株式投資の世界では、そろそろ3月期決算企業の期末を意識した動きになる時期です。個人投資家の中でも、特にビギナーは株主配当金を投資判断に使う方が多いのではないでしょうか。
一口に「配当金」といっても、投資家によって重視している指標は異なります。本コラムで配当金に関する代表的な投資指標3つについて解説し、違いを整理していきましょう。
定番の「配当利回り」:高ければ良いというものでもない
配当利回りとは、「投資金額に対して、どれだけの配当金が受け取れるか」を示した指標です。配当利回りの計算式は【図1】の通りです。

各投資家がいくらで購入したかではなく、「現在の株価で新たに購入した場合の投資金額」を基準に計算します。また、配当金については年間配当金を用い、利回りは年利で表します。
配当利回りのメリットは、わかりやすいことです。購入した株式の保有期間中にどれだけの収益が得られるかが一目でわかります。
ただし、株価が下落すると、同じ配当金額であれば配当利回りは高く出てしまいます。「配当利回りランキング」で上位に位置していたとしても、株価の下落によって高い配当利回りになっているとしたら、減配の可能性があるかもしれません。そもそも売却益が期待できない状態ともいえます。
つまり、単に配当利回りが高いというだけで判断するのはやや危険です。業績が良いから配当利回りが高いのか、値下がりしているから配当利回りが高く出てしまっているのか、という見極めは必要です。
利益の分配「配当性向」:株主還元の意思が見える
配当性向は、「事業の利益のうち、どれだけを株主に分配するか」の割合です。【図2】は配当性向の計算式です。

利益は売上や費用などに左右されやすく、利益がブレてしまうと配当金額も上下します。投資対象として見るなら、安定的な利益を上げており、かつ配当に対する考え方が明確な企業は、魅力の一つにもなるでしょう。
東京証券取引所は、上場企業に対して「資本コストや株価を意識した経営」を要請しています。余剰資金は利益を生まないため、成長投資などに使わないのであれば株主に返すべきだという考え方です。これにより、近年は高い配当性向を経営目標に打ち出す企業が増えています。
ただし、利益の大半を株主に分配してしまうと、企業に多くの資金を残せなくなります。成長投資と株主還元とのバランスも大切です。成長過程にある企業の場合は、利益の多くを株主に分配してしまわずに社内に残しておき、企業の成長投資のために資金を振り分けるという経営戦略も重要です。
安定した配当を実現「DOE(Dividend on equity ratio:株主資本配当率)」
個人投資家の皆さんの中でも、最近見聞きする機会が増えている指標ではないでしょうか。株主還元の考え方を示す指標として、DOEを経営目標に掲げる企業が増えています。その理由は、配当金支払いに安定性があるからです。
配当性向が当期の利益に対する株主への配分であるのに対し、DOEは、これまでに積み上げてきた利益(株主資本)を基準にした配分です。【図3】にDOEの計算式を示しました。

株主資本は、株主の出資分に事業で積み上げてきた利益を加えたもので、DOEは利益の蓄積からの配分です。一般的に株主資本は大きく変動するものではありませんから、単年度の利益が落ちたとしても配当金の額を保ちやすいという特徴があります。
配当利回り、配当性向、DOEの違い
3つの指標の違いを一言でまとめると、配当利回りは「投資額に対していくらの配当が支払われるか」、配当性向は「単年度の利益のうち株主にどれだけ配分されるか」、DOEは「蓄積した利益のうち株主にどれだけ配分されるか」となります。

これらの違いから、企業が何を基準に配当金額を決めているかが見えてきます。どの指標が適しているかは、投資家が何を求めているかや何を重視して投資をしているかによって異なります。
例えば、短期的な利益を重視するのであれば配当利回り、長期的視点に立って企業の成長とともに資産を増やしたいならDOE、といった使い方が考えられます。投資家自身の投資に対する考え方を軸に選択すると良いのではないでしょうか。
配当利回りや配当性向、DOEは、景気や相場の先行きを予測しなくても理解できる指標です。そのため、マクロ分析や相場観に自信がない投資初心者でも取り入れやすいといえます。一度このように整理しておけば、今後も繰り返し使える「基礎知識」として役立ちますよ。
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