【米国株インサイト】旅行セクター(後編):クルーズもホテルも世界最大級、観光大国の旅行銘柄は粒ぞろい

米国は観光大国という側面も持ちます。インバウンドの旅行者が落とすお金を合算した国際観光収入は世界最大の規模を誇ります。海外旅行者数はドイツや英国を下回りますが、国内に豊富な観光資源を持っており、観光産業の規模も世界最大です。


米国市場に上場する旅行関係銘柄も当然、粒ぞろいです。前回はオンライン旅行予約サービスのブッキング・ホールディングス(BKNG)と民泊仲介のエアビーアンドビー(ABNB)をご紹介しました。今回はクルーズ船運航のロイヤル・カリビアン・クルーズ(RCL)、ホテルグループのマリオット・インターナショナル(MAR)、航空大手のデルタ・エア・ラインズ(DAL)を取り上げます。


ロイヤル・カリビアン・クルーズ、クルーズ船の大型記録を更新へ

ロイヤル・カリビアン・クルーズは世界最大級のクルーズ船の運航会社です。大型客船に乗ってカリブ海などを周遊する旅は特に中高年の米国人にとってレジャーの王道。新型コロナウイルスの流行初期段階でやり玉に挙がり、大打撃を受けましたが、客足は戻っているようです。


同社は「ロイヤル・カリビアン・インターナショナル」「セレブリティ・クルーズ」「シルバーシー・クルーズ」の3つのブランドを傘下に持ち、事業を展開しています。2022年末時点で所有する船舶は52隻。ブランド別の内訳はそれぞれ26隻、15隻、11隻です。


このほかドイツのTUI クルーズとハパック・ロイドにそれぞれ50%ずつ出資しています。TUI クルーズはクルーズ船7隻、ハパック・ロイドは小型の豪華客船2隻と探検船3隻を運航しています。


ロイヤル・カリビアン・クルーズの特徴といえば大型船です。新しいクルーズ船を就航させ、それまで自社が持っていた「世界最大」の記録を次々に塗り替えています。


現在の世界最大のクルーズ船は2022年3月に就航した「ワンダー・オブ・ザ・シーズ」で、総トン数は約23万トンです。ただ、世界最大の称号を受ける期間は短く、2024年1月には25万8000トンの「アイコン・オブ・ザ・シーズ」が就航します。ともに「ロイヤル・カリビアン・インターナショナル」ブランドのクルーズ船です。


「ワンダー・オブ・ザ・シーズ」のベッド数は約5700で、船内は18階建ての構造です。大型マンションと遊園地を船の上にすっぽり乗せた感じでしょうか。


クルーズ船の大型化は、2020年に90歳で死去した共同創業者、アルネ・ウィルヘルムセン氏が主導しました。約30年間にわたり取締役を務めた同氏はスケールメリットを追求し、幅広い層にクルーズ旅行の楽しみを提供したといえます。


業績はリーマンショック後の2010年12月期から10年連続で増収となり、2019年12月期には売上高が109億5100万ドルと100億ドルの大台に乗りましたが、新型コロナで一気に暗転します。



2020年12月期には売上高が前年比79.8%減の22億900万ドル、2021年12月期は30.6%減の15億3200万ドルに落ち込み、純損失は2年連続で50億ドルを上回ります。ただ、2022年12月期には売上高が前年の5.8倍に当たる88億4100万ドルに急増し、赤字も21億5600万ドルに縮小しました。


2023年1-3月期は売上高が前年同期の2.7倍の28億8500万ドルに達し、2019年1-3月期の実績を大きく上回りました。2023年4-6月期には、四半期ベースの売上高が過去最高を更新しています。ピークの7-9月期の業績にも期待できそうです。


マリオット・インターナショナル、多様なホテルブランドを展開

マリオット・インターナショナルは世界最大級のホテルグループです。多様なブランドを持ち、ホテルの運営をはじめ、フランチャイズやライセンスの供与などを手掛けています。


ホテルのブランドはラグジュアリー、プレミアム、セレクトに分類されています。ラグジュアリーにはJWマリオット、リッツカールトン、Wホテル、セントレジス、エディション、ブルガリなどそうそうたる名前が並びます。



プレミアムはマリオット・ホテル、シェラトン、ウェスティン、ルネッサンス、ルメリディアンなどで、ラグジュアリーには劣るかもしれませんが、間違いなく高級ホテルです。セレクトはコートヤードやレシデンス・イン、フェアフィールドなどを展開しています。


マリオット・インターナショナルが自前で不動産を所有または賃借しているホテル物件は2022年末時点で2053件で、客室数は合わせて57万6243室に上ります。フランチャイズやライセンスを供与している物件は6122件、客室数は93万7683室です。


ブランドのフランチャイズやライセンスの供与では、マリオット・インターナショナルとホテルのオーナー(不動産所有者など供与を受ける側)が契約を結ぶ必要があります。通常の契約では申請時にオーナー側から一時金を受け取り、その後は宿泊代金の4-7%、飲食代金の2-3%をロイヤルティーとして継続的に受け取ります。


また、ホテルに併設する住宅にもブランドのライセンスを供与しています。住宅は2022年末時点で113件、1万1481戸に上っています。


業績はやはりコロナの影響で2020年12月期に売上高が半減し、最終損益で赤字に転落した。ただ、2021年12月期には売上高がコロナ前の2019年12月期の7割弱にまで戻し、黒字に転換。、2022年12月期には売上高が2019年の水準に戻り、過去最高益を更新しています。


デルタ・エア・ラインズ、フライト数は1日4000便

世界最大級が続いていますが、デルタ・エア・ラインズも航空業界ではそうしたポジションの会社です。約130カ国・地域の800以上の都市に就航しています。2022年末時点で1250機の航空機を運航し、1日当たりのフライト数は4000便を超えています。


国内線のネットワークではアトランタやミネアポリス、デトロイトなどにハブ空港を置き、国際線ではボストンやロサンゼルス、ニューヨーク、シアトルなど海岸に近い都市に拠点を置いています。海外ではアムステルダム、ロンドン、パリ、メキシコシティ、ソウルなどにハブ空港を持っています。


航空アライアンスのスカイチームの創立メンバーで、アエロメヒコ航空やエールフランス-KLM、大韓航空、中国東方航空、ヴァージン・アトランティック航空などと提携しています。


業績動向は旅行業界全体が似通っています。やはり2020年12月期に売上高が前年の3分の1近くにまで激減し、純損失は123億8500万ドルに膨らみました。2021年12月期に売上高をかなり戻し、2022年12月期には売上高が前年比69.2%増の505億8200万ドルとなり、初めて500億ドルを突破しています。

中国株情報部

島野 敬之

出版社を経て、アジアの経済・政治情報の配信会社に勤務。約10年にわたりアジア各国に駐在。 中国株二季報の編集のほか、個別銘柄のレポート執筆を担当する

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