人工ダイヤに見る対米投資「第2弾」の可能性

いま「最も注目すべき将来株価は?」と聞かれたら、ここで採用される企業だと考えられます。トランプ大統領が示した相互関税を回避するために日本が約束した5,500億ドル(約84兆円)の対米投資。この最初の投資先を絞り込む協議が大詰めを迎えています。メディアによって第一弾は「人工ダイヤモンド」と報じられ、話題を呼んでいます。


アメリカ優位の覚書の内容

以下の内容が対米投資の覚書の仕組みです。日米投資は両政府で合意したアメリカの企業に対し、日本の金融機関や政府が投融資を行います。投資後、日本側が投資額を回収するまでは日米で収益の50%を分け合い、回収後は米側が9割を握ります。投資側(日本)はリスクヘッジのために高金利の設定が求められる一方、計画に参画するアメリカなどの企業からは低金利が求められます。2026年2月現在、この参画条件がもっとも議論の対象になっていると考えられます。


追加関税の回避にはやむを得なかったか

とはいえ、2025年当時に国民を代表して米国と交渉した交渉団を弱腰だったと定義するのは雑な指摘といえるでしょう。ここで日本側のメリットばかりを優先させれば相当の追加関税が課されていたことは間違いなく、いわば引き換えの人質だったと考えられます。交渉の不公平感を糾弾するなら、一方的に追加関税を出した(出すことができた)アメリカ側に苦情を申し立てるべきでしょう。


ただ今回の交渉は、大きなチャンスが残っています。まずは2026年3月19日に予定する日米首脳会談までに案件を確定させること。そして11月に投開票が行われるアメリカの中間選挙までに、「投資実績」を出すことです。


共同通信が第1号の決定を報道

2月18日、共同通信が第1号案件の決定を報じました。その報道によると、以下の3事業が対象となります。


■第1号案件となる3事業

(1)人工ダイヤモンドの製造能力構築

(2)天然ガス発電

(3)原油輸出の施設整備


この3決定が前述した「日米首脳会談までの合意目標」に該当するのか。ここから詳細を詰める必要があるのかはわかりませんが、ここまでのアメリカ主導の展開とは異なり、時間的なプレッシャーを前提に交渉することができるでしょう。



譲らない日本の交渉姿勢を評価したい

担当大臣の赤沢経済産業相にはとても強か(したたか)な印象を受けます。カウンターパートであるラトニック商務長官と「参加する企業が損してはならないと合言葉のように確認し合っている」と強調しています。3事業のなかの人工ダイヤモンドは半導体などに使われる重要物質で、今後の生成AIの実装社会に欠かせないものとされています。素材としての方向性は異なりますが、期待値としては「次世代のレアアース」と評価されることも多いものです。


「第2弾の将来株価」を狙う

日本はアメリカにとって最大規模の同盟国です。経済的な結びつきも強く、今回の採択3件を持って終わりという話にはならないでしょう。そして「第2弾」があるとすれば、今回とは被らない領域になることは確実でしょう。将来株価を狙う個人投資家としては、その対象が何になるかを想定し、早めに動きそうな個別株・関連投信に買いを入れておくのは、賢い運用方法といえるでしょう。では、何が来るでしょうか。


天然ガス・原油・人工ダイヤモンドが今回の3領域です。引き続き「アメリカ企業に日本が投資する」のか、JV(ジョイント・ベンチャー)向けの構図になるのかはわかりませんが、筆者が考えだした3領域は以下の3つです。


① 素材以外の半導体関連

日本はメモリや半導体のテストなどが得意です。アドバンテスト社の存在感はそれを証明するものでしょう。アドバンテスト社に投資という仕組みにはなりませんが、同社が大きく関わる投融資案件になる可能性はあります。


② 防衛関連

アメリカが日本に自走してほしいもの。と考えれば防衛関連です。ただ今回の投融資はあくまで「アメリカの企業に日本がお金を出す」構図であり、セキュリティ上自国企業の採用が大前提である防衛領域は対象にならない可能性は残ります。ただ、GDP比で防衛費を上昇させなければならないのは日本の課題でもあるため、日本側の交渉術によって採用されるかもしれません。


③ 貿易赤字の解消になるもの

トランプ大統領のなかで優先順位が高いのは、「アメリカと日本のあいだで貿易赤字の発生原因になるもの」です。そのためアメリカ→日本のあいだで主要貿易品目になっているものが対象になる可能性が高いです。具体的には「医薬品・農産品・エネルギー」の3領域です。これらの企業のなかで、日本に向けて輸出力のあるものの関連銘柄を選べば、大型案件にコミットするというニュースで株価が急騰する可能性があります。


もちろん、今回の第1弾の投融資案件のなかで、「不満緩和のために日本企業に華を持たせる」可能性もあります。特に投融資の実行が日本の不手際ではなく、アメリカ側の半ば強制的な関税設定です。相互関税の設定の仕方を見ているとトランプ大統領がそんな人間味?を持っているとは思えませんが、第1弾と第2弾いずれも投資チャンスがあると両頼みで期待して、銘柄選びを具体化させていきましょう。


独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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