BTC円、あの2人のケンカが?
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は、2025年6月11日20時頃、対円では1590万円前後と前週(7日前)比で約4%高い水準で取引されています。BTCドルが10万9200ドル台での値動きです。
BTC円は5日夜から6日早朝にかけて、1520万円台から1443万円付近と約1カ月ぶりの安値圏まで売り込まれました。ハイテク株を中心に米国株式市場が弱含み、リスク資産と位置づけされることが多いBTCへの売り圧力となりました。
米株売りの先導したのは、実業家イーロン・マスク氏が率いる電気自動車テスラです。同社株はこの日、14%急落しました。きっかけは、同社CEO(最高経営責任者)であるマスク氏とトランプ米大統領の関係崩壊です。
マスク氏は先の米大統領選からトランプ陣営へ巨額な支援金を出資し、政権内に入り込むことに成功。しかしながら、財政健全化を訴えるマスク氏と大規模な税制法案を推し進める大統領とでは意見が合いませんでした。トランプ大統領が電気自動車購入の税制優遇を取り止めることも、2人の溝を広げました。
※Trading Viewより
上のチャートをみると、ビットコインの下落とテスラ社株(TSLA)の急落はほぼ同じタイミングで起きています。テスラ社は週末にかけて下げ渋るも、週明けから投資判断の引き下げが相次ぎました。経営者のマスク氏が、大統領と近過ぎたことへの反動は大きかったようです。
もっともテスラ株は5日の安値を下回ることなく、11日は5日の終値水準よりも14.5%高く引けました。買い手の主役は個人投資家とされています。これまで何度かテスラ株は暴落していますが、そこで拾っておけば高い確率で利益が出るという経験則からの買いのようです。
リスクセンチメントは良好に
結局、暗号資産市場ではテスラショックは長く続きませんでした。米中貿易摩擦が和らぐとの期待が高まったことが支援材料の1つです。貿易問題についてトランプ米大統領と習近平国家主席が電話で会談を行い、閣僚級の交渉をロンドンで開催することが明らかになりました。
5月米雇用統計が予想より強かったことも支持材料とされました。雇用統計の前哨戦とされた同月ADP全米雇用報告が、前回から改善が期待されていたところから一転し悪化していました。必ずしもADPと労働省の統計がリンクしているわけではありませんが、市場は悪い数値を身構えていたようです。
※ADP雇用統計とは、米国の給与計算代行サービス会社ADP社が発表する「全米の非農業部門雇用者数の月次推計値」のこと。通常は、米労働省の雇用統計(非農業部門雇用者数など)の2日前に明らかにされる。
雇用統計の結果は手放しで喜べるものではないにしても、予想を上回る内容でした。
リスクセンチメントが良好となり、BTC相場は再び上げ足を強めました。BTCドルが10万ドルを前に下げ止まったことも、買い安心感に繋がったようです。
※相場のリスクセンチメントとは、市場参加者の投資に対する心理状況を示す。相場に対して強気(良好、リスクを積極的に取る)か、弱気(悪化、リスクに消極的)かを指す。
※Trading Viewより
新たなSEC委員長が…
週明けのBTC相場は10日早朝にかけて上昇力を強め、対ドルでは11万ドル台乗せに成功しました。きっかけとされるのが、4月に米証券取引委員会(SEC)委員長に就任したポール・アトキンズ氏の発言とされています。
9日にSECが開いた暗号資産円卓会議(Crypto Task Force roundtable)でアトキンズ委員長は、「私有財産を自己管理する権利は、米国の根底にある価値観である」と言及。この「自己保管権」はデジタル世界においても失われてならない、との考えを示しました。
アトキンズSEC委員長は、これまでもビットコインや暗号資産に対する規制アプローチを軟化させ、イノベーションを促進する姿勢を明確にしていました。SECは同委員長のもと、従来の訴訟中心から市場参加者に適した基準を設ける方向にシフトしています。
今回の発言も、ビットコインの根幹となる「中央機関に依存せず個人による資産管理、ブロックチェーン(分散型台帳の一種)」に繋がる「自己保管権」を擁護したことになります。個人ウォレットでのBTC保有が、規制リスクから保護される可能性が高まったと受けとめられました。
ビットコインの理念が規制当局に認められた形となり、今後も投資家のビットコインに対する信頼が高まることになりそうです。
※Wu BlockchainのX投稿