今年の年末商戦、5年ぶりの低い伸びかー米小売決算では明暗分かれる

年末商戦は大幅に伸び鈍化の予想も、ウォルマートCEOは楽観


レーバーデー明け、米国ではハロウィーン商戦が本格化するほか、クリスマスを控え年末商戦が段階的に始まります。今年の年末商戦は、米連邦準備制度理事会(FRB)が7月までに5.25%の利上げを行うなか、その影響が気になるところ。コンサル会社大手デロイトの調査によれば、11月~1月に売上高は前年比3.5~4.6%増と見込まれ、金額としては1兆5,400億~1兆5,600億ドルに。2022年の年末商戦の結果が7.6%から大きく縮小し、5年ぶりの低い伸びとなる見通しです。


ところがウォルマートからは、こうした暗い予想を一蹴する明るい声が届いています。ブルームバーグによれば、ダグ・マクミロン最高経営責任者(CEO)は、ゴールドマン・サックス・グローバル・リテーリング・カンファレンスにて、今年の年末商戦について「かなり良好になる」と予想。雇用の増加や賃金上昇のペースに加え、インフレも鈍化するなかで、同社の業績を支える見通しを示します。


同社の決算を振り返ると、ウォルマートの5-7月期(Q2)決算は勝ち組そのもの。調整済み1株利益は1.84ドルと、市場予想の1.71ドルを超え、売上高も前年同期比5.7%増の1,616億ドルと、市場予想の1,603億ドルを上回りました。お陰で、通期見通しは売上高につき4~4.5%増と従来の3.5%増から上方修正し、調整済み1株利益も6.36~6.46ドルと、従来の6.1~6.2ドルから引き上げ、2期連続で上方修正するほど、順風満帆です。同社が食料品の売上高が約6割を占めたことも、勝因です。こうした背景からウォルマートの株価は堅調で、年初来のパフォーマンスは9月13日時点の年初来で16.1%高と、S&P500の16.4%高とほぼ変わりません。


チャート:年初来のウォルマート株価はS&P500と遜色ないリターン、競合のターゲットは17.5%安 


食料品の売上シェアが約2割のターゲット、ウォルマートに反し業績見通し修正


逆に、競合のディスカウント小売大手のターゲットの決算はというと、Q2の決算は、在庫処分が進んだ結果が影響し調整済み1株利益が4倍増となりました。しかし、売上高が前年同期比4.8%減の248億ドルとなった結果、業績見通しは下方修正。通期の既存店売上高見通しにつき、従来の前年比1~4%減から同1~4%増のところ、同5%程度の減少としました。1株利益も、従来から75セント引き下げ7~8ドルと見込みます。


ブライアン・コーネル最高経営責任者(CEO)は、決算結果を受け「消費者は食品・飲料や生活必需品での高止まりにインフレ水準に引き続き直面し、これらが家計大きな部分を占めている」との警戒を示しました。また、米連邦最高裁判所がバイデン政権の学生ローン返済免除を無効と判断した影響で返済が再開されることも、裁量的支出の押し下げ要因に挙げています。同社が見通しを引き下げたのは、芳しくない売上高の影響で、食料品のシェアが2割程度と、裁量的支出に頼る構造が裏目に出ました。同社の株価は年初来で17.5%安と、ここでもはっきりウォルマートと明暗が分かれています。


過剰貯蓄の取り崩し、クレジットカードの延滞増加・・米家計に黄信号


振り返ると、米7月個人消費は前月比0.8%増で、今年に入って7カ月連続で増加するなかでも高い伸びを維持していました。アマゾン・プライム・デーのほか、新学期セール、旅行関連支出などが押し上げたとみられます。また、米連邦最高裁判所が6月にバイデン政権が中間選挙前に打ち出した学生ローン返済免除につき無効の判断を下した結果、9月から利払い負担、10月から返済が再開を控え、駆け込み消費が入った可能性もあります。


しかし、今後は①家計の過剰貯蓄の枯渇、②クレジットカードの延滞増加、③雇用の減速――などを背景に、米経済の約7割を占める個人消費が減速する黄信号が点灯中です。①の家計の過剰流動性の枯渇でいえば、個人の貯蓄額(可処分所得マイナス個人消費支出)が7月に年率で7,056億ドルと、2010~19年平均の1兆ドル以下でした。また、NY連銀によれば、クレジットカードで新規(30日以上)延滞の割合はQ2に7.2%と12年Q1以来の水準へ上昇。24年の米大統領選を控え、米経済の約7割を占める個人消費に減速懸念が高まっています。


チャート:米国の過剰貯蓄は取り崩され、足元は2010-19年平均以下に 


さらに、③の雇用の減速も気掛かりです。特に、高賃金職でリストラが進んでおり、チャレンジャー人員削減予定数をみると、8月までの年初来で人員削減でトップはテクノロジーで前年同期比10.4倍の14万9,452人、2位と3位に小売とヘルスケアが続いた後、4位に金融が同3.3倍増の4万3,341人でした。さらに足元、ゴールドマン・サックスを始め地銀など、人員削減が再開する状況です。


米景気については楽観的な見通しが優勢で、イエレン財務長官は9月11日にソフトランディングに向け「非常に良い感触をもっている」と発言していました。しかし、米家計には冷たい逆風が吹きつけつつあります。


ストリート・インサイツ

金融記者やシンクタンクのアナリストとしての経験を生かし、政治経済を軸に米国動向をウォッチ。NHKや日経CNBCなどの TV 番組に出演歴があるほか、複数のメディアでコラムを執筆中。

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