「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はブルーイノベーション(5597)をみていきます。
同社は複数のドローン・ロボットを遠隔で制御し、統合管理するためのベースプラットフォームであるBlue Earth Platform(以下、BEP)を軸に、「点検ソリューション」、「教育ソリューション」、「物流ソリューション」、「ネクストソリューション」を開発・提供しています。各ソリューションの内容は以下となります。
上場は2023年12月12日。同社は赤字上場ではありましたが、話題性が高いドローンベンチャーとして、初値高騰が期待されていました。では、実際にどのような値動きになったのか、ブルーイノベーションの上場からの株価の動きを確認します。
ブルーイノベーションの株価推移(上場~24年4月30日まで)
同社の初値は2023円と公開価格1584円を大きく上回りました。初値形成後に2200円まで上値を伸ばしましたがその後失速し、上場初日の終値は1899円となりました。なお、この上場日に付けた高値2200円が上場来高値となっています。
2000円を超える株価を付けたのは上場日と上場2日目のみ。その後は調整色を強め、上場5日目にあっさり公開価格1584円を下回りました。ただ公開価格割れの水準では押し目買いが入り、底堅い展開となりました。しかし、2月に入り徐々に下値を切り下げる展開となり1300円台まで株価は下落。そのタイミングで上場後初の決算を迎えることになりました。
2月13日に発表した、23.12期通期の営業損益は2.9億円の赤字(前の期は3.5億円の赤字)と赤字縮小となりました。既存顧客との取引深耕による点検・教育ソリューションの売り上げ拡大が成長をけん引。ソフトウェア売り上げの増加も寄与したとしています。
併せて、発表された24.12期通期の営業損益予想は4800万円の赤字(前期は2.9億円の赤字)としました。
この決算発表を受け、翌日の株価は急落。24.12期の黒字転換への期待があり、赤字継続が嫌気されたようです。ただ、株価は大きく水準を切り下げたものの、1100円台では底堅く推移し、しばらくは、上は1400円台、下は1100円程度のボックス圏での動きが続きました。
【ブルーイノベーションの日足チャート(上場~24年4月30日まで)】
ブルーイノベーションの株価推移(24年5月1日~10月18日まで)
5月に入り14日に発表予定の1Q決算期待から株価は騰勢を強め、5月2日には1636円まで上昇。久しぶりに公開価格(1584円)超えとなりました。
14日に発表された24.12期1Qの営業損益は1.2億円の赤字でした。物流ソリューションの売上高が、国土交通省・国際標準化案件の完了の影響により、減少。政府研究開発プロジェクト(SBIR)のドローンポートシステム開発(物流ソリューション)の売上原価率が高く、全社の売上総利益率を下げたことも響いたとしています。
この発表を受けて株価は急落。15日、16日と連日で大幅安となり、16日の安値は934円と、1000円の大台を下回りました。その後の株価も下落が続き、800円台まで下落したところで、反発。その後は1000円を挟んだ水準でのもみ合いが続きました。
8月に入り全体相場の暴落の影響を受けて、700円台まで株価は下落。この暴落の影響は一時的であり、すぐに800円台に戻しましたが、ここでマイナス材料が出てきます。9日に24.12期上期の営業損益は2.6億円の赤字だったと発表。さらに、通期の業績予想を下方修正し、営業損益予想は4800万円の赤字から2.5億円の赤字~3.5億円の赤字(レンジ形式)に修正しました。
この発表を受けて株価は急落し、再び700円台まで下落。その後は800円台まで戻したものの、徐々に水準を切り下げ、足もとは700円台半ばで株価は推移しています。
【ブルーイノベーションの日足チャート(24年5月1日~10月18日まで)】
今後について
24.12期(今期)の営業黒字転換が期待されていたところで、会社予想は赤字継続となりました。さらに上期決算と同時にその赤字が前期並みに膨らむ下方修正となったことから、業績への期待はかなり薄れています。
今回の業績の下方修正について、24.12期上期の決算説明会資料では、点検ソリューションについては、建設・土木(公共インフラ)業界における顧客導入の遅れにより売上成長率は鈍化していること、物流ソリューションについては売り上げは期初予想を超える可能性がある一方、利益率が低下していること、ソフトウェア売り上げは、顧客獲得の遅れなどにより期初予想を下回ること、などが要因として挙げられています。
同社は、24.12期は「成長への基盤作り、認知拡大」と位置づけていますので、赤字継続は仕方ないと思います。しかし、業績の下方修正はネガティブサプライズ。上期時点で営業赤字2.6億円、通期の営業赤字予想は2.5億円の赤字~3.5億円の赤字となっていることから、下期は収支トントン~1億円の赤字を見込んでいることになります。
まずは11月12日に予定されている3Qの決算発表の動向を確認したいところです。上期までの流れのままだと営業赤字は3億円を超えてくることが見込まれます。しっかりと改善され、赤字縮小となるかに注目です。そこで業績反転の兆しがみえ、来期の黒字転換の可能性が高まれば、株価もその期待を織り込む形での上昇トレンドもあると考えます。