S&P500は米国の主要産業を代表する500社で構成される株価指数です。構成銘柄に採用されるには米国企業であることが前提で、それは米国内での売上高や固定資産、本社所在地などで判断されます。
このほかの要件には◇過去4四半期の純損益の合計が黒字で、直近の四半期の純損益が黒字◇グローバル産業分類標準(GICS)の分類に基づく産業バランスが適切――などがあります。また、時価総額の基準は2025年1月に「205億ドル以上」となり、それまでの「180億ドル以上」から一段とハードルが上がっています。
今回は2025年3月下旬から晴れてS&P500に加わったドアダッシュ(DASH)とエクスパンド・エナジー(EXE)に加え、2024年12月にS&P500に採用されたワークデイ(WDAY)の3銘柄をご紹介します。
ドアダッシュ、フードデリバリーの最大手
ドアダッシュはフードデリバリー事業を展開しています。米国では60%を超える市場シェアを握る圧倒的な最大手で、ウーバー・テクノロジーズ(UBER)が手掛ける2位のウーバーイーツを大きく引き離しています。
レストランや小売店と消費者を結びつけるオンラインのマーケットプレイスを運営しています。消費者がアプリやウェブサイト上にあるマーケットプレイスで料理や日用品を注文すると、店舗側は料理や商品を用意します。ダッシャーと呼ばれる配達員が店舗で受け取り、配達する仕組みです。
手数料は消費者側と店舗側の双方から受け取ります。ダッシャーに手数料の一部を支払い、残りがドアダッシュの実際の収入になります。2024年12月の月間アクティブユーザー数は約4200万人、「ダッシュパス」や「ウォルトプラス」と呼ばれるメンバーシップの会員数は2200万人に上ります。
事業は米国を中心に30カ国以上で手掛けています。「ドアダッシュ」ブランドが主軸で、2022年にフィンランドに本社を置く同業のウォルトを買収して業容を拡大しましたが、2024年12月期の売上高に占める米国事業の割合が88%に達するなど依然として米国事業が中核です。
ドアダッシュは、消費者側と店舗側の双方から手数料を受け取るマーケットプレイス事業のほか、店舗側を支援するコマース・プラットフォーム事業も手掛けています。店舗側のブランドで配達を請け負うホワイトラベル・デリバリーがこの事業の主な収益源です。
企業統合・買収(M&A)にも積極的です。2022年にウォルトを買収したのに続き、2025年1月にはそのウェルトがルーマニアの同業のTazzを買収し、欧州事業の足場を一段と強固にしています。
エクスパンド・エナジー、シェールガス開発に強み
エクスパンド・エナジーは天然ガスや石油、天然ガス液(液化炭化水素)の探査・生産を手掛けています。元の社名はチェサピーク・エナジーで、サウスウエスタン・エナジーとの合併完了に伴い、2024年10月に現在の社名に変更しました。
独立系では天然ガス生産の国内最大手で、特にシェールガス開発に強みを持ちます。買収や探査、開発、生産で重点を置くのは、◇ルイジアナ州のヘインズビルとボージャーのシェール層◇ペンシルバニア州マーセラスのシェール層◇オハイオ州とウエストバージニア州のマーセラスとユティカのシェール層――の3カ所です。
探査・生産中のガス井と油井は2024年末時点で約8000カ所に上ります。このうち自社がオペレーターとして開発・生産活動の主導が可能なワーキング・インタレストの権益を持つのが6200カ所で、ほぼすべてがガス井です。実際には5500カ所のガス井でオペレーターとして開発・生産を手掛けています。
2024年末時点の推定埋蔵量は、天然ガスが16兆9240億立方フィート、石油が6790万バレル、天然ガス液が5億7810万バレルです。天然ガス換算で20兆8000億立方フィートとなります。
2024年12月期の生産実績は天然ガスが4.3%増の1兆3210億立方フィート、石油が84.4%減の120万バレル、天然ガス液が2.1倍の780万バレルでした。
ワークデイ、人材・資金管理プラットフォームを提供
ワークデイは法人向けに人材や資金を管理するクラウドベースのプラットフォームを提供しています。「ワークデイ人工知能(AI)」と呼ぶAIを搭載したプラットフォームを通じ、労働生産性の向上や財務管理の強化に向けた取り組みを支援します。
プラットフォームに組み込む主なアプリケーションのうち「財務管理」では売り掛けや買い掛けなど主要取引の監視やリアルタイムでの財務状況の把握などを通じ、内部統制の機能を高めます。また、「支出管理」は調達や発注などの支出を管理するツールで、サプライヤーの選定や契約の合理化に向けた取り組みを支援します。
「人材管理」は、従業員の入社から退職までのライフサイクルを管理するツールです。雇用状態、給与、訓練、経験などを把握できる仕組みを使い、能力やスキルを生かすことも容易になります。
「事業計画」では、財務、人材、販売、営業などのデータを活用し、事業計画の策定を支援します。データに基づく経営判断や状況の変化への迅速な対処も可能になるようです。
ワークデイは1万1000を超える法人にサービスを提供しています。特に中堅企業や大企業への提供に強みを持ち、フォーチュン500に選定される米国の大企業の60%以上がワークデイのサービスを利用しています。
ワークデイは企業買収・統合(M&A)にも積極的で、2024年には人材獲得や発掘のAIソリューションを提供するハイヤードスコアを買収しました。企業買収を通じ、「人材管理」の分野を強化する方針です。