2023年7月19日公開のBillboard JAPANが発表されました。音楽ユニットYOASOBIの「アイドル」が14週連続で総合首位を獲得しています。当週でストリーミング累計再生回数は3億回、歴代連続首位記録とともにBillboardの歴史を塗り替えています。
アイドルはどのような楽曲なのか
2023年4月に発売されたアイドルは「推しの子」の主題歌として、毎週視聴者の耳に届いています。原作は主人公の青年が死後、前世の記憶そのままに「推し」のアイドルの子供として再生するところがスタートで、芸能界の華やかな部分と裏側、SNSからの意見に揺れる心情を描いています。
2023年4月からTOKYO MXで放送が開始され、アニメの注目度が上がるとともに主題歌としてのアイドルが話題になりました。テクノポップ?に近いかなとも思いますが、あまり聞いたことのない楽曲という印象でした。一度耳にすると、その世界観に引き込まれていきます。
2023年は後半戦に入ります。ここ数年と比べ、エネルギーに溢れた1年という印象を強く持ちます。この勢いを見るに、アイドルは2023年後期においても日本音楽界の話題の中心になることは間違いないでしょう。
本メディアの主要読者は「アイドルという曲が流行っているらしい(もちろん筆者も含めて)」ですが、年末にかけて耳にする機会も増えてくると思います。軽快なラップ調が転生するハイテンポの一曲に時勢が合致しています。
なぜこの曲が受け入れられているのか
アイドルが流行っている背景として、コミックとアニメで構築した世界観を楽曲が踏襲し提供していることが上げられます。ただ、それは今回のみの話ではなく、10年以上何度も提供されてきた形でもあります。では、どのような要素が引き寄せているのか。
筆者はこの曲と背景を聞いて強く感じたのは、2023年夏場にかけて人が抱えるハレーションに刺さったのではないかという仮説です。音楽は日本の誇るソフトパワーにおいて1つの領域です。ならば投資メディアにおいてはあまり取り上げられませんが、リアルタイムで走る話題曲もまた、投資の対象なのではないかと考え、今回このテーマを選択しました。
コロナ禍が本格的に終わり発生するハレーション
2020年に突如開始したコロナ禍では、それまで経験のないような外出自粛や人との推奨距離という概念が生まれました。特に10代20代といった大切な時期をコロナ禍で過ごすことは、とてもストレスの貯まるものだったと思います。いつかの甲子園で優勝監督が述べた「コロナって密なんです」が、当時の状況を顕著に表現しました。あの言葉からまもなく1年です。
一方で2023年に明けて急に日常を取り戻そうとなっても、そもそもコロナ以前に戻ることのできる世代のように「モデルケース」のない世代も数多くいます。社会に出て人間関係を作ろうという段階で、既にコロナ前提の社会がスタートしていたためです。そのなかで勇気を出して一歩足を踏み出すことも、必然的にハレーションが発生しやすくなります。
一方で、Z世代という言葉さえ古くなっているように、この世代には大きなエネルギーが潜んでいます。筆者は現在40代ですが、我々の世代が個人投資家として期待する事業会社やファンドといったところに、強い影響力を持っているのは間違いなく、この世代です。
2023年後半は「昔話」でヒット曲を語らないように
某タレントによると、若い世代と話をするときに気をつけたいのは「昔話・自慢話・説教」をしないことと言われます。筆者も確かにこのようなスタンスで来る年上は嫌だなという受け取りから、自分も若い世代にこういう接し方をしないようにしなければ、に変わりました。
コロナから明けた2023年、このなかで最も気をつけたいのは昔話です。アイドルを聴いて昔流行った〇〇に似ているよね。30年前のバンドの△△みたいだよね、は自分からコミュニティに反発を掲げているようなものです。
目の前の苦笑いに気が付かない場合は更に気をつけなければなりません(もしかしたら匿名のケースでSNSに取り上げられているかも)。筆者も何度も「この曲が今年はレコード大賞なのかな」と、二重三重にミステイクなコメントを発しようとして、家族に窘められました。根本から方向性を取り違えています。
転じてコロナが発生する前の音楽はこうだよ、人間関係はこうだよという距離感の取り違いを、様々なカ所で少しずつ耳にするようになりました。彼らはコロナ禍を好きで過ごしてきたわけではありません。その場その場で時代に対応して、新たな音楽を生もうとしています。
2022年後半にかけて、繰り返しこの楽曲を耳にすることになるでしょう。的外れな昔話でリアルタイムの出来事を否定しないようにしていきたいものです。