4年に1度の冬の祭典がイタリア、ミラノの地で盛り上がりました。現地はまずオリンピックを終え、これからパラリンピックの開催を待っています。前時代的という指摘もありますが、スポーツ好きの人間にとっては「選手たちが日の丸を背負って大一番に挑む」時間です。イタリアでの試合時間は日本において朝方とはいえ、リアルタイムで速報が伝えられました。
一方でインターネット、特にSNSが日常生活に定着してから、選手への中傷投稿が問題となっています。テレビに映る代表選手は自分に重なり、思わず「何やってるんだ」「結果を残さないなら消えろ」と発してしまう人も。相手の顔が見えないと、思わず日頃のストレスが向いてしまうものなのでしょうか。長く放置されたこの問題に対し、今回のミラノ・コルティナ五輪はようやく対策に取り掛かった印象があります。
では、スポーツ選手に近いもうひとつ。個人投資家に近い「世界」も変わっていけるのでしょうか。
JOCによるAIを活用した24時間のパトロール
JOC(日本オリンピック委員会)によるパトロールでは「辞めろ・バカ」といった悪意のある悪口のほか、不適切に加工された動画や画像を取り締まりました。約380件の悪意ある投稿があり、数十件の削除が確認されたということです。
場末の飲み屋ではないですが、成績の伴わないスポーツ選手に日頃のうっ憤を重ね合わせ、こき下ろす時代は終わりました。ましてやSNSは簡単に選手本人と繋がり、悪意のある投稿を選手が直接目にすることも増えます。2024年夏のパリ五輪では、選手や関係者に対する誹謗中傷がインターネット上に8500件確認されたという報道もあります。
当然、SNSへの投稿においても名誉棄損罪は成立します。後先考えず、一時の感情にてスポーツ選手をストレスのはけ口とした場合に、発信者に得られるものなどありません。それなのに、誹謗中傷は止みません。ならば対抗できる方法は限られてくるでしょう。

誹謗中傷の残る「上場会社社長への指摘」
スポーツの世界と同じく、誹謗中傷の残るのが上場会社社長への指摘です。「指摘」といえば聞こえはいいですが、インターネットの掲示板では特に株価の低迷している経営者に対して、「いつ辞めるんだ」などの罵詈雑言が広がっています。指摘を発しているのが同じ会社経営で戦っている経営者同士であればまだ理解はできますが、その可能性は決して高くはないでしょう(経営者同士としても許されるものではありませんが)。
なぜ社長への誹謗中傷が止まらないのか。それは「お金をかけている」ためです。上場企業にとって株主からの指摘を受けるのは当然のものであり、それによってさらなる会社の成長を目指します。それでも先般ECサービスの経営陣に対し、著名なアクティビストが名誉毀損を行い、書類送検された事例がありました。
前提として株価の維持、企業の成長は上場企業の経営者の宿命です。だからといって、どのような指摘も許されるというものではありません。ましてや非礼を過ぎる指摘を受け入れる義務はありません。現時点の社長への指摘は、この部分をコントロールできていないように見受けられます。
厳罰化のタイミングに乗り遅れるリスク
従来のような株主総会や街角の居酒屋という状況からは異なり、いま誹謗中傷を止められない人にはSNSという「武器」があります。今後どこかで、社長に対する過度な中傷は厳罰化を迎えていくことでしょう。自分には権限があると勘違いしたことで、せっかく投資をして貯めたお金が賠償用途となっていったり、数日にして社会的な信用を失ったりするリスクがあります。
これから証券取引所の上場維持条件が厳しくなり、いわゆる「格落ち」の市場移動や、企業によっては上場廃止となる事例も増えていくでしょう。安全な場所から「あいつは経営者としてなっていない」という指摘を一心に受けていくことになります。ただ、会社のトップを担った人材は人口の減り続ける日本という国にとって貴重な人材です。誰にも侵害されない場所から誹謗中傷を繰り返すだけの人が増えれば増えるほど、この国は活力を失っていくでしょう。早急に、今回の五輪のような対策強化を望みます。
2026年の冬季五輪は、スポーツ選手への誹謗中傷は時代遅れで「してはいけないもの」という認識が広まる転換点になったのかもしれません。五輪が時代の流れを受け、社会変革のきっかけになってきたように。社長への罵詈雑言もAIによって管理され、逸脱した指摘は糾弾されるような世の中が急に到来するかもしれません。それは起業家の増加を目指す国にとっては、望むべきことです。
世代によってSNSの使い方や愛用するツールは変わります。わたしたちはどの世界においても今一度、その発言は誰かを貶めることはないのか、考えてから投稿ボタンを押すことを意識すべきだと思います。



