BTC、やっと反発…
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は2026年3月5日9時頃、対円では前週(7日前)比で約7.8%高の1141万円台で取引されています。対ドルでは、節目の7万ドル台を回復し、7万2700ドル付近で取引されています。
BTC相場は先週末(2月末)にかけて伸び悩む展開でした。トランプ米政権が対イラン攻撃を実行に移すのではないかとの思惑が燻り、リスクを取ることに慎重なムードが広がっていました。
そういった中、通称ペンタゴンと呼ばれる米国防省の周辺では、ピザレストランで注文が250%も急増したとのX投稿がありました。
大規模な軍事作戦の準備中や軍事行動中、軍事的なリスクが高まったとき、ペンタゴンや周辺の政府機関で職員が長時間勤務になります。職員の食事で大量のピザがデリバリー注文される、ということを注目している人たちがいます。
結局、2月28日(土)の日本時間15時過ぎ(イラン時間9時台)に米国とイスラエルはイランを空爆を開始しました。イラン政権中枢が集まっていたところを狙い、最高指導者のハメネイ師が殺害されました。その後も米・イスラエルはイラン攻撃を継続し、イランからのは報復攻撃が中東諸国に向けて行わています。
中東の地政学リスクの高まりを嫌気し、リスク資産のビットコイン(BTC)は、対イラン攻撃の報道を受けて売りで反応します。対円で987万円前後、対ドルでは6万3000ドル付近まで下落しましたが、一巡後は底堅い動きとなりました。
週明けに原油が高騰し、株式市場に売り圧力が強まるとBTC相場も一旦は伸び悩みます。もっとも4日欧州時間に、米ニューヨークタイムズ紙が「イラン情報省の工作員が米中央情報局(CIA)に戦闘終結に向け対話の用意があるとシグナルを送っていた」と報じると、行き過ぎたリスク警戒感が後退しました。
BTCは買い戻しが優勢となり、対円では約1カ月ぶりの高値となる1163万円台まで上昇。BTCドルも7万4000ドル近辺まで強含みました。先月前半に売り込まれた水準からだと、20%以上の反発幅になります。

※Trading Viewより
フローが見える
米国とイスラエルがイランを攻撃する前に暗号資産市場で話題になっていたのが、米国のジェーン・ストリートという会社のことです。同社は、株式や債券で名の通った世界有数のクオンツ系トレーディング企業で、暗号資産でも「流動性を供給する(売り手と買い手をつなぐ)側」として、存在感がありました。相場観で当てにいくというより、価格差や需給のゆがみを高速でさばき利益を出す、というタイプの会社です。
ジェーン・ストリートの話で外せないのが、資産運用大手ブラックロックのビットコイン現物ETF「IBIT」との関係でしょう。ジェーン・ストリートはIBITの主要なオーソライズド・パーティシパント(AP)とされ、ETFの発行・償還に伴う裁定取引を日常的にこなす立場でした。
ETFは買いが増えれば裏側でビットコインを手当てして口数を増やし、売りが増えればビットコインを放出して口数を減らす必要があります。APはその出入り口を回す役であり、米国市場の取引が始まる時間帯に、暗号資産でも大きめのフローが見れる土壌がある、と言われています。

※Trading Viewより
訴訟後に売りが減った?…
そこに、ジェーン・ストリートをめぐる法的リスクの報道が持ち上がりました。先月下旬、テラフォーム・ラボの破産管財人が、ジェーン・ストリートが非公開情報を使って2022年のテラ/UST崩壊を先回りし、USTを売却して損失回避を図ったと主張して提訴しました。
「暗号資産テラ暴落…」Reuterコラム、2022/5/15
さらに、インドでのデリバティブ指数の操作疑惑に絡む制裁問題が継続していることも、問題視されています。真偽の判断は別として、「市場操作」を連想させる材料が続くと、相場は一気に疑心暗鬼になりがちです。
そういった中で広がったのが、「NY午前10時の売り」でした。昨年から、米国市場が動き出して少ししたあたりで、ビットコインが下がりやすい――そんな時間帯パターンが話題になっていました。ETF、先物、現物の間で裁定やヘッジが出る時間帯でもあります。
そこに「IBITの主要AP」「巨大な取引能力」という肩書きがあるジェーン・ストリートがいる。BTC下落のきっかけに結びつけたくなる人が出ても、不思議ではありません。
その後、ジェーン・ストリートへの憶測が大きくなったあと、「NY午前10時の売り」は目立たなくなりました。注目されたため、大口の執行を散らして分かりづらくする、ということは十分考えられます。
先回りする人たち増えて、利益が出なくなったのかもしれません。あるいは、ETFの資金フローやヘッジ環境が変わって、そもそもその時間帯に出るはずだった機械的な売買が減った可能性もあるでしょう。
日本にいる我々は、米国市場で誰が売っているかは分かりづらいでしょう。ただし、「なぜその時間に動きやすいのか」は考える必要があるかもしれません。ETFの発行・償還、裁定とヘッジの連鎖など、今後、日本で現物ETFが上場されたときに気を付けることです。
外国為替市場でいう「実需取引、仲値取引」を、日本のビットコイン市場でも意識すべきときがもうすぐ来ることになります。




