【投資の時間枠の考え方】

投資の時間枠は「短期」「中期」「長期」で表現される

投資には、その投資期間に応じて「短期」投資、「中期」投資、「長期」投資があります。しかし、投資期間といっても、先物取引、現物取引、商品、外国為替、外国債券等の投資対象や、投資家の種類によって、さまざまといえます。また、近年はミリ秒単位で売買を頻繁に繰り返して利ザヤを稼ぐ高頻度取引(HFT)が存在感を高めてきており、時間枠の考え方も変わってきています。


例えば、週ベースが「短期」と考えている投資家は、四半期ベースが「中期」、年ベースが「長期」と考えるでしょう。一方、時間ベースを「短期」と考えている投資家は、日ベースが「中期」、週ベースが「長期」と考えることもあるでしょう。つまり、「短期」「中期」「長期」は相対的といわざるをえません。


短期投資

短期投資は、当日中に取引を完結するデイトレードや、数日程度で完結するスイングトレードなどをいうのが一般的です。投資家自身が相場を常時監視している場合も多い。一方、HFTはコンピュータによる機械的取引であるため、通常の短期投資とは分けて扱われるべきでしょう。


短期投資は、小さな変動をすくい取る取引で、1回当たりの平均収益は小さく、投資回数は多くなります。つまり、執行コストや売買タイミングの機会損失が収益を圧迫する要因になりやすいといえます。テクニカル分析では、短期テクニカル指標、価格パターン、ボラティリティの変化などが有効でしょう。


中期投資

中期投資は、投資期間が数週間から数カ月程度のものをいいます。トレンド分析の時間概念では数週間程度までを短期に含めますが、時間枠の概念では数週間を中期投資に含めることが多いといえます。どちらかといえば初心者向きの時間枠と考えていいでしょう。


基本的に中期トレンドを取りに行く戦略です。短期投資のようにその時々の値動きに応じて瞬間的に投資判断を変更することはせず、日々の終値を見てから投資判断を下し、翌日に売買を執行するといったような時間感覚となります。

図表にあるように、週足を使った場合、株価が26週移動平均線を上回ると買い参入、下回ると手仕舞い売りを出すという判断ができ、数週間から数カ月程度の時間枠での中期投資が可能となります。決算発表や業績修正など、価格インパクトがある程度大きいニュースが価格に織り込まれる過程を投資機会とすることもあるでしょう。


一方、買ったあとに生じる小さな値動きに騙されることなく、ポジションを持ち続ける忍耐力が必要です。テクニカル分析では、ほとんどのテクニカル指標を利用できます。



長期投資

投資期間が数カ月以上のものを長期投資といいます。買ったら持ち続けるバイ・アンド・ホールドが基本戦略となります。長期投資は保険会社や年金基金など機関投資家の運用に用いられます。個人投資家が用いる場合、長期の資産形成などを目的とするため、評価益が出ても途中で不用意に売却しないという、強い忍耐力が求められます。


一方、長期的な変動を目標としているので、月々のデータをチェックしながら、数カ月後のポジション管理を考えるといった時間的な余裕があります。長期投資の売買タイミングをつかむには、長期トレンドの発生と消滅に注目するため、長期トレンド分析、パターン分析、サイクル分析などを利用できますが、オシレーター分析、出来高分析、市場趨勢分析などは機能しない可能性があります。


長期投資を考える上で重要な価格(株価)の長期変動は、景気循環など経済の変動に起因している場合が多いです。したがって、各種経済指標のトレンドが継続しているのか、あるいはいつ転換したかについての客観的な判断も必要となるでしょう。



【参考】NPO法人日本テクニカルアナリスト協会テキスト資料


日本株情報部 チーフストラテジスト

東野 幸利

証券会社情報部、大手信託銀行トレーダー、大手銀行などの勤務を経て2006年に入社。 マーケット分析やデリバティブ市場のコンテンツを担当。世界主要指数や個別株を対象にテクニカル・ストラテジーの提案。 日経CNBC「夜エクスプレス」、日経チャンネル「マーケッツのツボ」、テレビ東京「モーニングサテライト」、ラジオ日経(金曜後場マーケットプレス)など 会社四季報プロ500、ダイヤモンド・ザイ、日経マネー、株主手帳など 金融機関向けコラム「相場一点喜怒哀楽」 IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA) 日本テクニカルアナリスト協会理事 CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務) DCアドバイザー(確定拠出型年金教育・普及協会)

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