国内企業初のガバメントクラウド事業者が誕生するか!

10月3日付けの日本経済新聞朝刊では、さくらインターネット(3778)が全国の自治体や中央省庁が共通の基盤上でシステムを運用する「ガバメントクラウド(以下、政府クラウド)」に参入する方針を固めたと報じました。


政府は2025年度末までに税金や国民年金など市町村が担う20の基幹業務に関するシステムを政府クラウドで利用できる体制にする目標を掲げています。


政府クラウドでは税金や国民年金など自治体がこれまで個別に管理してきたシステムを共通基盤で運用することで、自治体のシステム運用コストの削減につながることが期待されています。


22年度の公募では国内企業からの応募なし

2022年度にデジタル庁は公募を実施したところ、認定を受けた4社は米マイクロソフトなど米国企業の日本法人となりました。一方、国内企業からの応募はありませんでした。


事業者に認定されるためには、システムの開発から運用まで支援する体制の構築など330ほどある選定要件を1社で満たす必要があり、国内企業にとってハードルが高いものでした。


23年9月の公募でさくらインターネットが参入表明

そのようななか、デジタル庁は2023年8月、複数の企業で条件を満たせば参入を認めると選定要件の緩和を発表しました。

9月12日より新しい要件で事業者の公募を開始し、今回さくらインターネットが参入する方針を固めたと伝わりました。

日本企業が政府クラウドへの参入を表明するのは、さくらインターネットが初めてとなります。


同社は、2024年3月期中にクラウドの専門人材を100人採用し、人員増強によるクラウドサービスの強化を図ろうとしています。

2024年度のサービス開始を目指しており、2~3年後に年数十億円の売上高を見込んでいます。

長期的には住民基本台帳など基幹業務のクラウドの受注を目指しています。

今後、政府や自治体向けのクラウド事業が軌道に乗れば、業績拡大に寄与することが期待されます。


IIJやソフトバンクも事業者に名乗り

10月12日付の日本経済新聞朝刊は、インターネットイニシアティブ(IIJ)(3774)政府クラウドの提供事業者に名乗りをあげると報じました。

米マイクロソフトと共同で提案する形を取り、アプリが動く基盤を提供するPaaS(パース)など同社だけで要件を満たせないものは、共同提案するマイクロソフトの技術を取り込んで提供するとしています。

また政府・自治体の機微なデータだけを扱う専用のデータセンターも新設する方針と伝えています。


さらに翌13日の日本経済新聞電子版では、ソフトバンク(9434)政府クラウドの提供事業者に応募したと伝えました。

同社は国内に自前でデータセンターを整備しているほか、通信ネットワークを持っていることが強みとなり、今回の参入にあたっては、外資のIT(情報技術)大手と組むことも検討するとみられています。


10月下旬に認定事業者の公表予定

10月12日を以て、今回の事業者の公募は終了しました。

デジタル庁が応募した事業者を正式に公表していませんが、国内企業から上記の3社が応募したようです。


その他にも、官庁や自治体向けのクラウドで実績のあるNTTデータ(9613)NEC(6701)の動向が注目されています。


NTTデータは21年2月より政府向けのクラウドサービス「OpenCanvas for Government」を提供しており、24年3月期をめどにアマゾンウェブサービスなど米国系企業と自社の基盤を組み合わせたハイブリッド型のクラウドを開発しています。


NECは22年9月、千葉県印西市の自社データセンターと米マイクロソフトのクラウド基盤「アジュール」を専用回線でつないだサービスを提供し始めたほか、23年8月からガバメントクラウド上で地方自治体の行政手続きを効率化するDXサービスを提供しています。


デジタル庁は、10月下旬に認定された事業者を公表する予定としています。

報道された3社以外にも参入していたかも含め、国内企業で初めて事業者が認定されるか注目したいと考えています。



日本株情報部 アナリスト

角屋 昌範

2005年に国内証券会社へ入社後、投資情報部や調査部に在籍。投資情報部では、米国や香港株式市場見通しの作成など海外金融市場に関する調査業務に携わる。調査部では、ネット関連セクターを中心に国内個別企業のアナリストレポートを執筆した。 国内証券会社などを経て2019年に入社。主に先物市場見通しなど「デリバティブコンテンツ」を担当。 CFP DCプランナー

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