米国株 8月月間回顧 金融引き締め長期化見通しが重し

8月はダウ平均、S&P500、ナスダック総合がそろって大幅反落


8月の米国市場では、ダウ平均が4.1%安、S&P500が4.2%安、ナスダック総合が4.6%安とそろって大幅反落となりました。


米国の7月消費者物価指数(CPI)や7月生産者物価指数(PPI)などが軒並み予想を下回ったことでインフレのピークアウト期待が高まり、中旬までおおむね堅調に推移しました。


しかし、大手小売株の業績悪化をきっかけに反落すると、バーキン米リッチモンド連銀総裁など米金融当局高官から金融引き締めに積極的な発言が相次いだことで売りが強まりました。

下旬はパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長がカンザスシティー連銀の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)でインフレ抑制に強い姿勢を示したほか、メスター米クリーブランド連銀総裁が、2023年中の利下げはないとの見方を明確に示したことなどで金融引き締め策の長期化見通しが強まり、主要3指数は下落幅を拡大しました。


S&P500は終値で6月16日の安値3666.77ポイントから8月16日の4305.20ポイントまで17.4%高と大幅に反発しましたが、安値から7.9%高の3955.00ポイントで8月の取引を終え、上昇幅の約半分を失いました。



決算発表銘柄は高安まちまち


後半戦を迎えた米企業の第2四半期決算発表は、S&P500採用の216銘柄が発表を終え、このうち79%の173銘柄で調整後一株当たり利益がアナリストの予想を上回りました。


決算や見通しが好感されたクリーン・エネルギーのコンステレーション・エナジー、デジタル・トランスフォーメーション・サービスのEPAMシステムズが月間で20%超急伸し、エネルギーのデボン・エナジー、コノコ・フィリップスなども2桁高となりました。このほか、ペイパル・ホールディングス、オキシデンタル・ペトロリアム、ディア、ロス・ストアーズ、ウォルト・ディズニーなども5-8%上昇しました。


一方、市場予想を下回る決算や、弱い見通しが嫌気されたソーラーエッジ・テクノロジーズ、キャタレント、DXCテクノロジーが2桁安となったほか、モデルナ、ダラー・ツリー、エヌビディア、セールスフォース、アプライド・マテリアルズなども2桁安となりました。


セクター別ではS&P500の2セクターが上昇し、9セクターが下落


8月はS&P500の11セクターのうち、2セクターが上昇し、9セクターが下落しました。原油相場が下落したものの、好決算発表が相次いだエネルギーが2.2%高と2カ月続伸し、ディフェンシブ株物色の流れが支えとなった公益が0.1%高と小幅に続伸しました。


生活必需品、金融、資本財、素材は1.9-3.7%下落しましたが、S&P500(-4.2%)をアウトパフォームしました。一方、金利が大きく上昇したことで、将来の利益の現在価値が目減りするグロース株の割高感が強まり、グロース株の比率が高いITが6.3%安、一般消費財が4.7%安、コミュニケーションが4.2%安と月間騰落率の下位に並びました。


下落率トップのITでは、業績見通しを引き下げたエヌビディアが17%下落するなど、半導体株の大幅安が重しとなりました。

下落率2位のヘルスケアでは、モデルナのコロナワクチンの受託生産を行うキャタレントが22.2%安となったほか、モデルナも19.4%下落しました。


ダウ平均採用銘柄はディズニーが上昇率トップ、セールスフォースが下落率トップ


ダウ平均採用銘柄は8月月間で4銘柄が上昇し、26銘柄が下落しました。


月間で5.6%高と上昇率トップのウォルト・ディズニーは、市場予想を上回る増収増益決算が好感されたほか、動画ストリーミング「ディズニー+」の会員数が予想を上回り、「ディズニー+」の月額料金を引き上げるとの発表も好感されました。

「ディズニー+」の会員数は予想の1億4769万人を上回る1億5210万人となり、「Hulu」とスポーツ配信の「ESPN+」を加えた動画配信の有料会員数は、ネットフリックスの2億2067万人を上回る2億2110万人となりました。


一方、業績見通しを引き下げたセールスフォースが15.2%安と急落し、世界的景気減速懸念を受けてスリーエム(3M)も13.2%安。インテル、ウォルグリーンも2桁安となりました。

国際金融情報部 アナリスト

羽土 美幸

富山県出身。国内証券で株式等の営業、仏系証券でポートフォリオ分析、転換社債、エクイティ・デリバティブの分析・開発・営業などを担当。 2014年からDZHフィナンシャルリサーチにおいて米国株式、金融市場レポート編集、海外ETF業務を担当。

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