オラクルが上場来高値を更新

先週は主要3指数がそろって3週ぶりに反落 中東の地政学リスクの高まりを嫌気


先週の米国株式市場ではダウ平均が1.32%安、S&P500が0.39%安、ナスダック総合が0.63%安となり、主要3指数がそろって3週ぶりに反落しました。


水曜日に発表された米5月消費者物価指数(CPI)や木曜日発表の米5月生産者物価指数(PPI)が予想を下回る伸びにとどまったことでトランプ関税によるインフレ懸念が和らいだことや、予想を上回る決算や強いAI需要見通しを発表したオラクルが急伸し、AI関連株の上昇をけん引したことで、木曜日までおおむね堅調に推移しました。

しかし、イスラエルがイランの核施設や軍事施設などを攻撃し、イランが報復としてイスラエルにミサイルで反撃したことで中東の地政学リスクが嫌気され週末金曜日に大幅反落しました。S&P500は木曜日に2月に付けた史上最高値まで1.61%に迫りましたが、最高値から2.72%安で週の取引を終えました。


センチメントも悪化しました。投資家の不安心理を示すVIX指数は水曜日に一時16.23ポイントと2月21日以来の水準まで低下しましたが、週末金曜日は20.82ポイントで終了し、5月26日以来の高水準となりました。

 

オラクルが上場来高値を更新 予想を上回る増収増益決算や強い2026年度見通しを好感


地政学リスクの高まりを受けて主要3指数がそろって下落する中、好決算を発表したオラクルが大幅高となりました。


ソフトウェア大手オラクル(ORCL)が6月11日引け後に発表した2025年度第4四半期(3~5月)決算は、売上高が前年同期比11.3%増の159億300万ドルとなり市場予想の155億8800万ドルを上回りました。純利益が同5.9%増の48億8100万ドルとなり、調整後の一株当たり利益は1.70ドルと市場予想の1.64ドルを上回りました。


2026年度通期(2025年6月~2026年5月)については、クラウド事業全体の成長率を前年比40%増とし、2025年度の24%から成長率見通しを大幅に引き上げました。

そのうちクラウド・インフラ関連売上高はAI需要の増加を追い風に前年比70%増加するとの見通しを示し、2025年度の同50%増から伸びが加速するとしました。


オラクルのサフラ・キャッツ最高経営責任者(CEO)は、「2025年度は非常に好調な年でしたが、2026年度は売上高成長率が飛躍的に高まるため、さらなる好調を確信しています」と自信を示しました。


予想を上回る増収増益決算や強い2026年度見通しを受けて株価は12日の取引で一時、前日比26.09ドル高(+14.79%)の202.47ドルまで上昇し、23.48ドル高(+13.31%)の199.86ドルで終了。2024年12月9日以来、約7カ月ぶりに上場来高値を更新しました。

週末13日の取引でも15.36ドル高(+7.69%)の215.22ドルと大幅に続伸し、週間では23.68%高と大幅に3週続伸となりました。年初来では29.15%高となりました。

 


アドビが大幅安 年度後半の減速見通しを嫌気


オラクルが急伸した一方、ソフトウェア大手アドビは予想を上回る決算を発表したものの、株価は売りに押されました。


アドビ(ADBE)が6月12日引け後に発表した2025年度第2四半期(3~5月)決算は、売上高が前年同期比10.6%増の58億7300万ドルとなり市場予想の57億9000万ドルを上回りました。純利益が同7.3%増の21億7100万ドルとなり、調整後の一株当たり利益(EPS)は5.06ドルと市場予想の4.96ドルを上回りました。投資家が注目するデジタル・エクスペリエンス・サブスクリプション収入は11%増の13.3億ドルとなりました。


2025年度通期の見通しについては、売上高を235億~236億ドルとし、従来の233億~235.5億ドルから引き上げ、調整後EPS見通しも従来の4.95~5.00ドルから5.15~5.20ドルに引き上げました。

しかし、デジタル・エクスペリエンス・サブスクリプション収入を53.75億~54.25億ドルとし、従来見通しを据え置いたことで年度後半の減速を示唆する結果となりました。


株価は13日の取引で一時、前日比29.92ドル安(-7.23%)の383.76ドルまで下落し、22.00ドル安(-5.32%)の391.68ドルで終了。週間では6.05%安と3週ぶりに反落し、年初来では11.92%安となりました。



国際金融情報部 アナリスト

羽土 美幸

富山県出身。国内証券で株式等の営業、仏系証券でポートフォリオ分析、転換社債、エクイティ・デリバティブの分析・開発・営業などを担当。 2014年からDZHフィナンシャルリサーチにおいて米国株式、金融市場レポート編集、海外ETF業務を担当。

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