ChatGPTを提供しているOpenAI社は2024年5月13日、新しい対話型生成AIサービス「GPT4o(ジーピーティーフォーオー)の提供を開始しました。
テクノロジー領域をはじめとして、高性能機能の搭載に驚いています。それまでChatGPTが世界を驚かせていたテキストだけではなく、音声や資格情報も処理する機能が搭載され、AIの可能性を大きく広げています。派生して外国語の翻訳や資料読解などを瞬時に行うAIは、時代の最先端です。
本メディアの読者を個人投資家として本記事は考察します。我々の生活(投資にまつわる時間や行動)はGPT4oによってどう変わるのでしょうか。
GPT4oによる株価予測
引用:ChatGPT
上記の画像はChatGPTで「トヨタの株価 日本語」と入力したときの回答です。この回答が2-3秒で出てきます。
「ではGPTの回答をもとに、株式の専門家としてアドバイスをしましょう」と顧客に向き合う前に、一息ついて「トヨタ 株価 予測」と入力してみましょう。
具体的な推移予測から楽観的なシナリオ、喫緊の数字が瞬時に出てきます。5月13日に発表された4oでは、回答スピードが格段にアップしたと同時に、音声データの文字化、および感情を込めたやり取りが可能となりました。
セミナーの内容は瞬時に議事録へ
注目の株銘柄や投資信託を、証券会社などが提供するセミナーなどで視聴する方も多いと思います。GPT4oは、この内容を瞬時に議事録に返還します。情報取得に対し「耳で聞く」方法と「文字を読む」方法がありますが、比較して後者が早い人はこれから音声情報を文字に変換し、情報取得するようになるでしょう。GPT4oにより、音声メディアが無くなるといわれるのはそのためです。
外国初の目論見書も通訳不要に
海外発のファンドの目論見書や外国企業の決算書、専門家の見解など、日本語以外で書かれたものの翻訳が不要となります。
これまでは明文化されていないものの、これらの資料を日本語訳化することによって、管理報酬や手数料が付加されている部分もありました。投資家尊重のもと、これらのコストは見直され、投資収益が現在ほどは減額せずに懐に入ってくるように変わるでしょう。
また諸外国のトレーダーなどが発する世界の見通しや各種リスクなども、GPT4oを通すことで瞬時に母国語に変えることができます。PDFなどの資料であれば、GPTのポータル画面に資料添付の形でつければ、翻訳完了です。デジタルブックと連動させれば、掲載情報量の多い書籍なども、ボタンひとつ、ふたつで母国語に変えることができます。
自分が読める、ばかりではありません。友人に英語圏以外の外国から日本に来ている人がいれば、その人の母国語に変えることも、難しいものではありません。
リテール営業やIFAも不要に
「AIによって無くなる仕事」は刺激的な週刊誌の専売特許でしたが、これだけ音声からの文字化が自動化されると、証券注文は間違いなく自動化されるでしょう。証券外務員を通した注文売買どころか、個人投資家がネット証券の手続きを介して注文するプロセスも不要となります。
証券会社はBOTのような受付機能を整備し、注文をAIによって判別し、最終確認するだけです。またGPT4oは感情認識を前提とした音声対話が可能なため、証券会社のカスタマーセンターや目論見書の発行なども、著しくコストカットすることができるでしょう。
現状、証券リテールやIFAは深い株式や資産運用の知識を有し、注文は「最後の手続き」です。GPT4oが単なる手続き代行屋と解釈すれば、危機感もそれほど高くはならないでしょう。GPT4oはこれで終わりではありません。更なるアップデートにより、代替の効かなかった部分を一気に浸食する恐れもあります。
導入効果の高い「経済圏を持つ」企業群の熱がポイント
ただ、Fintechをはじめとした数多くのサービスがこれまで、従来の方法論を取る企業に導入が進まず、事業撤退をしていきました。GPT4oにおいても、証券会社が導入に動かなければ、一気に潮目を変えるとはならないでしょう。日本は従来から、リストラクチャの痛みをともなう事業改善が大の苦手です。
導入のポイントは「経済圏」です。証券会社単体では、まだ導入コスト(変革コスト)が高いものです。対象顧客の高年齢化、従業員のITリテラシー、横並び好きな日本人の特性など、ネガティブな要因となるものは揃っています。「証券会社単体ではない」ところがポイントです。
SBIやau、楽天などは証券会社を有するものの、単体の経営にとどまらず、スケールメリットを狙っています。GPT4oを利用した業務改善は証券会社だけのものではなく、銀行や生命保険会社にも横展開の効くものであるためです。
これらの企業が火付け役となり、一気にサービス構造が変わる可能性があります。ここ数日の騒がしさを見ていると、そう遠い先の話ではありません。今年はあらためて、GPT(生成AI)が世の中を席巻する1年のようです。