S&P500は米国の主要産業を代表する500社で構成される株価指数です。米国株式市場の時価総額の約80%をカバーしています。
構成銘柄になるには時価総額や財務状況など高いハードルがありますが、構成銘柄になることで得られる信頼感や評価などは大きく、米国の大企業の仲間入りを果たしたとも言えそうです。
前回は2024年1-6月に晴れてS&P500に採用された銘柄のうち、スーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI)とヴィストラ(VST)を取り上げました。今回はGEベルノバ(GEV)とデッカーズ・アウトドア(DECK)、そしてソルベンタム(SOLV)をご紹介します。
GEベルノバ、ゼネラル・エレクトリックの発電設備部門
発明王トーマス・エジソンが立ち上げた企業が源流のゼネラル・エレクトリックは米国を代表する老舗企業です。ダウ平均の算出が始まった1896年からの採用銘柄で、いったん外されたものの1907年に再び採用されると、111年後の2018年に除外されるまで構成銘柄でありつづけました。
一時は航空宇宙、重電、輸送機器、医療機器、照明器具、エネルギー設備、石油・ガス用機器、金融サービスなどの事業を多角的に手掛ける典型的なコングロマリットでした。ただ、その後に分社化を進めます。すでに多くの事業を手放し、スリム化を実現していた2021年には残っていた航空エンジン、医療機器、電力の3事業を分割する計画を発表しています。
医療機器を中核とするヘルスケア部門の分離が実現したのは2023年1月。GEヘルスケア・テクノロジー(GEHC)としてスピンオフの手続きが完了しています。
さらに分割が完成したのがGEベルノバのスピンオフが実現した2024年4月です。航空宇宙事業を手掛ける存続企業がGEエアロスペース(GE)です。ビジネス上の通称はGEエアロスペースとなりますが、伝統ある企業名が消失してしまった訳ではありません。登記名はゼネラル・エレクトリックのままで、ティッカーシンボルも変わりません。
GEベルノバは発電設備の開発や製造、保守・修理が主力事業です。セグメントは電力、電化、風力の3つに分かれ、2024年1-3月期の売上比率はそれぞれ55.1%、22.5%、22.4%でした。
電力部門では設備の売上高が前年同期比1.8%増の12億100万ドルで、サービス収入(7.3%増の28億3300万ドル)の半分以下です。ガス電力事業が中核で部門売上高の75.4%を占めています。再生可能エネルギーに移行する過渡期において、環境負荷が比較的小さく、電力の安定供給が可能なガス発電が現実解となっており、需要が旺盛です。
とはいえ新規設備よりも保守などのサービスが伸びているようで、2024年1-3月期にはガスタービンの納入は減っていますが、ガス電力事業の売上高は5.5%増の30億4100万ドルに拡大しています。
スチームパワー事業は石炭火力発電や原子力発電などで利用するスチームタービンなどを開発、製造します。電力部門売上高の14.5%を占めています。
電力部門に占める原子力発電事業の売上比率は5.7%です。日立製作所との合弁会社、GE日立ニュークリア・エナジーを通じ、原子炉や高速炉、原子燃料サイクル関連施設などの設計、製造、販売、据え付け、保守を手掛けます。
水力発電事業は電力部門売上高の4.5%を占めています。水力発電用のタービンや発電機の開発・製造を請け負っています。大型の発電設備から小型設備まで広範囲に対応します。
電化部門はエネルギーの電力転換や二酸化炭素削減に必要なソフトウエアを開発します。電力網の敷設や維持に向けたソリューションの提供、電力変換装置の製造、蓄電ソリューションの開発といった事業も展開しています。売上高全体に占める割合は22.5%です。
風力部門では風力タービンや風力ブレードの設計や製造を手掛けます。メキシコ系の企業と合弁事業などを含め多角的にビジネスを展開しています。全体の売上高に対する比率は22.4%です。
デッカーズ・アウトドア、フットウエア事業を展開
デッカーズ・アウトドアはフットウエアのブランドを展開しています。主なブランドはUGG(アグ)、HOKA(ホカ)、Teva(テバ)、Sanuk(サヌーク)、Koolaburra(クーラブラ)、そして2024年3月に立ち上げたばかりのAHNU(アニュ)です。
業績は好調で、2024年3月期決算は売上高が前年比18.2%増の42億8800万ドル、純利益が同47.0%増の7億6000万ドルです。国内外で製品を販売し、内外の販売比率はそれぞれ66.8%、33.2%です。
ブランド別では厚底のサンダルやスニーカー、レインブーツなどで人気のアグは、売上高が16.1%増の22億3900万ドルで、全体の過半に達しています。特にネット通販などを通じたDTC(消費者への直接販売)が21.5%増の11億2400万ドルと伸び、卸売り(11.0%増の11億1500万ドル)を逆転しました。
厚底のランニングシューズが主力のホカは売上高が27.9%増の18億700万ドルとなり、全体を押し上げました。卸売りが21.6%増、DTCが39.7%増とともに好調です。
ストラップ付きのサンダルが定番のテバは売上高が18.9%減の1億4900万ドルにとどまりました。DTCは小幅に伸びましたが、卸売りが23.7%減と低調でした。
ソルベンタム、スリーエムからスピンオフ
ソルベンタムは、工業用製品や事務用品の提供を手掛けるスリーエム(MMM)のヘルスケア部門でした。2024年4月初めにスピンオフし、ニューヨーク証券取引所に上場しています。主力はメディカルサージカル(医療用製品)、歯科ソリューション(歯科用製品・矯正歯科用製品)、医療情報システム、そしてフィルター製品です。
医療用製品では、医療用テープ、スキンケア製品、創傷ケア製品、体温管理製品などを提供します。2024年1-3月期決算の部門売上高は前年同期比0.4%減の11億1900万ドルで、売上高全体に占める割合は55.5%です。
歯科ソリューション部門は接着材、充填材、研磨材、接着・合着セメントなど歯科治療に欠かせない製品が中心です。また、歯科矯正で使うブラケット(矯正装置)なども提供します。2024年1-3月期決算の部門売上高は1.8%減の3億3500万ドル、売上比率は16.6%です。
医療情報システム部門は医療機関や医師を情報システム面で支援します。医療文書の管理や収益サイクルの管理といった面で利便性の高い機能を提供します。2024年1-3月期決算の部門売上高は0.3%増の3億1700万ドル、売上比率は15.7%です。
フィルター製品部門は医療用のフィルターや精製器などを提供します。2024年1-3月期決算の部門売上高は6.1%増の2億4500万ドル、売上比率は12.2%です。