マグニフィセント・セブンはアップル、テスラが負け組、メタ、マイクロソフトが勝ち組

先週は主要3指数がそろって反落 S&P500が再び年初来でマイナス圏


2025年の米国株式市場はトランプ米大統領の貿易政策を受けて第2四半期以降ボラティリティが高まりましたが、トランプ大統領が4月に発表した多くの国を対象とした「相互関税」をその後90日間延期したことや、中国とも貿易交渉を開始したことなどで主要3指数はおおむね昨年末水準を回復しました。


S&P500は2月19日に昨年末から4.46%高の6144.15ポイントまで上昇し、史上最高値を更新後、4月8日に15.28%安の4982.77ポイントまで下落し、高値から約19%安と急落しましたが、5月19日には年初来で1.39%高とプラス圏を回復。先週末5月23日は年初来で1.34%安と再びマイナス圏で終了しました。

ダウ平均も5月16日にプラス圏を回復後、2.21%安で終了し、ハイテク株主体のナスダック総合は5月19日に年初来下落率を0.49%に縮小後、2.97%安で先週末の取引を終えました。

 


マグニフィセント・セブンはアップル、テスラが負け組、メタ、マイクロソフトが勝ち組


こうしたなか、2023年からの相場上昇をけん引したマグニフィセント・セブン(アップル、マイクロソフト、エヌビディア、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ、テスラ)の2025年のパフォーマンスは高安まちまちとなりました。


マグニフィセント・セブンの先週末時点の年初来騰落率をみると、メタ・プラットフォームズが7.10%高、マイクロソフトが6.80%高となり、年初来で1-3%安となった主要3指数をアウトパフォームしています。エヌビディアは2.23%安となり、S&P500、ダウ平均をわずかにアンダーパフォームしましたが、ナスダック総合をアウトパフォームしています。


一方、2023年に48.18%高、2024年に30.07%高となったアップルが年初来で22.02%安と圧倒的な負け組となりました。2023年と2024年にそれぞれ101.72%高、62.52%高と急伸したテスも15.97%安となり、2023年、2024年の2年間で114.55%高となったアルファベットは11.00%安となりました。2023年に80.88%高、2024年に44.39%高となったアマゾン・ドット・コムは8.39%安となりました。


マグニフィセント・セブンの中で上昇率トップのメタ・プラットフォームズは4月中旬に年初来で17%超下落しましたが、4月末に発表された2025年第1四半期(1-3月)決算が市場予想を上回る増収増益となったことが好感されたほか、AI用データセンターへの投資を強化するために、通期の設備投資額を従来の600億-650億ドルから640億-720億ドルに増額したことも成長期待を高めました。

上昇率2位のマイクロソフトも4月下旬に年初来で14.80%安まで下落しましたが、4月末に発表した2025年度第3四半期(1-3月)決算が市場予想を上回る増収増益となったほか、第4四半期の売上高見通しとクラウドのAzure部門の売上高見通しがともに市場予想を上回ったことも好感され株価は大幅に反発しました。


一方、マグニフィセント・セブンの中で下落率トップとなったアップルは4月上旬に年初来で31%超下落後、5月中旬に年初来で約15%安の水準まで値を戻しましたが、トランプ米大統領が先週末、国外で生産され米国で販売されるiPhoneについては、アップルが25%の関税を払うべきだと自身のSNSに投稿したことが嫌気され再び下落幅を拡大しました。

下落率2位のテスラはトランプ政権への関与が理由の不買運動や、米中貿易戦争の激化懸念が嫌気され4月上旬に年初来で45%超急落しましたが、マスク最高経営責任者(CEO)がテスラ事業に専念する意向を示したことや、米中摩擦緩和期待を追い風に反発し下落幅を縮小しました。しかし、英国とドイツでの4月の販売が2年ぶりの低水準となったことが重しとなり、反発は限定的でした。

 


米国最大年金カルパースがアップルを売却し、メタ、AMD、マクドナルドを買い増し


アップルの株価は「相互関税」や対中関係悪化が嫌気され4月上旬から逆風が強まっていますが、一部の投資家は年初からアップル株へのエクスポージャーを引き下げていました。


米国最大の年金基金で、5400億ドル以上の運用資産残高を持つカリフォルニア州公務員退職年金制度(通称:Calpers「カルパース」)は、第1四半期にアップル株を売却する一方、メタ・プラットフォームズやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、マクドナルドなどを追加購入しました。


証券取引委員会(SEC)に提出された開示書類では、カルパースは第1四半期にアップル株を510万株売却し、第1四半期末の保有株数は3,470万株(約77億ドル)となりました。

一方、カルパースは第1四半期にメタ株を57万9150株追加購入し、保有株数は550万株(約32億ドル)となりました。また、カルパースは第1四半期にAMD株を32万5180株追加購入し、保有株数は330万株となり、マクドナルド株を49万4290株追加購入し、保有株数が350万株となりました。


カルパースは経済誌のインタビューで、投資はインデックス指向であり、体系的かつ定量的な投資戦略により最適化されており、特定の期間の出来事に左右されるものではないとコメントし、個々の保有資産や取引についてはコメントをしないとしました。


カルパースが第1四半期に保有比率を引き下げたアップルは4月1日から5月23日までに12.09%下落し、S&P500の3.40%高を大幅にアンダーパフォームしました。

一方、メタ株は同期間に8.80%高となり、AMDも7.37%高とともにS&P500をアウトパフォームしましたが、マクドナルドは0.70%の上昇にとどまりました。





国際金融情報部 アナリスト

羽土 美幸

富山県出身。国内証券で株式等の営業、仏系証券でポートフォリオ分析、転換社債、エクイティ・デリバティブの分析・開発・営業などを担当。 2014年からDZHフィナンシャルリサーチにおいて米国株式、金融市場レポート編集、海外ETF業務を担当。

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