2021年以降の国内スマホゲーム市場は緩やかに縮小しているとみられています。それまでスマホゲーム市場は「パズル&ドラゴンズ」や「モンスターストライク」が大ヒットしたこともあり、急成長してきました。年末年始のTVCMをスマホゲームが席巻していましたので、その勢いを肌で感じていた人も多かったのではないでしょうか。しかし、スマホゲーム市場の先行きに関して厳しい見方が出てきています。
今回はスマホゲームの足元のランキングを確認するとともに、最近決算を発表したスマホゲーム会社であるAimingの業績や株価動向を確認してみます。
AppStoreのセールスランキング
2023年10月13日14時時点のAppStoreのセールスランキングのTOP10は以下のとおりです。
スマホゲームの売り上げはイベントなどにより大きく異なりますので、セールスランキングの順位は大きく変動します。あくまでも2023年10月13日14時時点でこの順位だったという前提となりますので、ご注意ください。
この順位をみるとサービス開始から3年以上経過しているゲーム(青文字)が目立ちます。それだけ根強い人気があるということです。逆に言えば新規のゲームが上位に食い込むことが難しいといえます。
そのような状況でも、2位に「Pokemon Sleep」、6位に「モンスターハンターNow」、8位に「崩壊:スターレイル」、10位に「ドット勇者 三時のおやつと昼寝付きの冒険」と2023年にサービスを開始したゲーム(赤文字)が入っています。これは健闘しているといってよいでしょう。ではランクインした2023年にサービスを開始したゲームを簡単にみてみます。
2位の「Pokemon Sleep」はスマートフォン向け睡眠ゲームアプリであり、睡眠を計測、分析することを目的としており、ゲームというよりも睡眠サポートアプリといえそうです。
6位の「モンスターハンターNow」は、最先端の位置情報技術とAR技術を強みに持つナイアンティックが開発・配信を担う「モンスターハンター」シリーズの新モバイルゲームです。いわゆるウォーキングゲームであり、歩いて遊ぶものとなっています。
8位の「崩壊:スターレイル」は、中国のソーシャルゲーム会社のmiHoYoが開発・配信しています。miHoYoといえばオープンワールドRPG「原神」も有名です。「原神」の開発費は100億円越えといわれており、「崩壊:スターレイル」の開発費もかなりの高額とみられています。
10位の「ドット勇者 三時のおやつと昼寝付きの冒険」は、中国のEfun Companyが手がけています。香港や台湾、韓国でリリースされた後に日本でリリースされ、国内でもヒットしています。
このように今年リリースでTOP10に入ったゲームは、「健康促進につながるゲーム」と、「中国の会社のリリースしたゲーム」となっています。
定番ゲームの牙城を崩すのは難しいものの、健康促進など特色のあるゲームや勢いのある中国のゲームが果敢に挑んでいるという構図です。このような状況ですので、国内のスマホゲーム会社が開発した従来通りのスマホゲームがここに割って入るのは容易ではないと思われます。
「ダンクロ」10億円未達の衝撃
スマホゲーム配信・制作を行うAiming(3911)の直近の決算をみてみます。
同社は2023年10月27日に23.12期3Q累計の連結純損益は11.1億円の赤字だったと発表しました。会社計画は3.4億円の赤字でしたので、計画を大きく下回りました。
要因としては、2023年8月24日にサービスを開始したスマートフォン向けゲーム「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかバトル・クロニクル(ダンクロ)」の売上高が見込みに対して10億円を超える未達となったことなどが響いたとのことです。
なお、この発表を受けて株価は窓を開けて急落。10月30日ストップ安となり年初来安値と上場来安値を同時に更新しました。
【Aimingの日足】
「ダンクロ」の未達は特殊事例?それとも
人気ライトノベルを原作としていますので「ダンクロ」に対する期待は大きく、広告宣伝もある程度投下したと考えられます。多くのスマホゲームを製作し、ノウハウもあると思われるAimingが、売り上げ見込みを10億円も外すということは、市場環境が変わってしまっている可能性があります。
もちろん「ダンクロ」が特殊だったという可能性もあります。しかし、そうではなかった場合は心配です。新作スマホゲームを出して、それなりにプロモーションを行えば一定の売り上げが望めるという時代ではなくなっているということになります。
今後リリースされるスマホゲームの売り上げについても厳しくみておいたほうが良いでしょう。スマホゲーム会社を投資対象とするのは、これまで以上にハイリスク・ハイリターンになってきたと感じています。