「今年の春闘、賃上げ率が高かったってニュースで見た!」
「給与明細を見ると、確かに去年より給料(額面)は増えている…」
「スーパーに行くと商品の値上がりが気になり、生活が楽になった実感がない」
最近、こんな風に感じている方は多いのではないでしょうか。給料は上がったはずなのに、家計は苦しいまま。そんなモヤモヤした気持ちを抱えている時に、インターネット上などで「実質賃金ガー」という少し皮肉めいた言葉を目にすることがあるかもしれません。
一体、実質賃金とは何なのでしょうか?そして、なぜ私たちの生活実感と給料にズレが生じているのでしょうか。
この記事では、実質賃金の謎を専門用語をなるべく使わずに分かりやすく解説します。そして、「実質賃金ガー」と嘆くだけで終わらない、家計を守るための賢い対策についても一緒に考えていきましょう。
名目賃金と実質賃金、給料の本当の価値とは?
お金のモヤモヤを理解するために、2つの賃金の違いを知ることが大切です。
・名目賃金
私たちが普段目にしている、給与明細に書かれている「額面」の金額のことです。「基本給〇〇円、手当△△円、総支給額××円」といった、具体的な金額そのものを指します。
・実質賃金
給料で実際にどれだけのモノやサービスが買えるのか、購買力を示す指標です。名目賃金から、物価の上昇・下落の影響を取り除いて計算されます。
少し分かりにくいので、お米を例に考えてみましょう。
数年前:月給20万円、お米5kgが2,000円だったとします。この月給で、お米を100袋買えました。
現在:月給が22万円に上がりました(名目賃金10%UP!)。しかし、お米5kgの値段も2,500円と25%アップしていました。この月給で買えるお米は、88袋です。
この例では、給料の額面(名目賃金)は2万円上がったにもかかわらず、実際に買えるお米の量(実質的な価値)は12袋分も減ってしまいました。
名目賃金が上がっても、それ以上に物価の上昇率が高ければ、私たちの生活は実質的に苦しくなってしまうのです。
なぜ日本の実質賃金はマイナス続きなのか?
厚生労働省が発表する実質賃金指数は、2025年5月まで実に5ヶ月連続でマイナスを記録するなど、賃金の伸びが物価上昇に追いつかない状況が続いています。その原因は何だと思いますか?ここでは2つの原因を紹介します。
原因1:止まらない物価上昇
私たちの生活実感通り、食料品やガソリン、電気・ガス代など、身の回りのあらゆるモノやサービスの値段が上がっています。
この背景には、歴史的な円安による輸入品価格の上昇や世界的な原材料価格・エネルギー価格の高騰などが大きな要因として挙げられます。そして国内の人手不足による人件費の上昇など、複数の要因が複雑に絡み合っているのです。
原因2:物価上昇に追いつかない賃金の伸び
一方で、私たちの給料の伸びが、この物価上昇のペースに追いついていないのも問題です。
2024年、2025年の春闘では、歴史的と言われる高い水準の賃上げが実現しました。この結果が反映され名目賃金自体はプラスで推移しています。
しかし、その伸び率は物価の上昇率を下回っているため、結果として実質賃金はマイナスとなってしまっているのです。
実質賃金ガーと嘆く前に!今すぐ始めたい資産形成術
実質賃金のマイナスは個人の努力だけでは変えることができない、社会全体の大きな流れです。
こんな時代だからこそ、自分でできる対策を実行していくことが何よりも重要になります。ここでは家計を守り、資産を育てるための具体的な方法を「守り」と「攻め」の2つの側面からご紹介します。
まずは、家計の足元を固める守りの対策として、日々の支出を見直しましょう。特に、スマートフォン料金や各種サブスクリプションといった固定費の削減は、一度手をつければ節約効果が長く続くため効果的です。
そして、守りと同時に考えたいのが、資産を積極的に育てる攻めの対策です。実質賃金がマイナスということは、銀行に預けているお金の価値も物価上昇によって実質的に目減りしていることを意味します。インフレから資産を守る上でも、資産運用は有効な手段です。
2024年から始まった新しいNISAや税制上のメリットが大きいiDeCoなどを活用し、資産を育てていくことから始めてみるのが良いでしょう。
また、スキルアップや副業で稼ぐ力そのものを高める自己投資も、これからの時代を力強く生き抜くための重要な攻めの対策となります。
まとめ:実質賃金を正しく理解し自分の資産を守ろう
「給料が上がったのに生活が苦しい」と感じる時、その背景には実質賃金の目減りという、はっきりとした理由があります。
ネット上で見かける実質賃金ガーという言葉は、この厳しい現実に対する人々の本音や諦め、皮肉が入り混じった表現と言えるかもしれません。
物価上昇に賃金の伸びが追いつかない大きな流れは、すぐに変わるものではないかもしれません。だからこそ、
・家計を見直し無駄な支出をなくす「守りの対策」
・資産運用や自己投資で資産や収入を育てる「攻めの対策」
この両輪をバランス良く回していくことが、これからの時代を豊かに生きていくための鍵となります。まずはできることから一歩踏み出し、変化の時代に負けない強い家計を築いていきましょう。