「院政」が終わるのはいつか

2025年3月27日に実施されたフジ・メディア・ホールディングスの取締役会で、いち取締役ながらも社内、そしてメディア業界に大きな影響力を持つ取締役が退任しました。変革を期待して同株を保有していた方は、Exitを検討するタイミングです。また、この報道を受け経済メディアなどでは「院政が終わった」と特集が組まれています。


会社法の制度上は確かにその通りですが、人心はそれほどすぐに離れるものでしょうか。個人投資家が個別株に投資をするうえで留意したい「院政のあと」について考えます。



院政について考察するときの「目白詣で」

院政といえば政治の世界です。筆者の年代(40代)で院政と聞いたとき、まず頭に思い浮かべるのが田中角栄元総理です。当時、自民党最大派閥である田中派を率いた角栄氏は1974年に総理を辞職し、2年後の1976年にはロッキード事件で逮捕され、無所属となるも、その後の日本政治においてキャスティングボードを握り続けます。当時の人々は角栄氏に意思決定を求める様子を、自宅にある目白に詣でることから「目白の闇将軍」と例えました。


さらに歴史を振り返ると、明治維新後の元老時代から昭和期にかけて、神奈川県の大磯周辺には元老の邸宅が並び、現任の政治家は意思決定の承認、もしくは意思決定そのものを求めて足しげく通いました。権力を手放さなかった政治家は今日の我々が教科書で見る歴史の偉人でもあり、見る方向からの印象が変わります。


意思決定は取締役会だけではない

経済界においても個別企業においても、意思決定は取締役会だけで行われるものではありません。「その人によって権限を持った後継者」が、ことあるごとに先人の意思を確認し、もしくは自発的に尊重することによって、事実上の院政を継続します。記者がどれだけ取締役会の前で聞き耳を立てても、わかることのない事実です。


一方で院政によって会社は変わらないと評価されれば、個人投資家の所有している株の評価額は毀損していきます。私たちはそのような「表面上だけのすげ替え」を、どのように判断すべきなのでしょうか。


院政を疑うからこそ「決算書」を読み解きたい

大きめの人事があったとき、院政が継続するか否か、AIによる判定機能などがあれば重宝するかもしれません。もちろん現実的には不可能です。可能な方法として、決算書の読み時を推奨します。特に表向きのパラダイムシフトがあったときの6カ月後のメッセージ、つまり2期あとの四半期報を詳しくチェックするようにしましょう。



「2期あとの四半期報」の理由

人事決議などがあったあとの最初の四半期報は、まだ混乱が収まっていない可能性が高いです。株価の推移(概ね下落からの回復)や、社内の再整備にリソースが費やされます。


対して2期あとの四半期報は、組織が再構築し、ある程度の目途が見えてくるものです。その時の役員構成や、主力事業の変遷、お金の使い方や株主の説明などに、ある程度新傾向が見えてくるものです。そのときに退任したあとの人間を必要以上に阿っていると判断されれば、期待値は低下してしまうように思えます。


外国の「モノ言う株主」からの影響や、そもそも院政の当事者が亡くなってしまっているケースもあり、一概にはいえません。ただ株価が低迷したままで、結局「〇〇の治世から抜け出せなかった」となる前に、ひとつ見方としたい基準をお伝えしました。


四半期のほかにも、最近は経済メディアなどによる洞察の深い記事が出されるようになりました。院政に対し、資本主義国家として健全な姿勢といえるでしょう(行き過ぎの攻撃をしない限りは)。


2025年の3月は各企業の「対応力」が求められる

そして2025年に入り、トランプ大統領の関税政策で米株を中心に下落しています。現在運用している証券口座はそのままに、別の原資を使って方向性の異なるアロケーションを組んでいる方も多いでしょう。そのときに2週間から1カ月前後の時期感で状況の変わる「スイングトレード」は有望な手法です。そして個別株においてスイングトレードを決めるのは、上方・下方修正と、「大きめの人事」です。



3月末を迎えても、4月の頭に実行されるはずの「相互関税」の全容が見えてきません。不透明感が大きければ、会社にとってもそれまでの執行体制を変えるのは不安です。表向きだけ変革したことにして、実際には影響力を継続する。そのような小手先のPRと、厳しい眼を持つ株主や機関投資家が見定めています。そして、「新NISAの波に乗ってS&Pやオルカンへの投資をはじめたけれど、投資はやはり難しい」と熱を失ってきている投資初心者がいます。


ときは3月です。通期決算を発表すると同時に、6月の総会を目途にあらたな人事を発表する企業も目立ちます。「業績も堅調で、世の中にも求められているのに、どうも人事に閉塞感を感じる」個別株が変革するタイミングを拾っていきたいものです。

独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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