フジテレビが苦境に立たされています。タレントを巡る問題で視聴者の信用を無くし、また問題に対する対応の悪さでスポンサーからのCM出稿停止を招きました。
1月27日の夕方には経営トップが大々的な状況説明会見を開きましたが、不十分な説明に終わった印象は否めません。さぞかし個人投資家も評価減に悩んでいるはず…と思えば、不思議と株価は落ちていません。この背景には、テレビ業界を悩ませるPBRの影響があります。
フジテレビの株価は回復
まずはじめに断ると、放送事業としてのフジテレビは上場してはいません(この文章は後ほど本記事のポイントとなります)。上場しているのは親会社であるフジ・メディア・ホールディングスです。同社の株価推移を見ていきましょう。
今回の問題が報じられた2024年の年末から、一時期株価が低迷するも、短期マネーの流入等により急激に上昇していることがわかります。株式市場での出来高も多く、まるで事業が好調で勢いに乗る企業の株価のようです。
フジテレビの株価を上げる「PBR」
PBRは「株価純資産倍率」といい、株価を1株当たり純資産(EPS)で割ることで算出することができます。PERやPEG(ペグ)レシオと並んで、その株価が割高か、それとも割安かを判断する指標の1つです。PRBは1を上回ると割高、1を下回ると割安と判断されます。
フジテレビのPBRを確認するため、決算書を見てみましょう。
最新の通期におけるPBRは0.45倍であり、一般的な基準からはかなり低い数字です。なぜ資産の割に株価は低いのか。この答えは、次のページから導くことができます。
フジテレビの代表事業である「メディア・コンテンツ事業」は営業利益ベースで全体の43%です。このなかにはレコード会社であるポニーキャニオンも含まれているため、純粋にスポンサー収入による事業依存度は更に低下します。
もう半分はサンケイビルなどの不動産事業、そしてグランビスタなどのホテル・リゾート関連事業です。
テレビ局のPBRが低いのはフジに限った話ではありません。TBSや日本テレビもみんなPBRが1を割っています。数年前に日テレがフィットネスクラブであるティップネスを買収したのは、有形資産を増やし、PBRを上げることも大きな目的だったと見られます。一方でテレビ局共通のPBRの低さは、特に外国株主から低評価を受けてきました。
不動産業の拡大でPBRを上げる可能性
同社の株価上昇には、2つの要因があるとみられます。
会社の自浄に期待する
一連の問題で、現経営陣の一斉辞任は避けられないものと見られます。そのうえでスポンサーが戻れば、収益も回復へと向かっていくことでしょう。ただ以前より同社は1人の取締役が「院政」を引いているとも指摘され、経営陣の刷新がどこまで効果があるのか疑問視されます(実際に1月27日にフジテレビ会長と社長は辞任)。
PBRは「解散価値」
インターネットの一部では「フジテレビがこのまま倒産してしまえば資産が株主への分配となり、儲かることになる」という意見が見られました。また、2025年6月に実施される株主総会の場での発言権を得るため、株を購入しているという見方もあります。
同社の経営についてはスポンサーによる広告収入が元通りになっても、不動産事業が維持できれば問題無いという見立てもあります。とはいえ回復するまでの時間によっては、大規模な放送事業の縮小は避けられないものです。
個人投資家はどう動くべきか
そのような状況下で、個人投資家はフジテレビの株を購入すべきでしょうか。
さまざまな考え方がありますが、純粋に事業に対する期待感ではない以上、購入は危険だと考えられます。スポンサーの復活や第三者委員会の発表に向けてスイングトレード(2週間から1カ月の売買を想定)する戦略もありますが、思わぬネガティブなニュースが流れる可能性があります。また問題が報じられた12月下旬にも一時的に上昇したあとに暴落しており、今回も同様の経過をたどる危険性もあります。
また、今回分析を試みましたが、一方で仕手株のような性格も否定できないものです。合わせて今回の発端となったアメリカの投資ファンドの次なる一手も不透明なものです。
とはいえ世の中が今回のような問題に真摯に向き合っているなかで、本来それを追求する立場であるテレビメディアが当事者となったことは事実です。また、27日現在、複数の記者会見が行われましたが、世論が納得したとはいえないものです。
27日の記者会見の前の同社株は、前日比で65円高となり、株価の上昇は継続しました。同社が今回の問題を解決し、影響のあるテレビメディアとして、再スタートを切ることを祈念します。
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