高配当のあさひVS成長株のダイワサイクル 買うならどっち?

上場企業は2社のみ


通期、通学、買い物からちょっとした遠出まで。とても身近で人によっては生活に欠かせない存在となっている自転車。単なる移動手段にとどまらず、手軽にはじめやすいエクササイズとして、また、環境に優しい乗り物としても、注目されています。


自転車を専門に取り扱う上場企業は現在、あさひ<3333.T>とDAIWA CYCLE<5888.T>(以下、ダイワ)の2社だけとなっています。両社とも事業内容は自転車の販売とメンテナンスになりますが、違いはあるのでしょうか。また、両社に限らず、同業界で勝ち残るためには何が求められるのかを、検証していきたいと思います。


経済産業省の調査によると、2007年以降の自転車の販売台数の推移は、品目別にみていくと、販売数量では、軽快車(いわゆる一般車)、その他自転車(マウンテンバイクやミニサイクル、子供車など)とも減少、販売金額では、軽快車は減少、その他自転車は横ばいで推移しつつも近年はやや減少しているとのこと。これは少子高齢化が進む日本では必然の状況といえるでしょう。他方で電動自転車は販売数量・金額ともに右肩上がりで推移しており、販売単価も上昇しているといいます。


あさひ<3333.T>の日足チャート


DAIWA CYCLE<5888.T>の日足チャート


3つの重要指標を比較

こうした状況も踏まえた上で、両社の決算資料から読み取れる3つの重要な指標(それぞれの数値は各社の1Q時点、対売上高)を挙げ、それぞれ比較します。


1:電動自転車の割合

上記のように、今一番、顧客から求められている商品であり、高単価である電動自転車の割合は、トップラインの成長を占う上で重要といえるでしょう。

あさひ:29% ダイワ:63%

となっています。経産省の調べでは、業界全体(国内流通金額)は43%であり、ダイワの方が注力していることが伺えます。ただ、利益率としては高くないようです。ダイワでは「電動車比率の増加に伴い売上総利益率が低下した」と説明しています。まずは需要が高い電動自転車で集客したうえで、付帯サービスの販売などにつなげられるかが問われそうです。


2:PB商品の割合

自転車に限らず、小売業者が独自に企画・開発・販売するPB(プライベートブランド)商品は、商品中間コスト(卸売業者や広告宣伝費など)を削減できるため、NB(ナショナルブランド)商品よりも、利益率が高くなります。

あさひ:49.2% ダイワ:30.3%

となっています。


3;車体販売以外(整備・修理など)の割合

単発の車体販売に比べ、定期的に発生し、なおかつ利益率が高いメンテナンスは各社が注力しています。あさひは同サービスが専門店へ集中していることを受け、専門性向上に取り組んでいます。ダイワも独自の出張修理サービスを展開し、対面接客で入手したニーズを素早くPB自転車の開発・改良に生かしているといいます。

あさひ:24.7% ダイワ:8.3%

となっています。


以上のように、PB商品の割合、車体販売以外の割合では、先行者のあさひがリードする結果となりました。いずれも同社の注力する取り組みとして掲げられている事項であり、着実に成果に結びついているといえそうです。ただ、ダイワも需要が高い電動自転車の販売に注力するなど、後発者なりに独自の戦略を実行していることが伺えます。店舗数としては、あさひに4倍近い差(あさひ547店舗、ダイワ139店舗)をつけられている現状で、ダイワが今後どのような打ち手を展開するのか、あさひは首位を維持しながらさらなる成長戦略を描けるのか、注目していきたいところです。


株価については、ある程度成熟しており、安定して配当利回り3%超のあさひ、配当は少ないながらも成長株として高値を追うダイワと、分かれているようです。投資家の投資方針に合わせて選べるといえそうですね。







日本株情報部 アナリスト

斎藤 匠

神奈川県出身。慶応義塾大学を卒業後、2022年に国内証券会社へ入社し、個人顧客向け営業に携わる。国内証券会社を経て2024年入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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