日本は貧しくなった?実質賃金の推移やアメリカとの給与を円換算で比較

「株価はすごく上昇しているのにあまり実感がわかない」このように感じている人もいるのではないでしょうか。


2024年の春闘による賃上げは過去にないほど記録的でしたが、昨年から続く物価高と相殺されているため、生活が豊かになったとは感じにくいように思います。


SNSでは「給与が上がらず増税ばかりで日本は貧しくなった」との声も一部取り上げられていますが、実態はどうなっているか検証します。本記事では日本の実質賃金や世界と比べた給与水準などを紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。


実質賃金は23ヶ月連続でマイナスを記録している

「実質賃金」とは労働者が実際に受け取った給与(名目賃金)から、物価の上昇分を除いた指標であり、購買力の実態を示していると言われています。実質賃金が減少すると今まで購入できていた商品やサービス量も減るため、個人消費の落ち込みにつながるのです。


給与アップも重要ですが、この実質賃金が増えていかないとインフレに伴う賃金上昇が実現できていないとも受け取れます。


厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査によると、賃金の現金給与総額は26ヶ月連続で上昇しています。しかし、実質賃金をみると2022年4月から23ヶ月連続でマイナスを記録しており、インフレに給与上昇が追いついていない実態が浮き彫りになりました。


とくに2022年から続くインフレの影響を強く受け、実質賃金はマイナスへと転嫁した形です。なお、一般労働者の平均賃金は月36万0,616円と過去最高を記録しています。


2024年3月は春闘により大企業を中心とした根強い賃上げがあり、実質賃金がプラスに転じるかについて注視してみましょう。


世界と日本の賃金・実質賃金の推移を比較

国内だけのデータをみてきましたが、G7(アメリカ・イギリス・ドイツ・カナダ・フランス・イタリア・日本)の給与・実質賃金の動向と比較してみます。以下の画像は1990~2020年までの賃金・実質賃金の推移をあらわしています。


 

画像引用元:コラム1-3-①図 G7各国の賃金(名目・実質)の推移|内閣府


この30年間で日本も賃金上昇を続けていますが、欧州諸国と比べると大きく差をつけられています。また日本の実質賃金はこの30年ほど停滞を続けており、ほとんど延びていません。


一方で、イタリア以外のアメリカやイギリスなどG7加盟国では、30年かけて30~46%ほど上昇しています。


海外ではインフレは続いていますが、それ以上に賃金上昇が進んでいるため実質賃金も高く計測されています。


日本とアメリカの賃金格差を比較

日本とアメリカの賃金格差を比較するため、世帯中央値をみていきます。米国勢調査局が公表した「2022年 米国における世帯年収の割合の分布」を参考にすると、2022年における世帯所得の中央値は7万4580ドルでした。


また2022年における日本の賃金については、厚生労働省が発表する各種世帯の所得等の状況を調べると中央値は約423万円です。


2国間の給与を円換算で比較するため「2022年12月31日のドル円:約132円」と「2024年1月31日のドル円:約148円」を参考にして計算すると、以下の結果が出ました。


・日本:約423万円

・アメリカ:約984~1104万円


ここ数年は為替による変動幅が大きいため参考値ではありますが、円換算するとアメリカは日本より2倍以上の賃金を受け取っている計算です。


特に2024年に入ってから円安トレンドであり、ドル円は152円に迫る勢いです。アメリカの給与上昇とあわせてしばらくは、賃金格差はさらに拡大する可能性が高くなります。



価格の安さから訪日外国人が増加

2023年にはコロナ禍による入国制限が解除され、多くの外国人旅行客が日本へ訪れました。昨年の訪日外国人旅行消費額は過去最大である約5兆2923億円と、日本の観光業を大きく支えています。


その背景にはデフレによる価格の安さと為替が円安に働いたことで、世界と比べて安い商品・サービスが揃っている日本に注目が集まった形です。海外の富裕層向けサービスを提供する外資系高級ホテルや商業店などが話題を集めており、今後も出店数は増える見込みです。


また為替は数年前と比べて円安であり、2024年も外国人旅行客は過去最高を更新すると予想されています。


今後は外貨を稼ぐ働き方が出てくる

トヨタやソフトバンクをはじめとするグローバル企業であれば、業績の好調さが給与にも反映されやすい傾向です。しかし、日本の約8割は中小企業であるため、大手企業のように給与アップするまで時間がかかると推測されます。


円安の今だからこそ次の選択肢として、数年かけて外貨を稼ぐ働き方が世間に広まるかもしれません。具体的には外資系企業に就職して働いたり、海外のクラウドソーシングサイトで仕事を受注したりして、日本にいながら外貨を稼ぐことです。


今までは国内企業に勤めて仕事が完結しているのが当たり前でしたが、多様な働き方を選ぶ時代に突入するかもしれません。

独立系ファイナンシャルプランナー

藤崎 竜也

「独立系ファイナンシャルプランナーとして執筆業を中心に活動中。2019年から教育資金や老後資金を蓄えるために投資を始める。実体験をもとに、専門用語をわかりやすく解説するのが得意。2級ファイナンシャル・プランニング技能士資格を取得し、現在は金融ジャンル(資産運用・投資・不動産・保険)をメインに執筆している。

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