2025年は「防災庁」に注目したい

石破茂首相は12月24日の記者会見で、2026(令和8)年の創設を目指す防災庁の在り方を巡り、出先機関の地方設置を検討する考えを示しました。


防災庁は災害時の司令塔機能を担います。2011年の東日本大震災や、記憶に新しい2024年正月の能登半島地震でも、災害対策の司令塔機能は大きな問題となりました。防災庁を巡る議論は、2025年年明けにも初会合を開き、夏を目途に施策の方向性をとりまとめる方針です。


防災庁の目的は被災地・被災者支援の横断化

日本はこれまで、さまざまな災害に襲われてきました。そして、明日発生しても不思議では無い災害をいくつも列挙することができます。代表的なのが下記資料にも記載してある、太平洋広域を襲うと予測されている南海トラフ巨大地震です。ほかの災害をも列挙したこの資料は、2024年12月20日に開催された「第1回防災立国推進閣僚会議」の議事録に記載されています。


 

引用:防災立国推進閣僚会議


現在は防災庁設置に向け、各省庁の所管業務を集めた横断的会議が進められています。防災庁設置の前段階として、同資料では6分野における「災害対策関連法制の見直しの方向性」が列挙されています。


災害対策関連法制の見直し


6つの分野を見ていきましょう。


①国による災害対応の強化

現在災害が発生すると、国と地方の二頭体制となります。自衛隊をはじめとした国の機関は地方自治体の要請を踏まえて動き始める仕組みです。これを「国による地方自治体の応援強化」という後方支援の強化と、「地方自治体からの応援を待たず、先手で支援」という機動力の増加を試みます。


②福祉的支援等の充実

高齢者や在宅支援者などの多様なニーズに対応するため、救助の種類に「福祉サービス」を追加します。そのうえで支援につなげるための避難所の運営状況を把握します。


③ボランティア団体との連携

ボランティア活動に対して、NPO・ボランティア団体等の国の事前登録制度を創設します。登録団体は災害時に自治体等と連携し、避難所運営や炊き出し、被災者からの相談対応などを実施します。


④広域避難への対応

広域避難における避難元および避難先の情報連携の住真、広域避難者への情報提供の充実。


⑤防災DXと備蓄の推進

デジタル技術を活用し、物資・資材・被災者のニーズや状況をきめ細かく把握し、

被災者に対する情報発信を強化。


⑥インフラ復旧・復興の迅速化

水道復旧工事について、自治体に変わって技術を要する団体による工事の辞し。水道本管復旧のための土地の立ち入り、液状化対策の推進。


これらの施策はこれまでも各省庁によって進められてきました。ただ自治体による主導のため、被災地によっては馬力が不足していたり、国との連携が上手くいかなかったりという実情があったようです。またボランティア団体や防災DXは、国が主導しなければ本格的には進まない性格のものでもあります。


このなかから防災庁の所管と、優先順位が定まっていくと考えられます。冒頭の石破総理による「出先機関の地方設置」は、最大的に対応するならば、意思決定機関が東京にある蓋然性はないという判断のもとでの発言と考えられます。オンラインの世のなか、能登と東京の二元体制はインフラ上、従来ほど難しいものではないと考えられます。



ここにどのような民間資力が関わっていくか

当メディアは個別銘柄の推進のため、防災庁の設置によって注目される銘柄があるという見立て、もしくは防災産業全体が活性化されるという予測は否定しません。筆者も最初にこの話を聞いたとき、「これで株価の上昇する銘柄は何だろう」とまず考えました。


ただ日本を巡る防災体制の整備は、個別銘柄推進のステージは無いようにも感じます。2025年の防災庁設置を受けて、特定の業種で連合を組んだり、業界団体がタッグを組むようなスピード感に期待しています。国×民間資力の推進という表現でしょうか。


大雪が降った際、立ち往生した車にヤマザキパンが食料を配る映像が感動を呼ぶことがあります。あの対応を国、もしくは国の資力を受けた自治体で即座に行うことができたらどうでしょうか。


現段階で見える防災庁の形は、まず発生後の早急な対応に期待するものです。それが生活インフラなのか、水道インフラなのか、福祉関連なのかによって現在は担当官庁が変わります。まずはそこから。民間の力を組み合わせながら、前に進んでいくことを祈念します。


ともすればこれだけ複合的な現状を一元化する取り組みです。国家組織の再編ではなく民間企業における取り組みだったとしても、短期間で上手くいくことばかりではありません。さまざまな既得権益も絡んでくるでしょう。だからこそ我々は議論の公開性を求め、最善の形が実現されるよう支援したいものですね。


独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

工藤 崇の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております