2023年IPOで初値買いが大成功した3銘柄とは?

IPOでは公開価格で購入できる投資家は限られます。しかし、初値(上場後に最初に売買が成立した値段)で買うことはそれほど難しくありません。今回は2023年IPOで初値買いが大成功した(初値で買っても大儲けできている)3銘柄を紹介したいと思います。

なお、ランキングは2024年10月2日の終値をもとに算出し、チャートは10月2日までのデータを反映しています。



初値比上昇率1位 クオリプス(東証グロース:4894)

大阪大学発再生医療ベンチャーであるクオリプスは、2023年6月27日に東京証券取引所グロース市場に上場しました。初値は1680円で2024年10月2日の終値は8890円と約5.3倍となっています。


クオリプスは、iPS細胞由来の心筋細胞シートをはじめとする再生医療等製品の開発・商業化をめざしています。なお、iPS細胞由来心筋細胞シートの承認申請時期については、当初は「早くて2024年6月、遅くとも年内」としていましたが、6月21日に申請資料のデータの一部更新、追加資料の作成などの業務を追加で行うため、承認申請時期を、「年内」に変更しています。


2024年10月3日時点でiPS細胞由来心筋細胞シートの承認申請時期について年内というアナウンスに変更はありません。赤字のバイオベンチャーのクオリプスですが、iPS細胞由来心筋細胞シートへの期待もあり株価は堅調に推移しています。



【クオリプスの週足チャート】




初値比上昇率2位 Arent(東証グロース:5254)

建設・プラント向けDXコンサルであるArentは、2023年3月28日に東京証券取引所グロース市場に上場しました。初値は1802円で2024年10月2日の終値は6750円と約3.7倍となっています。


Arentは、主に建設業界やプラントエンジニアリング業界の大手企業に対し、DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務効率化や生産性向上を実現するためのコンサルティングやシステム開発・販売を展開しています。


業績は堅調であり、24.6期(前期)の連結営業利益は12.4億円(前の期比74.6%増)となりました。これは、プロダクト共創開発セグメントが、建設業界からの大型の受託開発の受注などにより、堅調に推移したことなどが要因です。

25.6期(今期)の連結営業利益予想は17.1億円(前期比38.4%増)と大幅な増益を見込んでおり、業績拡大期待から株価は堅調に推移しています。



【Arentの週足チャート】



初値比上昇率3位 GENDA(東証グロース上場:9166)

「GiGO」ブランドを主としたアミューズメント施設の運営などを行うGENDAは、2023年7月28日に東京証券取引所グロース市場に上場しました。初値は818.5円(分割考慮前:1637円)で2024年10月2日の終値は2745円と約3.4倍となっています。


GENDAはM&Aを軸にした高成長を遂げていましたが、2022年10月を最後に買収を停止。これは上場準備本格化のためと考えられます。ただ、これが影響したのか、上場時点における会社予想の24.1期の営業利益は43億円(前期比1.3%増)と微増でした。上場時点の業績予想が物足りなく、成長性への懸念がでたこともあり初値は公開価格を下回りました。


上場後は直ちに買収を再開させる考えとしていましたが、有言実行となりました。2023年9月にレモネードの製造・販売を手がけるレモネード・レモニカを子会社化すると発表。11月にはポップコーン専門店「ヒルバレー」の運営を行う日本ポップコーン(東京都目黒区)の全株式を保有するINP合同会社(同)を連結子会社化しました。

さらに、12月にはアミューズメント施設向けにプライズゲームにおけるプライズ(景品)の企画や販売事業を展開する、フクヤホールディングスの完全子会社と、アミューズメント施設事業などを行うプレビ子会社化(孫会社化)を発表しました。


このように順調にM&A を進めたこともあり、2024年3月に発表した24.1期の営業利益は53.7億円(前の期比26.5%増)と上場時点の予想を大きく上回りました。なお、25.1期の営業利益予想は70.0億円(前期比30.3%増)としており、堅調な業績が続く見込みです。


2024年6月には、米国で約8000カ所を運営する米ナショナル・エンターテインメント・ネットワークを子会社すると発表。海外事業の伸長への期待もあり、株価は堅調に推移しています。



【GENDAの週足チャート】



最後に

この3銘柄を初値で買っておけばよかったと思いますが、初値買いはいつも成功するものではありません。とくクオリプスのようなバイオベンチャーは上場後の株価推移が読みづらいので注意が必要です。


ただ、ArentとGENDAについては、チャンスがあったと考えます。Arentについては、千代田化工建設と折半出資したジョイントベンチャーPlantStreamとの取引のために損益計算書が難解になっており、評価が難しかったという側面がありました。

GENDAについては、上述した通り、上場準備本格化でM&Aを停止していたことが、成長性への懸念材料となっていました。


このように上場時点でなにかしらのマイナス要因がある場合は、それを分析してみるのが良いでしょう。上場後解消されるようであれば、大化けを狙えるかもしれません。簡単ではありませんが、その見返りは大きいと考えます。



日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

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