日経平均株価が衰えを知らぬ右肩上昇を見せるタイミングで開催されました。この度ある会社からご依頼を頂き、2023年7月7日から9日まで東京ビックサイトで開催された資産運用EXPO(RX Japan主催)にてセミナー講師を担当する機会がありました。
セミナー講師といってもメインステージで堂々たる事前宣伝のもと登壇する講師ではなく、各企業のブースのテレビの前に立つ役割です。流れる来場客の目線や会話の内容から、FPとして感じた時勢を分析します。
全体の印象:ポートフォリオの組み換えが目立つ?
2023年春から夏にかけて資産運用領域は少しマイナスの印象が強かったように思えます。アメリカのシリコンバレーに顧客を多く抱えていた金融機関の破綻にはじまり、いくつかの銀行が連鎖倒産しました。またクレディスイスの売却劇も記憶に新しいところです。
これらの悲報は投資信託のなかでも高い安全性で評判のインデックスファンドの基準価格推移にも影響が及びます。SNSなどでは「S&Pよりオルカン」と一時的なアメリカ離れの影響が目立ったのも特徴的です(オルカンがアメリカから離れているか否かはさておき)。
資産運用EXPOはそれを受け、ラインナップには少し逆張りした印象のブースが目立った印象があります。居住中の不動産物件のオーナーチェンジを扱う会社や京都発のESG投資、急激な値上がりが短期間で予想されるスポットの不動産物件販売などです。ポートフォリオの組み換えニーズに対応しているといえるでしょうか。
一方で王道戦略も健在です。某大手証券会社はオンライン販売を中心として、米国株を強く喧伝していました。政治的・経済的な世界の主導権争いが毎日ニュースを賑わせようとも、人口が増加している国はアメリカなのだから、アメリカの上場株やETFを購入しておけば間違いないという論調でした。
セミナーには幾重にも波になって聴講者が並びます。いわゆる王道たるセミナー内容こそが、最終的には最も説得力を持つものなのかもしれません。
筆者も1日目にセミナーに付帯した個人相談のなかで「今後のアメリカ株ってどうなのですか」と聞かれましたが、利上げと2024年の大統領選挙、そして中国と台湾の関係性ぐらいしか可視化されているリスクはないのではと返答しています。
依頼されたテーマ「70代からのライフプラン」への反応
そんななかで筆者がご依頼を頂いたテーマは、70代からのライフプランでした。日本の世帯別で相対的に資産を有している60代、70代が来場者の中心という仮説にもとづいて話をしました。
印象的だったのは、NISAやiDeCoの相談に対応している時に「そういえばもう1つ聞いていいか」という流れになり、センシティブな相続相談に繋がっていったこと。それは最初に相談すべき重要なテーマでは?というのが本音ですが、そのような相談をできる相手と認識されてはじめて、大事な相談が出てくるような特徴があります。一次相談がオープンな場ということも前提だからでしょうか。
ESG投資や児童発達支援への資金援助が注目される理由
そのなか来場者の多くが興味を持っていたのが、ESG投資や児童発達支援への資金援助でした。前者は歴史ある京都における投資、後者は所得税?の減税効果を前面に出し、来場者にアピールしていました。
いわゆる画一的なポートフォリオではなく、「実はこれも資産運用になるんですよ」というアプローチから始めるESG投資などのアプローチは、展示会だからこその強さを感じます。
資産運用というのは本来当事者が能動的に考え、興味のある会社にアプローチするものです。CMでもインターネット上の集客でも、興味のない会社に対して呼び込むことはありません。一方で展示会形態は道端に呼び込み人(会社にとってはそのために人員を派遣しているところも)が並び、ゼロからのアプローチを繰り返します。
ちなみに余談ですが、筆者にご依頼頂いた保険会社は保険業法により「〇〇円があたりますなどの呼び込みは一切厳禁です。一方証券や現物系の出展社は、トートバックだくじ引きだと、あの手この手で集客していたところも印象深いものでした。
金曜日と土日で来場傾向に違いも
今回のEXPOは金曜日に初日、土曜日に中日を迎え、日曜日に最終日に至りました。顧客の多さとしては金曜日・土曜日が双璧で、日曜日が少し落ち着いているイメージです。
金曜日と土曜日の来場者の属性が違う点も興味深いものです。金曜は仕事の一環で来ている人が多いのか、満遍なく出展傾向を把握している印象です。一方の土曜日は目当てとなるセミナーに一目散に赴いたうえで、金曜日よりもより選定した出展社を選び話を聞いているような印象を持ちます。
資産運用EXPOの次回開催は2023年9月に大阪で、2024年1月には再び東京で開催されます。その時に時勢はどう変わっているのでしょうか。現時点では想定できないリスクもそうですが、思わぬ元気なサービス提供社が注目される活発な様相を願います。