【ダウ理論は相場観の基本~トレンドの転換④】

ダウ理論は海外発の最も古いテクニカル手法のひとつ

米国のチャールズ・ダウ(1851-1902)は、複数の代表的銘柄からなる「平均株価」という概念で株式市場全体のトレンドを表そうとした最初の人物です。日経平均をはじめとするさまざまな株価指数は、ダウが考案した指数に端を発します。また、今日あるテクニカル分析手法は、ダウ理論を基礎として考案され、発展してきたものが多いといわれています。


ダウ理論は、海外で考案されたテクニカル分析手法の中では、ポイント・アンド・フィギュアと並んで最も古いもののひとつです。基本法則としては、「平均はすべてを織り込む」「トレンドは3種類」「主要トレンドは3段階」「平均は相互に確認」「トレンドは出来高でも確認」「トレンドは転換が明白となるまで継続」「終値とライン」があります。

今回は最終の第四弾目として、その中から、「トレンドは転換が明白となるまで継続」「終値とライン」の内容をかんたんに解説します。


転換が明白となるまで継続

この理論は、「トレンドの転換が明確になるまでは、それまでのトレンドが継続している」と考えるということです。


価格はいろんな情報を織り込んで日々上下しますが、それが経済環境や企業業績の変化を背景としたものでなければ長続きしません。すぐに反転して元のトレンドに戻ります。トレンドの方向転換は小さな動きから始まるため、最初のうちは日々の変化と区別がつかないケースがほとんどです。


しかし、経済環境や企業業績の変化を背景としている場合は、日々の上下の変化は同じでも元のトレンドに戻ることはありません。


そういった意味では、トレンドが転換したかどうかの判断は、経済環境や企業業績の変化が明確になってからにした方がよいといえます。


上昇トレンドから下落トレンドに転換する場面では、天井を付けた後、下落して節目となる安値で谷を形成、反転上昇して戻り高値となる山を形成、さらに反転して下落パターンが現れます。この時の戻り高値が天井よりも低く、最後の下落局面において直近の谷を下回った時点で下落トレンドに転換したと判断します。いわゆるパターン分析でいう、「ダブルトップ」です。


下落トレンドから上昇トレンドに転換する場面では、大底を付けた後、上昇して節目となる高値で山を形成、反転下落して2番底となる谷を形成、さらに反転して上昇パターンが現れます。この時の2番底が大底よりも高く、最後の上昇局面において直近の山を上回った時点で上昇トレンドに転換したと判断します。いわゆるパターン分析でいう、「ダブルボトム」です。


終値とライン

ここでいう終値は平均株価の終値であり、指数の計算に用いる個々の銘柄の終値をもとに算出された値のことです。ダウは終値とは市場参加者が1日の最後に合意した価格であり、日中についた高値や安値、ほかの価格よりも信頼性が高く、重要性も大きいと考えました。


もっとも、平均株価が考案された時代には、取引の記録が手作業だったので日中の平均株価は計算されておらず、終値ベースの平均株価しか存在しなかったそうです。


ラインとは狭い上下幅で推移する横ばい相場のことをいいます。株価が±5%程度以内のレンジで、数週間~数か月続く調整局面とされています。保ち合いと呼ばれる相場状況で、パターン分析でいえばレクタングルの一種といえます。売り方と買い方の勢力がほぼ拮抗することによって形成されます。


価格がラインの下限を下回って下落が続けば、売り方の勢力が強まったことを示唆し、新しい下落トレンドに入るシグナルとなります。逆に、価格がラインの上限を上回って上昇が続けば、買い方の勢力が強まったことを示唆し、新しい上昇トレンドに入るシグナルとなります。一般にラインの期間が長ければ長いほど、保ち合いの後のトレンドの勢いは強くなるといわれています



【参考】NPO法人日本テクニカルアナリスト協会テキスト


日本株情報部 チーフストラテジスト

東野 幸利

証券会社情報部、大手信託銀行トレーダー、大手銀行などの勤務を経て2006年に入社。 マーケット分析やデリバティブ市場のコンテンツを担当。世界主要指数や個別株を対象にテクニカル・ストラテジーの提案。 日経CNBC「夜エクスプレス」、日経チャンネル「マーケッツのツボ」、テレビ東京「モーニングサテライト」、ラジオ日経(金曜後場マーケットプレス)など 会社四季報プロ500、ダイヤモンド・ザイ、日経マネー、株主手帳など 金融機関向けコラム「相場一点喜怒哀楽」 IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA) 日本テクニカルアナリスト協会理事 CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務) DCアドバイザー(確定拠出型年金教育・普及協会)

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