4月期決算やデータセンターの大幅増収も好感され24.1%高となりました。マイクロソフトも予想を上回る1-3月期決算や強い見通しが好感され16.5%高となったほか、ボーイング、キャタピラー、アマゾン・ドット・コムも2桁高となりました。
一方、最高経営責任者(CEO)辞任や2025年通期見通しの撤回、メディケア詐欺の疑いで司法省が捜査と報道されたユナイテッドヘルスが26.6%安と急落したほか、メルクが9.85%安、アップルが5.5%安となりダウ平均の重しとなりました。