トヨタ自動車(7203)は8月29日、部品の発注処理を行うシステムの不具合により、国内でトヨタ・レクサス車を生産する全14工場で稼働を停止したことを明らかにしました。
ただし暫定的にシステムを立ち上げ、翌30日以降、全工場の稼働を順次再開しています。
トヨタ自動車では2022年3月、取引先の部品メーカーの小島プレス工場がサイバー攻撃を受け、国内全工場の稼働が停止しました。
2年連続で国内全工場の稼働が停止しましたが、今回のシステム不具合に関しては、サイバー攻撃ではないとの見方を示しています。
しかし、中国や北朝鮮との関係悪化への懸念が強まるなか、サイバー攻撃に対する強化を図る必要性を認識した経営者は多いのではないでしょうか。
能動的サイバー防御を導入へ
専門家などから、日本は欧米諸国と比べサイバー防御で遅れをとっていると指摘されています。
政府は2022年末、国家安全保障戦略で攻撃を未然に防ぐための「能動的サイバー防御」の導入を明記しました。
これまではサイバー攻撃を受けてからセキュリティの穴を塞ぐなど「受動的な防御」にとどまってきましたが、能動的サイバー防御は攻撃を受ける前に攻撃元のシステムに入り込み、システムを無力化します。
ただし攻撃の兆候を理由に相手のシステムに侵入するのは難しく、憲法9条の専守防衛や不正アクセス禁止法など法律との整合性を慎重に検討する必要があります。
政府は今後有識者会議でサイバー防御に関連する法体系を整理し、2024年の通常国会への関連法案の提出を目指しています。
情報セキュリティは重要技術課題と位置付け
政府は25日、総合的な防衛力強化に向けた関係閣僚会議の初会合を開き、防衛力の強化につながる研究開発とインフラ整備のあり方を議論しました。
会合では、サイバー防御を含む「情報セキュリティ」など9分野を重要技術課題と位置づけ、さらに早期実用や量産に向け特に重視する項目は「マッチング事業」として認定し、支援を手厚くする案などを検討しています。
サイバーセキュリティ関連銘柄とは
サイバー防御がマッチング事業に認定されれば、サイバーセキュリティ関連銘柄に注目が集まりそうです。
代表格はトレンドマイクロ(4704)。個人向けセキュリティ対策ソフトの開発・販売、法人向けサイバーセキュリティプラットフォームを提供しています。
またデジタルアーツ(2326)は、主に企業・官公庁向けにウェブセキュリティなどネットセキュリティソフトの開発や販売を行っています。
ソフトの開発・販売以外では、ブロードバンドセキュリティ(4398)が脆弱性診断やセキュリティのコンサルティング情報漏洩IT対策サービスなどを提供しています。
さらにグローバルセキュリティエキスパート(4417)ではセキュリティ教育講座、セキュリティ訓練サービスなど教育事業を展開しています。
2024年度概算の防衛予算は過去最大
防衛省は8月31日、2024年度予算概算要求で過去最大となる7兆7385億円(23年度当初予算比約17.2%増)を計上しました。
2024年度は防衛力の抜本的強化を目指す「5年計画」の2年目となります。
2022年末に閣議決定した防衛力整備計画のなかで、重視する主要事業に挙げた「スタンドオフ防衛能力」に約7500億円、「統合防空ミサイル防衛能力」に約1兆2700億円、「機動展開能力・国民保護」に約6000億円と巨額の予算を要求しました。
台湾や北朝鮮など近隣諸国での有事への警戒が強まるなか、政府による防衛力強化に向けたに注目する必要がありそうです。