8月の相場急落時 NISA口座はどう動いた?

日本証券業協会が「2024年8月初旬の相場急変局面におけるNISAの動向(証券会社10社対象調査)」について、発表しました。


同調査によると、NISAにおける上場株式(ETF、REIT含む)の売買は、相場急変局面(8月2日~6日)のいずれの日においても、買付額が売却額を上回り、3日間の売却額は買付額の約44%にとどまっていた(売却額:862億円、買付額:1948億円)とされています。


また、投資信託については、8月2日~6日のいずれの日においても、買付額が売付額を上回り、3日間の売却額は買付額の約21%にとどまった(売却額:459億円、買付額:2,145億円)としています。


8月の急落時は、相場の大きな変動により2024年からNISAを始めた人がオルカンなどの投資信託を解約した人が増えたなどの指摘も一部では聞かれましたが、実際の数字を見るかぎりでは、むしろ冷静に買い増していた投資家の存在が目立ちます。


NISA関連では、上記調査のほか、金融庁が実施した「NISA口座の利用状況調査」についても発表されています。


これはNISA口座を取り扱う全金融機関を対象に、NISA口座数およびNISA口座における買い付け額を調べたものです。


同調査によれば、2024年6月末時点でNISA口座数は2427万6789口となり、前回調査時点の2024年3月末時点から4.5%増加しました。


2024年のNISA口座における買い付け額の合計は成長投資枠が7兆9163億0542万円、つみたて投資枠が2兆2178億4210万円の計10兆1341億4752万円となっています。もちろん買い付け後に既に売却したものもあるわけですが、半年で10兆円規模のNISAによる買いが入ったというのは、個人投資家の存在感を示す内容であると感じます。


その10兆円分の買い付けの内訳ですが、上場株式が3兆6594億3972万円(全体に占める割合は36.1%)、投資信託が6兆1285億4532万円(同60.5%)、ETFが2986億5179万円(同2.9%)、REITが475億1069万円(同0.5%)となっています。


過半が投資信託を選んでいるということになりますね。いわゆるオルカンとよばれる全世界株式などの商品が人気なのもうなづけるというものです。


この内訳についてですが、成長投資枠に限った場合では、上場株式が3兆6594億3972万円(同46.2%)、投資信託が3兆9218億6137万円(同49.5%)、ETFが2874億9364万円(同3.6%)、REITが475億1069万円(同0.6%)となり、個別株と投信の差がグッと縮まります。全体の傾向としては投資信託が多いながらも、つみたては投資信託、成長投資では個別株などのように使い分けている層が一定数いることがわかります。



NISA口座数年代別比率(金融庁公表資料よりDZHFR作成)


年代別では、10歳代が220億2374万円(同0.2%)、20歳代が6282億4123万円(同6.2%)、30歳代が1兆6618億1722万円(同16.4%)、40歳代が2兆0397億8935万円(同20.1%)50歳代が2兆1130億3395万円66.5%(同20.9%)、60歳代が1兆8971億1293万円(同18.7%)、70歳代が1兆3298億4328万円(同13.1%)、80歳代以上が4422億8582万円(同4.4%)となりました。


ですが、口座数(上記グラフ)で見た場合は、10歳代が13万6740口座(同0.6%)、20歳代が275万2320口座(同11.3%)、30歳代が424万9508口座(同17.5%)、40歳代が468万0771口座(同19.3%)、50歳代が461万3256口座が(同19.0%)、60歳代が357万5573口座(同14.7%)、70歳代が279万6221口座(同11.5%)、80歳代以上が147万2400口座(同6.1%)と若年層の割合が高くなります。


若い人ほど金融資産が相対的に少なくなるわけなので、買い付け額こそまだまだ少ないようには見えますが、投資に参加する人の割合は着実に増えてきていると感じます。

日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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